2010-08-25 11:39:57

くらやみの速さはどれくらい エリザベス・ムーン著

テーマ:特別支援教育・障害児教育
 図書館で借りて来ました。

くらやみの速さはどれくらい (ハヤカワ文庫 SF ム 3-4)/エリザベス・ムーン

¥1,050
Amazon.co.jp

 はるぼんさんに教えてもらいました。

くらやみの速さはどれくらい~最期の自閉症者

 はて?このエントリで教えて頂いたのか、別のエントリだったのか、少し記憶が判然としません。そのくらい読むのに時間がかかってしまいました。あらすじは上のエントリにあります。

 著者のお子さんは自閉症。そしてこの作品を書くために(知り合いの人たちのプライバシーを守るために)数年間、知り合いの自閉症の人や家族と距離を置いたそうです。また企業の内部を書くために多くの人にインタビューしてはりますが、みなさん「名前は出してくれるな」ということだそうです。なるほどなあ。

 つかみ、というか出だしのあたり、産業医(精神科医)との面接の場面などはアハハアハハと笑えていました。ありそう、ありそう、という感じ。しかしだんだんいろんなことが起こってくる。何か心配で、読むのが苦しい感じ。

 主人公はルウ。高機能自閉症(アスペルガー症候群)という感じだけど、この物語は近未来SFで、その時代には胎児・乳児の時の治療法(?)が確立されていて、もう自閉症の人は生まれてこないという設定。ルウにしても正しい教育方法(様々。「療育」と呼ばれるようなもの。パソコンを使った学習。ソーシャル・スキルトレーニング(SST)など)を受け、かなりのコミュニケーションが取れるようになっているし、もともとの能力と、支援する法律などもあり、一般企業で働いている。

 ルウの独白や会話。他の人の視点の独白や会話。で話は進んでいきます。

 ルウの独白や会話の文体は「ありそう」と思わされます。「ある自閉症のお子さんの書いた文(日本語・英語)」の場合はカナータイプの人が書いたわけですが、語順など共通するものを感じます。

 で、そういう「文体」で考えたり、文を作ったりする人もいるのだろうけど、最近当事者の方とネット上でやりとりしていると全然そうじゃない「普通」の文体で書いておられるよなあ、とも思います。「文の裏にある感情、ほのめかし」などを理解しにくい、みたいなところはありはることもありますが。(まあ、当事者の方と言っても、ネット上のつきあいだから確認のしようはないのですが、しかし確からしいと思えます)

 まあこの小説はエリザベスさんの様々な体験や学習がもとにして、「定型(正常・ノーマルという言葉が小説では使われています)」と思われるエリザベスさんが書いてる文だし・・・と言ってもエリザベスさんが定型かどうかなんて、本当のところわかりませんが。

 印象に残ったところの抜き書き。

 トム(趣味のフェンシンググループの主宰者。ルウに好意を持っている)とルウの会話。

ルウ「いいひとでないひとがいるのですか?」
トム「ああ、いるんだよ。いいひとでないひとたちはいたるところにいる、少数のひとたちだが、フェンシングのグループにもいつも入ってくる。でもたいていのひとたちがいいひとだ。競技会を愉しむのもいいよ」


 ルウが自閉症の大人への最新治療を会社から強制されそうだと知った時に、力になろうとするトムに論理的に反駁するルウにトムが言ったこと。

「そうでもあり、そうでもない」

 この言葉は私もよく使います。何かを言葉にしたとたん、それが正しい時にも「そうでもない」ということが出てきますから。

 教会にて牧師さんとの会話。

ルウ「神はぼくたちを愛している、ぼくたちをありのままに受け入れているとあなたは言いました。でもあなたは、ひとは変わるべきだ、癒しを受けるべきだと言いました。ただぼくたちがありのままに受け入れられるなら、きっとそれがぼくたちのあるべき姿なのです。しかしもしぼくたちが変わるべきだとすれば、このまま受け入れられるのは間違いではありませんか」
 彼はうなずく。そのしぐさは、私が正しいことを言ったという意味なのか、あるいはわれわれは変わるべきだということに同意を示したのか私にはわからない。「あの矢(説教のこと)はほんとうにあなたを狙ったものではありませんよ、ルウ、あれがあなたに当たったとしたらすまないことをしました。あなたのことはいつも、とてもよく適応しているひとだと思っていました-神がその人生に課した限界のなかで満足しているひとだと」
「ぼくは、神がそうしたのだとは思いません」と私は言う。「ぼくの両親は、これは偶然に起こった事故(たぶんaccidentでしょうね。事故と訳すとかなりニュアンスが違いそう)だと言いました。あるひとたちは生まれつきこうなのです。でももしこれが神のしたことだとしたら、それを変えることは間違いではないでしょうか?」
 彼は驚いた顔をする。
「でもみんなが、できるかぎり変わるようにと、 できるかぎりふつうになるようにとつねに僕に望んできました。もしそれが正しい要望なら、彼らはその障害が-自閉症が-神のあたえたものだとは信じられないはずです。そこがぼくにはよくわからないのです。それがどちらなのかぼくは知る必要があります」

 私自身は「神はそうあるように作られた」というふうに思っています。で不思議なことに「そのままでいいんだよ」と本人も周辺も思えるといろいろと変わっていく。べつに「ふつうがいいんだ」ということではなく。また「ほったらかし」がいいんだ、ということでもなく。

 終わりの方でルウたちへの「治療の強制」は無くなります。しかしルウは自分で治療を選びます。

 最後は・・・ハッピイエンドなんだろうか?少なくともチキンな心の私は、ほっ、とはさせられました。ルウは小さな頃からの夢を実現します。しかし確実に以前とは変わっている。それが良いことかどうかはわからない。ルウはうまくいったほうであり、うまくいかなかった人もいることが示唆されています。

 著者がフェンシングを趣味にされているようですが、フェンシングのシーン、それから滝のある公園に行くシーンなど、美しく心に残ります。

 映画化されてもいいと思うけどなあ。




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コメント

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2 ■Re:読んでほしい所・・・

>はるぼんさん

|なかなかと読みに来られなくてすみません。

とんでもありません。いろいろありはるんだろうなあ、と推察しています。

ほんま映画になったらいいですのにね。

1 ■読んでほしい所・・・

しっかり読み取ってくださってムチャうれしいです!
kingstoneさん、すごい決め細やか・・・涙目になってしまいました。

最近自分自身が落ち着かなくて、なかなかと読みに来られなくてすみません。

気がついたら記事がいっぱいあって、すごいなあ~~って、今さらながらに思いました。

ルウの魅力を描いてくださってありがとうございます。映画化・・・なるといいなあ~ほんとに^^

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