志村明仁先生の「観察」に初めて触れることができたのは、平成二〇年五月二七日に開催された「身体均整師会全国講習会」の会場においてでした。
「姿勢の変遷について」という講題の中で、数人の方を前にして、それぞれの方が「身体均整法の十二種体型」でいうところの十二種類ある体型のうち、どの体型と見なすのかを志村先生は僕たちに指導してくださいました。
とにかく圧倒されました。
それぞれの方への観察を目の当たりにし、その解説を聞いて僕は圧倒されたのです。それはこれまで僕が知っているどの観察より細かく、分かりやすく的確でした。
いったい志村先生はこれまでどのような努力、鍛錬をされこれほどの観察ができるようになったのか、そして先生のような観察眼は僕も果たして習得できるのだろうかと圧倒されながらも、ぞっと身震いしたことを今でも強く覚えています。
通常「十二種体型」における観察は、身体の形状を探るところから入り、続いて動きや下肢にかかる荷重などの特徴を捉えます。そして相手の主訴をその特徴に結びつけ体型を当てはめます。
そして身体均整法の「十二種体型」に基づいた施術は、そこで決定された体型に、それぞれ則した箇所への必要な調整を加えることで体型を中庸な状態に持って行くことで完了します。
志村先生の観察を拝見し感じたのは、「僕とはまったく違う何かを観ている」ことでした。形、動きだけではない何か、です。 その何かによって僕が圧倒されるほどの的確な観察が導かれたのだと思っています。何かとは何か、知りたいと思いました。
約十年前、当時の身体均整師会執行部からの要請を受け志村先生が執筆活動を始めてくださったことは、僕にとって「わくわく」することでした。
手技療術者、身体均整師として、僕はもっと人の身体を観ることができるようになりたいと思っています。
その為には、やはり僕にはあの全国講習会での志村先生が発表された観察法(それは僕にとっては十二種体型学 の新たな幕開けの宣言のようにも思えた)に感じた圧倒された感じ、未だ止まない身震いを止めてくれる何かが必要だと感 じていて、それが志村先生の執筆活動の知らせだったのです。
執筆活動はおそらく困難なものであっただろうと想像がつきます。
読者の方々はこの本の数十頁を読み進んだところでこの本の余りにも膨大な情報量に圧倒されると思いますが、それは志村先生のこれまでの蓄積のすべてがここに集約されているからです。
ヒトの発生、その生命活動システム、それらが地球、宇宙、つまり自然とともにあることと深く関わりがあり、それらの複雑なリズム(波)によって彩られるヒトの身体に触れるとそのことが手に伝わる、と志村先生はこの本のなかで語ります。
そしてまた、ヒトの身体にもリズム(波)があると語ります。
志村先生はそれを水の波、気の波とふたつのリズムがあると紹介していますが、そのふたつの波によって現れたものがヒトの姿勢であり動作なのです。
この本によってあの時まったく僕が観ることができなかった何かが分かりました。それが水の波であり、気の波だったのです。
ここには自然とヒトの「理」が丁寧に書かれています。特に、これまで具体的に気の波がどのような起源を持つものなのか、これを導き出す過程は圧巻です。
是非ゆっくりとしたリズムで読み進めてみてください。そして何度も繰り返し読んでいただくことをお薦めします。必ずヒトの内に流れる波に触れられるようになります。それは素晴らしい経験です。
一般社団法人身体均整師会 会長 矢作智崇
志村明仁
1962年(昭和37年)山梨県生まれ
1986年(昭和61年)都留文科大学文学部卒業
1987年(昭和62年)姿勢保健均整専門学校卒業
在学中にカイロプラクティック技術を習得
1987年(昭和62年)天山均整院(東京都杉並区)開院
2016年(平成28年)閉院までの約29年間施術を行う
無農薬や有機栽培、自然食に興味をもちエコ生活も実践。
「農家の方々は植物と対話しているんですね。観がある。彼らはロマンティストで、作物を信じて手間は惜しみませんが、余計な手をかけず経過をジッと見守る。彼らの作った作物は、味も濃く、喉を通り胃に入って行く過程で生命の力強さが伝わってきます。それが心地好い。施術と、やっていることが同じ気がします」
