2010-05-17 10:08:47

ずっと「普通」になりたかった

テーマ:特別支援教育・障害児教育
 大昔に書いた書評です。

※グニラさんは高機能自閉症(アスペルガー症候群?)の方。この本は
 教師や支援者は読むのを勧めます。しかし当事者の方はちょっとつら
 いかもしれません。

ずっと「普通」になりたかった。/グニラ ガーランド

¥1,785
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  ※中古品 414円から

グニラ・ガーランド著 ニキ・リンコ訳
花風社 2000.4.30刊

 読み始めて、つらくてつらくてなかなか読み進められませんでした。

 例えばP11
「いつも同じものばかり食べていても、ワンパターンで退屈だなどとは思わなかった。仮に飽きるようなことがあったとしても、知らない食べ物を試食する死の危険に比べたら、退屈など物の数ではなかったろう。私は歯もひどく過敏だったし、固さや食感によっては、口に入れるだけで全身が苦しくなるほど不快な食べものがいくつもあった。知らない食べものなど口にしたら何が起きるかわかったものではない。だから、皮なしウィンナーとチョコレートプリンだけの食事は、たとえ退屈でも、がまんする値打ちは十分ある。」

 ひょっとしたらこういう感覚を持っていたかもしれないお子さんの口に、「食べなさい!」と言いながらスプーンを押し付けたことがあります。嫌だ、と思っていても「こうしなければならない」と思っていたのです。子どもたちはどんな思いだったでしょうか。

 そういうことを思い出しながら、つらくて読み進められなかったわけです。

 でもこのままではいけない、と昨晩一気に読んでしまいました。

 子どもの頃、大勢の子どもの中にいると耐えられないような気持ちになり、しかし姉と遊びたいと思い、また母親に認められたいと思うグニラ。自分でない誰かにならなきゃなんないのかと考えやってみようとするグニラ。ものすごく不快なものを他人に理解してもらえないこと。視覚優位であり、視覚はすぐれているとはいえ、しかし見てもわからないものもあること・・・

 そしてえんえんと続くいじめ。

 みんなの役に立ちたい、手伝いたいと思いながら、どじってしまいかえって事態を悪くしてしまうこと。

「人は「本当でないこと」をしなくてはならないらしい」これはあまりにグニラのスペルの成績が良いのを不信に思った教師に対応しなくては、とわざと間違うことを覚えたグニラの感慨です。

 またその日その日を生き延びるためにグニラは「嘘(本当でないこと)」を言うこともできるようになるのですが、グニラにとってはそれは「嘘」というのとは少し違うのだ、という記述もありました。なんとなくわかります。

 そして学校時代を通じて「理解してもらえない」ために、そしてものごとをうまくやることができないために自尊心を確実に失っていく様子が描かれています。

 そして何らかのつながりを求めてのドラッグとセックスの日々。

 しかしそれもうまくいかず(?!)託児施設で働きながら、力動精神医学の立場のセラピストにかかりますが、その解釈に納得がいかないままずーーっと来て・・・である時自分で図書館で「自閉症とその関連の障害」についての本を見つけ、「そこに私がいた」と感じます。

 しかしセラピストには

「ところが、この本で読んだことをセラピストの先生に話してみたところ、先生は、自分に障害があるなんていう考えをもてあそぶのは危険だと言う。そして先生は、私がそんなことを考えるのは、あくまでも家庭環境のせいだという立場を崩さなかった。私がその説明を信じていないと見てとると、こんな診断は有害なものですとだめ押しをする。こういう人たちにかかると、脳に損傷があると言われてしまうんですよ、そして、うまく行かないことはなんでもかんでも、脳の損傷のせいといって片づけられてしまうんですというのが先生の話だった」

 ためいき・・・

 これはスゥエーデンの過去の話、というわけではないでしょうね。

 私自身、力動的精神医学に関するようなものも好きでよく読んできたし、カウンセリングの学習も続けていたので、上記のような発言が出てくる背景というのか「言いたくなる気持ち」みたいなものがよくわかるのです。で、今でも好きではあるし、場面によっては力を持つことも知っているので正直なところ「困ったなあ」という気分です。

 でも自閉症の方たちは、困ったどころの騒ぎじゃないわけです。実際問題して人生をグチャグチャにされる(された)場合も・・・

(注・しかしグニラは公平です。これより前の場面で、このセラピーは正しいという気はしなかったけれども、いろいろな面で役にたった。何より大きかったのは、誰かが私のことを気にかけてくれているということだ。と書いてはります。「正しく」なくても「気にかけてくれている」ことは大切という・・・いろんな意味で重いです。自閉症スペクトラムの方がこちらに好意を持ってくれていたとして、それはこちらが「正しい」からではなく、単に「気にかけている」ことが伝わっているからだけかもしれない・・・)

 その後発達障害について詳しい医師を捜して診断を受けて最終的には「あなたは、自閉症スペクトラム上のどこかに位置する状態だと言うことができます。」と言われます。

 これで万々歳というわけではなく、グニラは落ち込んだ気持ちになったことも書いてはります。しかし後のところで

「それは、自分から知りたくて求めた認識ではない。でも、だからといって知らない方が良かったわけでもない」

 そして、その診断もあってのことなのか、自分自身で勉強したせいでもあるのか、または全然別な何かがあるのか、とにかくグニラは以前と比べると生きやすく、また周囲の人からもつきあいやすくなったと言われるようになります。

 最終章で
「今の私はもう、普通の人間ではないことを見破られないため、みんなを騙さなくてはならないとは思っていない。自分でも正体のつかめない弱点を、何だかわらかないままに、あれもこれも隠さなくてはと感じることもなくなった。隠すのに使っていたエネルギーが浮いた分、実際に問題に対処する力は以前より増した気がする」と書いてはりますね。

 つらかったけれど、読んで良かったです。
---------------
追記
 今は力動精神医学の立場の方でも、上記のような解釈をされる方は
稀だと思います。




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