2006年01月19日

指揮者の採用試験

テーマ:合唱

 大学で山のような試験をこなしてきても、試験というのはいつも嫌なものだ。今回の試験は点数こそつかないが、指揮者の職がかかっているという、嫌~な試験である。

 普段どおり午後はピアノのレッスンをして、それから喫茶店でコーヒー一杯飲んだ後、まさしく「まな板の上の鯉」という気分でシュテックフェルト地区へ向かった。そこの教会集会所が採用試験の会場なのである。


 シュトゥットガルトのあちこちを歩いている私にも、実は行ったことのない地区だった。電車を降りてから徒歩10分という話だったのだが、日が暮れるのがものすごく早い1月のこと、すでに真っ暗な上、運悪く霧が出ていた。おまけに車は通るが歩いている人はいない住宅街を延々と歩く羽目に。はっきり言って不気味である。ここは一体どこなんだ(T_T)と思っているうちに、ようやく三角屋根の教会堂を見つけた。で、集会所は?と建物を一回りして、ようやく入り口発見。

 入り口の扉の手前で、後ろから声をかけられた。電話では何度か話したことのある、この教会の牧師であった。そもそも、教区トップの教会音楽家から私を紹介されたとかで、この牧師が電話をかけてきたのが今回の応募の始まりだったのである。

 中へ入ったら、合唱団員の男性が一人、会場のセッティングをしていた。この男性が私に課題曲の楽譜を郵送してくれた人であった。新しく小ぎれいな、ステージつきの集会室で、カワイのグランドピアノが一台おいてあった。

 牧師が教会の会報を持ってきて、この教会がどんな活動をしているかざっと見せてくれ、合唱団はクリスマス・コンサートでバッハカンタータを歌ったばかりだと教えてくれた。「合唱団は今日の課題曲をすでに歌ったことがあるんですか?」と聞いてみたら、「いや、新しい曲です。みんなが同じ条件で採用試験に臨めるようにしたかったので。」だそうで。

 ということは最初の音取りからだな、と頭をめぐらせていたら、合唱団員がぼちぼちやってきた。挨拶を交わすが、人が増えるにつれ全員に挨拶するのが難しくなった。何人か、知っている顔もいた。教区トップの教会音楽家が合唱プロジェクトをやった時に、歌いに来ていた人たちである。私の緊張を見て取ったのか、「ほら、堂々として!」「大丈夫、上手くいくよ」といろいろと励ましてもらった。


 夜8時になって、牧師が簡単にみんなに私を紹介してくれ、いよいよスタート。1時間半の練習時間をまるまる使って、合唱指導をする試験である。結局合唱団員は30人以上は確実に集まっていた。普段少ない人数の合唱団しか振っていないので、やたら人が多いように思える。

 始まったらもうやるしかないのであって、発声練習をいつものようにみっちり15分ほどやったあと、曲に取りかかる。まず最初にロルフ・シュヴァイツァーの"Das ist ein koestlich Ding"(これは価値ある〔素晴らしい〕ことです)から。このポップ調の曲を最初に持ってくるか最後に持ってくるかで非常に悩んだのだが、弾むような楽しい曲であることもあり、あえて最初にやることにしたのだ。

 まず全員でメロディーを何回か歌って、曲の感じをつかんでもらい、各パートの音取りに入る。前に1月2日のエントリ でも触れたが、この曲は決して易しくはない。更に譜面を見て予測していたほどには合唱団のレベルが高くなかったので、丁寧な音取りが必要だったが、それにしてもよくついてくる。

 思ったより時間はかかったが、一応通して歌うところまで持っていった。もちろんまだまだ細かいところまで出来ていないのだが、何せこの時点ですでに時計は9時を回っていた。まだ2曲あるのに、これ以上この曲にかかりっきりにはなれない。


 時間がかかったことにかなり焦りながら、讃美歌集をみんなに配ってEG787.6"Oculi nostri"(私たちの目は)を開いてもらう。これはテゼ共同体の典礼歌で、非常にシンプルな4声の歌だ。ラテン語とドイツ語の歌詞がついている。

 ラテン語の歌詞の解説をしてから、まずメロディーを…と思ったのだが、その時点ですでに自分のパートを歌っている人も多かったので、さっさと4声で歌ってもらった。はっきり言って、何の問題もなく歌えた。このレベルの曲なら初見でもOKらしい。

 時間もなかったので、一通り歌えたところですぐに次の曲、"Schaffe in mir, Gott, ein reines Herz"(神よ、私の中に純粋な心を作ってください)へ。作曲者不詳の曲だが、曲のスタイルはシュッツとかシャインに似ている。3ページ全部をやる時間は到底なかったので、最後の1ページをやることにした。最後のページは意外と曲者で、この時代にはよくあることなのだが拍子が途中で変わったりする。でも、だからこそ試験の見せどころとしてはよいのでは、と思ったのである。まずは3拍子の部分と4拍子の部分を別々に、各パートの音取りと4声での合わせをした後、拍子が変わるところを練習。それでその最後の1ページを通して歌ったところで、終了時間の9時半2分前だった。当然新しいことは始められないので、そこで終わりにした。


 終わったあと、合唱団員の何人かが「良かったよ~」と寄ってきてくれたが、私はいつものごとく自己嫌悪に沈んでいた。合唱指導が終わると必ず、あそこでこういえばよかった、ドイツ語間違えた、等々、どーーーーっといろんな思いが押し寄せてくるのである。

 牧師にも「手堅い合唱指導ですね」と褒めて頂いたのだが、本人はう~ん…という感じ。ただ、今の自分としてやれることはやった、という気持ちはあった。


 帰りは牧師に、電車の駅まで車で送ってもらった。この牧師は、ホイマーデン教会のD牧師をよく知っていて、交流もあるようだったので青ざめてしまった(苦笑)。

 とりあえず合唱団としては、1年間新しい指揮者とやってみて様子を見たいと思っている、とのことだった。設立者の牧師兼教会音楽家の力で大きくなった活発な合唱団だという、簡単な歴史も説明してくれた。話をしながら、この牧師は身軽に自分からさっと動けるタイプの、かなりやり手の牧師だなと直感的に思って好感が持てた。こういう人の下での仕事はやりやすいだろうと思う。

 そして、先週予定されていたもう一人の応募者の試験が、2週間後に延期になったと聞いて驚いた。もう一人が先に試験を終えたものだと思っていたのだ。連絡が上手く取れなくて、延期せざるを得なくなったとのこと。つまり結果は2~3週間後にならないとわからないということだ。

 ただ、結果はもうどうでもいいかな…。やることはやったし、とにかく終わった…ということだけが今は重要。じたばたしても、もう終わったことは取り返しがつかないわけだし…。ひとまずストレスから解放されたので、落ち着いて結果を待とうと思う。

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2006年01月18日

空港合唱団がスタート

テーマ:合唱

 今日からいよいよ、空港合唱団の練習がスタート。

 なのだが、0からスタートするのも大変である。鍵盤楽器がないのでとりあえず私のキーボードを空港まで運ばねばならない。それと、曲を選ばねばならないのだが、前例が全くないのだからレベルなんて見当もつかない。とりあえず3声の簡単そうな曲を選んでコピーして、歌わせてみるしかないだろう。


 運悪く、水曜日の午後は予定でいっぱいの私である。ホイマーデン教会で、ピアノとオルガンのレッスンが入っているのだ。仕方がないので、お昼ごろキーボードをひとまずホイマーデン教会に運ぶ。それからもう一度街へ戻って、楽譜をコピー。空港まで行けば事務所で無料コピーできるのだが、そんな時間はさすがにないし、その分交通費を払わねばならないから出費は同じくらいである。

 午後6時半ちょっと前に、ホイマーデン在住の合唱団員のHさんが教会に迎えに来てくれた。Hさんは"Kirchliche Dienste am Flughafen"の職員である。が、車の都合がつかなかったとかで、結局2人でキーボードを抱え、バスに乗り込む。2回乗り継ぎの末、空港に到着したのは午後7時半ちょっと前。練習場所がどこだかよくわかっていなかったので、空港内をよく知っているHさんがいてくれて助かった。

 着いたらもう、牧師と他数人が到着していた。練習場所はなんと空港警察署の部屋の向かいで、かなりモダンな集会室。スクリーンやスピーカーが完備された部屋だったが、当然音楽用ではない。ガイドつきの空港見学ツアーが、この部屋で映像を見るところから始まるのだそうだ。挨拶して、キーボードのセッティング等々しているうちに、あっという間に20分ぐらいたってしまう。牧師は今日、これから用事があるとのことで、挨拶だけ済ませると、出かけていってしまった。


 さて、練習開始。いつものように発声練習をしたあと、まずは"Wohlauf, wir heben mit Singen an"「歌で(心を)高くあげよう」という小さな3声の曲を歌わせてみた。とにかく全員、高い声がちゃんと出ない。昔歌っていたという人も、もう10年以上も歌っていないのだから無理もないが、やはり「ひぃ~」という声になってしまう。これは一朝一夕には直らないので、時間をかけて発声を身につけてもらうしかないだろう。

 音取りに関してはこの曲はあまり問題なかったので、次の曲"Grosser Gott, wir loben dich"「大いなる神よ、あなたをほめたたえます」へ。何せ超有名な讃美歌で、みんな知っているからとっつきやすいだろうと思ったのだが、アルトと男声の音取りに思ったよりずっと手こずってしまった。特にアルト。内声が難しいのは私自身もアルトだからよくわかるのだけど、それにしてもこれはかなり大変そうだ。

 それでも何とか、キーボードで伴奏しながらだけれども、最後に1回通すところまではいった。本当はもう1曲用意していたのだけれど、時計を見たらもう練習終了の9時ちょっと前である。普段なら1時間半で3曲ぐらい練習するのだが、ここではゆっくりやっていくしかないんだな、と悟った。


 練習のあと、男声のホープ(←!)Lさんがキーボードの片付け等を手伝ってくれながら、冗談交じりで「(こんなに歌えなくても)来週もちゃんと来て練習やってくれます?」なんて声をかけてくれた。Lさんはもともと合唱をやっていた人で、確かにいい声をしている。かなり熱心なクリスチャンでもあって、宗教曲を歌うのが大好きなのだそうだ。「さすがに久しぶりだと声出ない…」とぼやいていたので、「まぁそのうち戻ってくるから大丈夫、ゆっくりやりましょう」と私。部屋の鍵閉めはHさんが、牧師に代わってやってくれた。


 先は思いやられるが、最初ってこんなもの…?牧師は空港内にどんどん宣伝して、まだ両手で数えられる人数しかいない合唱団員を増やすつもりでいるらしいのだけど。どういう風になるのか、相変わらず見当もつかないのだが、とにかくぼちぼちやっていくしかないだろうなぁ…と思いつつ帰ってきた私なのであった…。

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2006年01月02日

楽譜キタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!!

テーマ:合唱

 新年明けまして早々に、郵便受けを覗いたら…


 楽譜キタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!!


 クリスマスと年末年始のお仕事で、危うく忘れかけていたのだけど(←おい^^;)、合唱指揮者の職に応募していて、1月19日に採用試験があるのだ。その課題曲の楽譜到着である。

 どれどれ、と開封してみたら、2曲全く違う時代の合唱曲が出てきた。1曲は1620年ごろの、作曲者不詳の作品"Schaffe in mir, Gott, ein reines Herz"(神よ、私の中に純粋な心を作ってください)。言うまでもなく詩篇51篇からのテキストだ。3ページの曲だが、この時代のものは調性が現代と違うということもあって、そう簡単ではない。もう1曲は、現代ドイツ語讃美歌の作曲者として重要なポジションを担う、ロルフ・シュヴァイツァーの作品"Das ist ein koestlich Ding"(これは価値ある〔素晴らしい〕ことです)。詩篇92篇からのテキストで、1ページの曲だが、シュヴァイツァー讃美歌はリズムや音階がまた独特なので、決してなめてかかることは出来ない。2曲とも4声の合唱曲だが、男声+女声3声となっている。そしてもう1曲、讃美歌集よりEG787.6"Oculi nostri"を、という手紙が入っていた。787.6なら典礼歌であろう。全3曲とは結構長い試験である。

 それにしても、このレベルのものを出してくるということは、この合唱団はアマチュアとしては結構歌えるのではないだろうか。少なくともウチのダ・カーポ合唱団には、このレベルのものはリスクが大きすぎて使えない。そういう意味では振ってみるのが楽しみではあるが、その前にまず曲をちゃんと頭に叩き込まねば。


 というわけでお正月気分に浸る間もなく、新年早々課題が降って来た私なのであった…(汗)

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2006年01月01日

2006年の幕開けはアウトバーン上で

テーマ:オルガン・即興

 (12月31日の日記 から続く)…仕事帰りの友人と私は、2006年の幕開けをアウトバーン上で迎えた。でも、ほとんど他の車も走っていないアウトバーンで、花火の上がる周辺の町々を遠目に見ながらのドライブは快適!そして夜景&花火がものすごくきれいだった。意外におススメできる新年の迎え方かも。(運転手はシャンパンが飲めないという欠点もあり_ _;)

 0時半ごろ帰宅。その後、「あけましておめでとう」電話を1本受けたあと、年越しそばならぬ年明けそばを食べてから就寝。


 で、朝10時から再びホイマーデン教会で、元旦礼拝のお仕事。

 今日は何の変哲もない普通の礼拝だったのだが、1番目の讃美歌がEG440番の"All Morgen ist ganz frisch und neu"(すべての朝は全く新鮮で新しい)だった。うちの牧師はこの讃美歌が好きらしく、よく最初の讃美歌として選ぶ。確かに朝の新鮮さが出ていていい曲だし、午前中に行われる礼拝の最初に歌うのに適しているのだけど…


 だんだん即興のネタ、尽きてきた…_| ̄|○

 

 オルガニストの勝手な都合かもしれないけれど、もうちょっと選曲のレパートリー、増やしていただけませんかね?でないと、そのうちネタに困った私が、朝からジャズ即興とかぶちかまして、出席しているご老人たちをのけぞらせてしまうかもしれませんよ?(爆)

 とりあえず今日はおとなしく?ほのぼのした夜明けのイメージで即興してみたのだけど、あとで「一音目から今日はあなたが弾いてるってわかったわ~」と教会員に言われてしまったのはなぜだろう?(苦笑)

 今日は手足もスムーズに動き、昨日ほど調子は悪くなかった。休暇ボケもだいぶ取れたみたいである。


 礼拝後、残っていた礼拝出席者の方々と"Ein gutes neues Jahr!"(よい新年でありますように!)の挨拶を交わした。何人かの方に「今年もずっとここで弾いてね」と言われ、社交辞令かもしれないけれど嬉しかった。

 ホイマーデンの教会では、大晦日と新年の礼拝で、出席者に聖書の言葉が印刷されたカードを配る。というか、かごの中にいろんな聖書箇所の書いてあるカードが入っていて、くじのように自分の分を引いて「今年の聖書の言葉」にするのだ。私が引いた「今年の聖書の言葉」はこれ。


 "Sorgt euch um nichts, sondern in allen Dingen lasst eure Bitten in Gebet und Danksagung vor Gott kundwerden." (何も心配しないで、すべてのことにおいてあなたがたの願いを、神の前での祈りと感謝の言葉の中に表すようにしなさい。) 新約聖書・フィリピの信徒への手紙4章6節

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