2006-06-06 13:19:23
馬鹿小説 エロビデオ泥夢(ドロム) 第九回
テーマ:エロビデオ泥夢(ドロム)
その9
翌日、俺は眠い目をこすりながらビデオデッキをつけた。昨夜は楠木のために夜遅くまでアダルトビデオを物色していたのだった。しかし楠木には残念な結果を知らせなければいけない。
ブーンという電圧音と供にテレビの中から冴えない楠木の顔は現れた。俺の顔を見るなりハァハァと興奮を隠せないでいる。まるでお預けを喰らった犬のようだ。
「やぁ! 神田くん、ごちそうさん!」
「ごちそうさんじゃないだろ、まだ何もやってないよ」
「じゃぁ早く早く。くれくれ!」そう言いながら、楠木は犬のチンチンの格好をして見せた。ハァハァという吐息は、真似てるのやら本気なのやら。
「いや、あのさ、ちょっと残念な話しがあるんだけど……」俺はそう言いながら、これを言った後の展開をどうしたものやらと思案した。怪訝そうな俺の顔は、鈍感な楠木でも理解できるところだろう。
「なんだ? 残念って何がだ? その不安そうな顔はやめてくれよ。なんだか恐いよ」楠木が言った。
「いや、恐がる話しじゃないんだよ。新作のアダルトビデオだけどな、昨夜遅くまで調べてやったんだよ」
「うんうん。なるほど。夜中にアダルトビデオ選びか、おまえも好き者だな」
「おまえが頼んだんだろ」
「それはそうだけど、おまえのことだから嫌々選んだわけじゃないだろ」楠木は鈍感なくせに偶に鋭い。
「まぁ見ているうちに楽しくなったことは否定しないよ。最近はネットで試しに見れるからな。いや、そんな話はいいんだよ。残念なのはな、最近の新作っていうのはDVDでしか出てないんだよね」
「DVD? ビデオは出てないのか?」
「あぁ、俺の見てたサイトでは、新作はDVDオンリーだったよ」
「ふーん……」
「ビデオとなると少々古いのしかないな。古いといっても新作ラッシュのアダルトビデオ界だと、俺なんかの知識では新しい部類に入るんじゃないかな? 現にここ二三年でデビューした女優も俺は知らなかったわけだし」
「……」
「でさ、あらためて訊こうと思ったんだよ。おまえ、ここ二三年で発売されたビデオで欲しいのがあるのかってね」
「……」
「レンタル用のビデオは高いから、セル専用の安いのをリクエストしてくれよ」
「……」
「最後に一緒に呑みに時に女優の名前言ってなかったっけ?」
「……」
「って、こら! テンションの下がり方がはっきりしすぎてるぞ!」
「だって……」そう言いかけた楠木の瞳には涙が浮かんでいた。泣くことはないだろ。
「新作だって多少古くたって初めて見るものなら一緒だろうが? あ?」
「だってよ……。俺は自ら進んでビデオデッキの中へと入ったんだぞ? それがなんだよ、気づけばもう時代遅れってか?」そう言った後で楠木は二度ほどヒクヒクとしゃくりあげた。子供じゃあるまいし、なんだよ。
「時代遅れも何も、おまえが失踪した時には既にDVDは安く出回ってただろうが? それにおまえってDVDデッキも持ってなかったっけ?」
「ああ、確かに持ってたよ。でもコレクションにビデオが多かったから、入りたくなったのはビデオデッキだったんだ。これは必然だ」
「何が必然だ、だ。しかしそれを考えると、ビデオデッキが出回り始めた頃にエロカセットテープと絡みたいばかりにラジカセに入ってしまった奴もいるだろうな」俺はどうでもいい心配をしてしまった。
「ああ、可哀想にな。声だけの世界でどうやって絡んでいるのか謎だし、そもそも声優がどんな顔かも知れないのに、チャレンジャーだよ。尊敬に値するね」そう言って楠木も、どうでもいいことに賛同してみせた。しかし尊敬までしてどうするのだろう。
「ホント、可哀想だね。じゃぁ今日はこの辺で……」俺は馬鹿馬鹿しくなって会話を適当に切り上げて出かけようと思った。
「コラコラ! 待たんか! 俺への同情はどうした?」それを楠木が引き留めた。
「同情はしてないよ。おまえが勝手に憐れんで見せただけだろ。要するに新作のDVDは再生できないからちょっと古いセルビデオをリクエストしろって言ってんだよ。俺をイラつかせるな!」
「ちょっと待て! 待ってくれ! こういうのはどうだ?」
「なんだよ。おまえは楠木の癖に何か思いついたのか?」
「刺のある言い方だが、それはもういいよ。それより俺のアイデアを聞いてくれ」
「聞きたくなくても、どうせ聞くまで呼び止めるんだろ? さっさと言ってくれ」
「簡単な話しなんだ。新作DVDをダビングしてビデオで再生すればいいんだよ」楠木は人差指を立ててナイスアイデアと言わんばかりのポーズをとりながら言った。
「なんだよ、それ。俺が面倒なだけじゃないか。それに最近のDVDってダビングできないんじゃないのか?」
「それは知らん」今度は楠木は知らないことを威張った。
「自信満面に知らないことを威張るなよ。しかし試してみる価値はあるな。DVDから直接ダビングできなくても、テレビに写した画像をテレビの出力端子から録れなくもないか」
「だろ? だろ?」
「何が、だろ? だよ。おまえさっき知らんって威張っただろ」
「そんなイケズな態度とらずに頼みます! この通り!」そういって楠木はテレビの中で土下座してみせた。
こんなことに、そこまでやってみせる楠木を俺は、うっかり尊敬に値すると思ってしまった。
「しかし、それならそれでDVDデッキを買わないといけないな」俺は貧乏なので余分な出費は困るのだった。
「借りは返すから、貸しといてくれ」さもありなんと楠木は言ってのけた。
「どうやって返すんだよ。まぁいいよ、今ちょっと俺にも秘策を思いついたから。それについては、おいおい話すとして、ま、今回はDVDデッキとソフトを買ってやろうじゃないか」
「秘策? なんだ?」今度は楠木が怪訝な表情を見せた。
「いや気にするな。後々のことだから。それよりDVDだろ? DVD」
「そうそう。DVD! DVD!」そう言いながら、楠木はふたたび犬のチンチンのポーズになていった。こいつ、これって無意識じゃないだろうか……
とりあえず、俺も「D・V・D」と声を合わした。
俺の部屋の中は、暫く「D・V・D」の合唱が響きわたった。響くほど広い部屋じゃないけど、雰囲気でね。
<つづく>
翌日、俺は眠い目をこすりながらビデオデッキをつけた。昨夜は楠木のために夜遅くまでアダルトビデオを物色していたのだった。しかし楠木には残念な結果を知らせなければいけない。
ブーンという電圧音と供にテレビの中から冴えない楠木の顔は現れた。俺の顔を見るなりハァハァと興奮を隠せないでいる。まるでお預けを喰らった犬のようだ。
「やぁ! 神田くん、ごちそうさん!」
「ごちそうさんじゃないだろ、まだ何もやってないよ」
「じゃぁ早く早く。くれくれ!」そう言いながら、楠木は犬のチンチンの格好をして見せた。ハァハァという吐息は、真似てるのやら本気なのやら。
「いや、あのさ、ちょっと残念な話しがあるんだけど……」俺はそう言いながら、これを言った後の展開をどうしたものやらと思案した。怪訝そうな俺の顔は、鈍感な楠木でも理解できるところだろう。
「なんだ? 残念って何がだ? その不安そうな顔はやめてくれよ。なんだか恐いよ」楠木が言った。
「いや、恐がる話しじゃないんだよ。新作のアダルトビデオだけどな、昨夜遅くまで調べてやったんだよ」
「うんうん。なるほど。夜中にアダルトビデオ選びか、おまえも好き者だな」
「おまえが頼んだんだろ」
「それはそうだけど、おまえのことだから嫌々選んだわけじゃないだろ」楠木は鈍感なくせに偶に鋭い。
「まぁ見ているうちに楽しくなったことは否定しないよ。最近はネットで試しに見れるからな。いや、そんな話はいいんだよ。残念なのはな、最近の新作っていうのはDVDでしか出てないんだよね」
「DVD? ビデオは出てないのか?」
「あぁ、俺の見てたサイトでは、新作はDVDオンリーだったよ」
「ふーん……」
「ビデオとなると少々古いのしかないな。古いといっても新作ラッシュのアダルトビデオ界だと、俺なんかの知識では新しい部類に入るんじゃないかな? 現にここ二三年でデビューした女優も俺は知らなかったわけだし」
「……」
「でさ、あらためて訊こうと思ったんだよ。おまえ、ここ二三年で発売されたビデオで欲しいのがあるのかってね」
「……」
「レンタル用のビデオは高いから、セル専用の安いのをリクエストしてくれよ」
「……」
「最後に一緒に呑みに時に女優の名前言ってなかったっけ?」
「……」
「って、こら! テンションの下がり方がはっきりしすぎてるぞ!」
「だって……」そう言いかけた楠木の瞳には涙が浮かんでいた。泣くことはないだろ。
「新作だって多少古くたって初めて見るものなら一緒だろうが? あ?」
「だってよ……。俺は自ら進んでビデオデッキの中へと入ったんだぞ? それがなんだよ、気づけばもう時代遅れってか?」そう言った後で楠木は二度ほどヒクヒクとしゃくりあげた。子供じゃあるまいし、なんだよ。
「時代遅れも何も、おまえが失踪した時には既にDVDは安く出回ってただろうが? それにおまえってDVDデッキも持ってなかったっけ?」
「ああ、確かに持ってたよ。でもコレクションにビデオが多かったから、入りたくなったのはビデオデッキだったんだ。これは必然だ」
「何が必然だ、だ。しかしそれを考えると、ビデオデッキが出回り始めた頃にエロカセットテープと絡みたいばかりにラジカセに入ってしまった奴もいるだろうな」俺はどうでもいい心配をしてしまった。
「ああ、可哀想にな。声だけの世界でどうやって絡んでいるのか謎だし、そもそも声優がどんな顔かも知れないのに、チャレンジャーだよ。尊敬に値するね」そう言って楠木も、どうでもいいことに賛同してみせた。しかし尊敬までしてどうするのだろう。
「ホント、可哀想だね。じゃぁ今日はこの辺で……」俺は馬鹿馬鹿しくなって会話を適当に切り上げて出かけようと思った。
「コラコラ! 待たんか! 俺への同情はどうした?」それを楠木が引き留めた。
「同情はしてないよ。おまえが勝手に憐れんで見せただけだろ。要するに新作のDVDは再生できないからちょっと古いセルビデオをリクエストしろって言ってんだよ。俺をイラつかせるな!」
「ちょっと待て! 待ってくれ! こういうのはどうだ?」
「なんだよ。おまえは楠木の癖に何か思いついたのか?」
「刺のある言い方だが、それはもういいよ。それより俺のアイデアを聞いてくれ」
「聞きたくなくても、どうせ聞くまで呼び止めるんだろ? さっさと言ってくれ」
「簡単な話しなんだ。新作DVDをダビングしてビデオで再生すればいいんだよ」楠木は人差指を立ててナイスアイデアと言わんばかりのポーズをとりながら言った。
「なんだよ、それ。俺が面倒なだけじゃないか。それに最近のDVDってダビングできないんじゃないのか?」
「それは知らん」今度は楠木は知らないことを威張った。
「自信満面に知らないことを威張るなよ。しかし試してみる価値はあるな。DVDから直接ダビングできなくても、テレビに写した画像をテレビの出力端子から録れなくもないか」
「だろ? だろ?」
「何が、だろ? だよ。おまえさっき知らんって威張っただろ」
「そんなイケズな態度とらずに頼みます! この通り!」そういって楠木はテレビの中で土下座してみせた。
こんなことに、そこまでやってみせる楠木を俺は、うっかり尊敬に値すると思ってしまった。
「しかし、それならそれでDVDデッキを買わないといけないな」俺は貧乏なので余分な出費は困るのだった。
「借りは返すから、貸しといてくれ」さもありなんと楠木は言ってのけた。
「どうやって返すんだよ。まぁいいよ、今ちょっと俺にも秘策を思いついたから。それについては、おいおい話すとして、ま、今回はDVDデッキとソフトを買ってやろうじゃないか」
「秘策? なんだ?」今度は楠木が怪訝な表情を見せた。
「いや気にするな。後々のことだから。それよりDVDだろ? DVD」
「そうそう。DVD! DVD!」そう言いながら、楠木はふたたび犬のチンチンのポーズになていった。こいつ、これって無意識じゃないだろうか……
とりあえず、俺も「D・V・D」と声を合わした。
俺の部屋の中は、暫く「D・V・D」の合唱が響きわたった。響くほど広い部屋じゃないけど、雰囲気でね。
<つづく>





