やっぱりバッハって… | さいちゃんの教会音楽な日々

やっぱりバッハって…

 10月2日のマティネーで、J.S.バッハの"Piece d'orgue"を弾こうと思って練習中なのだが、練習しながら改めて思ったことがある。それは


バッハって絶対変。


だということである(爆)とんでもない曲書いてるよ、この人。


 一声で始まるオルガン曲は当時にだって多々あったけれど、それを2ページも延々と続けたのは多分バッハが初めてなんじゃないだろうか?どんなに速く弾いたって1分ぐらいはかかる。聴衆は1分もずうっと、この先何が起こるのか緊張しっぱなしなのだ。そして、ようやく和音が入ってホッとした…と思ったら、なんとバッハはこの和音の羅列-単なるカデンツの組み合わせ-を4ページも延々と続けるのである。時間にして5分ぐらい。あっちの調へ行ったり、こっちの調へ行ったり、偽終止を使って次のカデンツにつなげたり…を5分も続けてるのも当時としちゃバッハぐらいのものだろう。普通は間が持たないですって。

 で、ようやくこのカデンツが輝かしく終わりを告げる…かと思いきや、最後の和音がなんと減七である。当時、減七なんて和音は珍しいのであって、ようやく曲が終わるかと思って聴いていた当時の人は跳び上がって驚いたに違いない。そして、最後がまた緊張感あふれる2声(1声+弦楽器を思わせるバス)になっていて、これがまた2ページ(1分ぐらい)続く。最後にようやく緊張から放たれて、当時ありがちな終止形になって終わっているのだが…(汗)


 先週の南ドイツオルガンアカデミーで、講師のブライヒャー氏が「当時(バロック・初期クラシック)ってのは、人間の感覚と音楽が今の我々よりもっともっと密接に結びついていたんだ。だから、演奏家(イコール作曲家)が当時としては新しいことをやると、意表をつかれた聴衆は文字通り『椅子から跳び上がって』驚いたものなんだよ」と言っていたが、そういう意味ではこのPiece d'orgueはさぞかし聴衆を驚かせたに違いない曲である。円熟したバッハの後期の作品とは違った、実験的な試み満載の味のある作品だ。今でこそ何でもないようにさらっと弾いてしまう人が多いけれど、多分それではいけないのだと思う。ぜひ当時の人の驚きを、今の人にも味わってもらいたいものだと思うけれど、それにはどうやって演奏したらいいんだろう?なんてちょっと考えている私なのであった…(笑)