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2014年12月05日(金) 21時58分41秒

Doc Cheatham & Nicholas Payton / "Same Title"

テーマ:僕と1日と音楽と






僕は季節を駆け抜ける

木枯らしが吹くよりも早く

冬よりも先を走っていく

大きな冷気が僕の下を覆っていて

包まれた街が止まっている

やけに動きの悪い自動車が

どこかの壁にぶつかって

くるくると虚しく後輪を回し

運転手が助けはまだかと

しきりに叫んでいた







僕は季節を渡る

鳥よりも密かに足並みを揃え

灯りよりもぼんやりと姿を現す

突き刺さるような月が空に浮かんで

尻と背中を隠している

もう少しで見えるだろうその姿態を

覗くようなふりをして

猫が風を縫って行き

軽やかな口ぶりを失わず

またあの草の中に消えていく







がちゃりと重い音をたてた頭の中

何を取り出すかと思えば

他愛もない人生論

くだらない、と思った

いっそのことどこかの

畑に植えてしまえばいいのに

そしたらいくつか芽が出て

甘ったるい実が成るだろうに







冬がやってくる

いずれ訪れることになる街にも

そしらぬ顔で通り過ぎるあなたにも

暖炉に薪は足りているか?

燃やすものがない冬など

ミシンと何ひとつ変わらない

かたかた回るだけの糸車に

誰も振り向きはしないのだから






ドク&ニック/ポリドール






火を付けよう

ドク・チータムのトランペットのように

若々しく鮮やかに

どんな奢りも許される無反省な

明るい邪心を聞かせてやれ






"世界は日の出を待っている"

固く絞った結び目をほどきながら

ぽろぽろと流れるものは

きっとどんな明るい旋律よりも

今なら美しく聞こえるに違いない










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2014年12月01日(月) 22時50分07秒

Azzola・Caratini・Fosset / "Valse Blues"

テーマ:僕と1日と音楽と





先日、新しく帽子を買った

選ぶのはなかなか困難で

顔の形とうまく合わせなければいけない

店先でああでもないこうでもないと

取っ替え引っ替えしていく

帽子はかぶっていると

自分が誰だかわからなくなるから

ずーっとしていても飽きない

あれもこれもかぶってみる







そのうち、見つかった

全体の形がふんわりとしているやつ

黒くてつばのついた

かぶってみると

自分を認めて欲しくなるような

そんな気がする

自信がついたようで可笑しい







マフラーも合わせて買った

緑で生地が薄いやつ

もともと緑という色が好きなので

ひったくるように買った

タグを見ると

Made in Scotlandと書いてある

それほど馴染みがない国でも

ちょっと誇らしい







冬になると

みんな変身する

ほかでもない自分なのだけど

外套を羽織ったり

帽子をかぶったり

マフラーを巻いたり

自分である部分を隠そうとする

まるで玉ねぎに似ている

たくさんの皮の中に

瑞々しい水分を含んでいるのに








Marcel Azzola, Patrice Caratini, Marc Fosset/

"Valse Blues"





フランスのomdレーベルから出ている

異色とも言えるフレンチ・スウィングの名盤

とにかく変わっている

ドラムレスのアコーディオントリオ

という編成も面白い

何よりも

曲がどれも不思議な展開を持っている

ほとんどが三人の自作になるのだが

プログレッシブ的とでも言うのだろうか

一筋縄ではいかない






もうひとつ面白いのは

ブルーズをやっているのに

ブルーズに聞こえない

ジャズをやっているのに

ジャズに聞こえない

という無国籍性にある

三者の向かっている方向は

名前のついた音楽ではない

何かを目指している






そして

不思議と暖かい

杉の木の香りのような

深い青みをこらえている

季節は今が旬だろう

音楽にも

食べ頃というものは存在する






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2014年11月13日(木) 22時15分23秒

Eddie Reader / "Sings The Songs of Robert Burns"

テーマ:僕と1日と音楽と





人の優しさが身に沁みる時は

決まってどこかに軋みが出ている

先日も風邪をひいたと思ったら

妙に親切な人ばかりが周りにいて

その顔達は毎日見ているのだけど

特別な優しさを感じたことなどなかったのだ







ありがとう、と受け取ればいいものを

ついつい、大丈夫です、と断る

断られた方も疑り深く

本当に?

ときたものだから

その親切に甘えておきます、と

妙に浮いた答え方をする

そうそう、それで良し、と先方の顔

どうも目の向けどころが定まらなくて

何度もペットボトルに口をつけていた







ふと

自分は誰かの軋みに

あんなふうに気取らずに

さっと油をさせているのかと思うと

妙に恥ずかしくなってくる

キィキィ鳴る自分の体が

惨めに思えてきたりする

自分のメンテナンスの仕方も知らずに

他人に油を差そう

と考えることを

世間ではおごりと言うのだろう






スーパーのレジ

ハキハキと目を見てお釣りを渡される

たまには挨拶も必要だろうと

会釈をしながらありがとう

と空気に撒いてみる

ちょっとした優しさの恩返しが

返ってくるならばそれで良い

風邪薬のあの苦みもまた

同じように体に沁みるようだった





Sings the Songs of Robert Burns/Compass Records





エディ・リーダーの声が

妙に恋しくなるのがこの季節だと思う

葉っぱが色付きはじめて

空気がしん、と冷たくなって

光がぼんやりと綺麗で

月が奥まって見える頃

彼女の歌が聴きたくなる






フェアーグラウンド・アトラクションで

繊細で優美で弾けたポップスを

歌っていた彼女

ここではスコットランドのトラッドを素材に

自由にどんどん羽ばたいていく

1曲目の"Jamie Come Try Me"

一体どこまで翔んでいくのだろう、という

感情の広がりが素晴らしい

とても雄大な音楽だと思う







それぞれにケルトの旋律が顔を出し

随所にストリングスが散りばめられる

一歩間違えれば企画のみが鼻につくものだが

エディ・リーダーの解釈が素晴らしいのだろう

全てが一級品の音楽だし

彼女のベストソロに挙げても良いぐらい

歌唱も吹っ切れていると思う







古びたウィスキーの瓶のようで

リズムも楽し気な

"Charlie is My Darling"もとても良い

最後は"蛍の光"なのだが

お馴染みのあの旋律ではない

でもより郷愁が感じられるのはなぜだろう

歌とどこかの風景が重なって

胸が感情で一杯になるのは

なぜだろう




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