3)呼吸する第3の皮膚ー壁、天井 | 木の家散歩

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木の家の設計監理経験豊かな建築家・山中文彦と木材産地、職人技術者のネットワークにより、夢の木の家を造る「木の家づくりネットワーク」のブログです。自然素材を活用し、家族と環境に優しい、本物の木の家をCM型施工管理システムによるリーズナブルコストで実現します。

壁、天井の面積は標準的な木の家において面積としても大きいので、室内環境に対しての影響がその分大きくなります。


また、床に比べて柔らかさや固さといった要素は選択の条件としては関係してきません。


視線の正面に飛び込んできますので、インテリアのイメージを左右する度合いも大きいですね。


壁、天井の造り方は石膏ボードという石膏を紙で挟み込んでボードにしたものの上から、塩化ビニール製のクロス=ビニールクロスを張った仕上げが主流です。


ビニールクロスは安く、施工しやすく、さまざまな色柄があり、少し汚れてもふき取るだけで簡単な汚れは落とすことができるなどお手入れがしやすいことが特徴です。


しかし、樹脂製の塗装をしたフローリング同様に湿気を通すことがほとんどできないため、透湿性が低く、高温多湿な日本の夏場においては室内環境が不快になる原因の一つです。



そこで、呼吸する木の家の壁、天井の仕上げ としては、左官屋さんが鏝(こて)を使って塗る左官仕上げ、和紙などによる表具仕上げ、大工工事による板仕上げなどがあります。


板仕上げは床仕上げと共通しますが、仕上げる部分を壁全面にするとログハウスのような仕上げになり、腰から下の部分に使う腰板貼りは貼りかたや色などによってはモダンなイメージにすることもできます。


また、壁と天井の仕上げの組み合わせ方によってはインテリアの印象がだいぶ変わってきます。


左官仕上げは伝統的な漆喰(しっくい)のほかに、珪藻土(けいそうど)などがあります。


漆喰の場合は石灰石を焼いて作った消石灰の粒子の粗さ=大きさが調湿性を決めます。


重油を使って大量に、高温で作ったものは粒子が細かく、調湿性がやや劣ります。


私は昔からの製法のコークス、石炭を使って塩を入れて焼いた塩焼き漆喰をお薦めしています。

値段もさほど高くはありません。

色は純白から、若干黄色の鉱物顔料を混ぜてややクリームかかったものや、墨を入れてグレーにしたものも作ったりしました。


そのほかに、土佐漆喰や土を混ぜた半田漆喰などもあります。


珪藻土は北海道産の調湿性の高い珪藻土をお薦めします。


色は比較的バリエーションがありますし、鏝による仕上げ方のパターンもつけやすいです。


そして、和紙を使った表具仕上げですが、伝統的手すき和紙を張ったものから、近年普及し始めた機械で漉いたロール和紙などもあります。


手すき和紙は産地が日本全国にあり、建築工事への適正や材料などから高知の土佐和紙、山梨の市川大門和紙、島根の出雲和紙、長野の飯山和紙や長門和紙など様々にあります。


大きさはA3版ほどの大きさのため、下張りを袋張りしてその上から重ね張りするため表具師の技能が求められます。


ロール和紙は襖紙の伝統的産地である石川県のふすま和紙のほかに、最近は高知県や熊本県のロール和紙が好評です。


ロール和紙の中では小田原の家で採用した茶屋の本工房 社のお茶を漉きこんだ和紙や竹素材を使った竹和紙があります。


ビニールクロスに比べて格段の吸放湿性が確認されています。


表具は表面の紙の性能と下地の石膏ボードの性能の両方で発揮されます。



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これは吸放湿性能を外部の検査機関に依頼したものです。


性能が桁違いに違うことが分かります。


壁一つとっても、和紙表具、左官、板など様々な材料があります。


それらの中でもさらに様々な種類がありますから、木の家を設計して、作る自由さの楽しさを建築主の方にも味わって頂きたいと思っています。


それが、自然に住んでから快適な木の家になるのですからなおさら楽しみですね。


デザインは何も建築家に任せておくものではなく、クライアント=建て主さんと建築家、そして現場での職人と一緒に行うものだと思います。


呼吸する木の家を一緒に造りましょう

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