大人の友情

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知り合いの男性に子供が生まれた

実にめでたい


彼は仕事が忙しくなかなか子供と触れ合えないと不満を漏らしているが

幸せそうだ



私と彼とは仕事仲間だ

私は普通、仕事仲間を「知り合い」とは呼ばないが

彼とは他の誰よりも私的な会話を交わし

相談にも乗ってきたから

少なからず心の位置が近いので「知り合い」なのだ



彼は若い奥様が妊娠中にも毎週健診に付き添ったり

奥様の具合が悪い時には迷わず当欠して寄り添うことを選んだ


それを職場の人達は

「仕事に甘い」だとか「頼りにならない」だとか非難したが


それには理由があることを私は知っていた



彼には実はもうひとりお子さんがいて

その子は別れた以前の奥様が育てていて

今は会うことがままならない


今の奥様と浮気をしたことを咎められ離婚をしたからだ



まぁ、言ってみれば

ダメな男だ


別れた奥様からしたら

彼のせいで人生を狂わされたと感じても仕方ない


だけどそのダメな男は

会えないお子さんの事をいつも気に掛けている


自分のせいで全てを失ってしまったことも

奥様を傷付けてしまったことも

酷く後悔している


だから

今度だけは

今の家庭だけは

何としてでも大切にしようとしている



ご立派な決意だが

如何せん女好きな彼は

毎日とにかく危うい


若い女の子と話し込んでは

「可愛いね」「いい女だな」なんて言っている


一度私がそんな場面の彼を蹴飛ばした日から

彼は少し変わって

私に馴れ馴れしくなった


苗字ではなく名前で呼ぶようになったし

腕を組んだり、肩を抱いたりしてくる


だけどそれが

若い女の子に求めるときめきなんかじゃなくて

仲間感覚なのが分かるから

無下には出来ない



「私はアンタのお母さんじゃないのよ」

よく口にする私の言葉も

「お母さんだとは思ってないよ。冴ちん今度飲み行こうよぉう」

とヘラヘラ返す始末


良く言えば平和主義者

友愛精神の持ち主だ


だけどとどのつまり

皆に良く思われたい

嫌われることを酷く恐れている臆病な人だ



今朝

珍しく二人きりになったので聞いてみた

「あなたそんなんで大丈夫?もしも物凄く好みの女が現れたら実際の所、どうなのよ?」


そこに私は

か弱い臆病な男の覚悟を見た


「もう泣き顔は見たくないでしょ。子供第一。かみさん第一です。俺も勉強したっつーの。だけどたまには息抜きしたいじゃん。だから冴ちゃん誘ってんじゃん」



あー

私は「女」じゃない訳ね、彼にとって



若くなくて悪かったわねっ!

とも思うが


ま、いっか



私と彼とはひとつしか歳が違わない

学生の頃なら先輩なのだが

大人になれば女の方が遥かに目線は高いように思う



歳を重ねて、色々しでかして

それに後悔して、苦悩して

孤独を味わって、自制するも上手くいかなくて


そういうことは

私も知ってる


同僚とそういうことを共有出来るのは

幸せなことなのかも知れない


なんせ考えていることが分かるので

短い会話で仕事が進む




だけど

二人きりで飲みに行くことは多分しないだろう




私がもしも彼の声に酔ったなら


応援どころか、とんでもないことになるからだ





大人の友情は


この距離でいい








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