今日は医薬品価格決定の話です。医薬品の流通は大変複雑で、古くからの慣習や既得権に守られており、なかなか実態が見えてきませんでした。

例えば、みなさんは総価方式というのをご存知ですか?薬の卸問屋から、病院や調剤薬局に薬を卸すのですが、驚くことに、一個一個の薬の値段に基づくのではなく、それこそ一山いくらの総価方式で、納入価格を決めているのです。

2010年現在でも、200床以上の病院の46%、20店舗以上のチェーン薬局の70%がこの総価方式を導入しています。販売しているひとつひとつの商品の仕入値段がわからない業界が、どこにあるでしょうか。従って、2年に一度の薬価改定のときは、卸と病院、薬局の間で、この「総価」をいくらにするかで長い交渉をします。しかし、交渉が妥結するまでは、医薬品を卸さないわけにはいかないので、未妥結、仮納入といって、値段は交渉中だが、医薬品は供給するといった驚くべき慣習が存在するのです。

2010年6月段階での妥結率が28%。チェーン薬局にいたっては5.5%です。つまり、94.5%のチェーン薬局は、卸値が決まらないまま医薬品を販売しているということなのです。では、何故このようなことが続いているのでしょう。実は2年に1度、6月時点で厚労省は薬価調査を行います。

この調査によって厚労省は診療報酬の新薬価を決定します。大病院や大薬局ら大口取引先との交渉で、納入価格が大幅に値引きされると新薬価も大きく値下げされます。

総価方式や未妥結、仮納入というのは、これを避けるために大口先の納入価格を新薬価に反映させない仕組みなのです。逆に中小病院や一般薬局は、価格交渉がし易く、大幅な値下げをしなくてもいいので、ここで納入価格を維持すれば良いのです。

これで新薬価の大幅引下げは回避されます。勿論厚労省は、そんなことは百も承知です。みんなで既得権益を守る仕組みになっているのが総価方式です。

一般のビジネスの世界では非常識なことが、この業界では、常識としてまかり通っているのが現実です。

今回、もし日本がTPPに参加すると、このような不透明な商慣習も改めざるを得なくなるでしょう。医薬品の流通過程の近代化は、焦眉の課題になる筈です。次に、わが国の社会保障費の問題に直接拘わってくるのは、ジェネリック(後発医薬品)問題でしょう。


次回は、このジェネリックと医療保険制度について書いてみたいと思います。なお、総価方式に関しては、昨秋日経ビジネスに書かれていますので、興味のある方はご覧ください。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/NBD/20121003/237601/?ST=pc