WOW鹿野さん。 | 三茶農園/きむらさとる

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 気付きの共有。コミュニケーション、演出表現について、まちづくり。渋谷とか静岡。

世界で通用するデジタルクリエイティブとは?」というトークセッションを聞きました。

  • グローバル化という言葉を聞かない日はない。
  • 10年20年という長いスパンで見ていくと内需は沈んでいく。
  • 我々は日本でくすぶっていていいのか?
  • 日本の企業はグローバル/アジアにでていかなければならない。
  • ワンパクは20人弱、イメソ40人ちょっと、WOW40人ちょっとぐらいの規模。
  • その規模でも世界を意識しないと生き残っていけないという危機感を感じている。
  • 僕らが危機感をどうやって解決し、世界に向けて歩んでいったらいいのか。
  • というところから「世界で通用するデジタルクリエイティブとは?」というテーマを設定。

  • モデレーターが、ワンパク 阿部さん(@1pacfiresoul)。トークゲストが、ノングリッド/イメージソース 代表の小池さん(@hk_hiroshikoike)と、WOW の鹿野さん(@zuga)。全体的に淡々粛々と進行したのだけれど、ワンパク阿部さんのモデレータがとてもお上手で、またイメソ小池さんによる上海ブランチのスタートアップ話などすべてが示唆に富んでいて大変有意義でした。そんななかWOW鹿野さんのお話は、

  • 海外に打って出る必要を感じてない。

  • と、圧倒的に立ち居地が違ったというか、生きるヒントを得たというか、脳内をだいぶ侵食されたのでそのときのメモ抜粋です。ちなみに、阿部さんが宮城県名取市出身、小池さんが福島県郡山市出身、鹿野さんが宮城県松島在住ということでみなさん東北出身。東北は頑張ってます。w


    【WOW鹿野さん自己紹介】
  • アートディレクター。
  • 15年前に仙台でWOWを立ち上げた時は、もともと映像だけをやっていた。
  • 収益の100%がTVCMの制作会社だった。
  • 映像制作の会社から始まって、現在ではUIやインスタレーション設計なども手がけている。
  • インスタレーションとして空間の中に投影する、空間と映像を一体化させるプロジェクトをやった。
  • 自分たちの映像がメディアのなかでだけ再生されるのではなく、実空間で成り立つ予感がした。
  • そのときから環境デザインに近いものとして成り立つのではないかと、会社の方向を変えていった。
  • 箱(メディア)の中でなにかをやっていくということに、どうしても縛られてしまう。
  • それをどうやって打破していくかということを15年間考え続けてきた。


  • 【どこで実験してようが、世界中に目撃してくれる人が必ずいる】
  • 1年に1本は必ず、受注してなくても、勝手に作る作品をやってきている。
  • 自分たちの腕試しとして作って、社会に提示することを意識してやっている。
  • 年によってはオリジナル本数が多くなって業務を圧迫することもある(笑)。
  • 視覚デザインだけでなく、人間中心のデザインをやっていきたい。
  • なので、UIの設計だったりまで範囲を広げている。
  • WOWではいろいろなプロジェクトを海外に向けて発信したり受注している。
  • どれも自分たちのやりたいことを勝手にやっていたら世界に拡がっていった。


  • 【英語でまとめるのは意図的にしている】
  • それらの作品に共通していることは、実験結果を英語でドキュメントにまとめて公開すること。
  • 目を付けた海外の方から連絡が勝手に来る。それもちょくちょく来る。
  • すべて同じような経緯で拡がっていってる。
  • YouTubeはどっから見つけてきたんだろう、というぐらいみつけて問い合わせがくる。
  • そこでうまくマッチングできる場合は、多少貪欲に、利益がでなくても、どんどん海外にでていく。
  • 宮城県美術館で展示されていたものが、次にロシアで展示されて、というのが面白い。
  • つたない英語でドキュメントをまとめても、熱意が伝われば、問い合わせが必ずくる。


  • 【特殊な技術であるほど、いともたやすく海外とつながれる】
  • 1年に1回は必ずオリジナルを作ると言ったが、それは常に新しい技術に挑戦しようというのがある。
  • 例えばアップルがOS10を出したときに、クオーツコンポーザーというすごく特殊な技術があった。
  • ウェブでは見られない技術。
  • それに興味を持って熱烈に公開していたら、アプリのデベロッパー自身から連絡が来た。
  • 「アップルを辞めてCoolirisに入ったので一緒にやらないか?」と。
  • 特殊な技術があればいともたやすく海外とつながれる。
  • 逆に、汎用的な技術であればあるほど繋がりにくい。
  • 狭いけれども特殊、というのはひとつの独自性を生み出すきっかけ。
  • 世界とつながっていくきっかけにもなる。


  • 【お見せできない例がたくさんあるが、UI設計の例をふたつ持ってきた】
  • addLib
    オリジナルのiPhoneアプリ。撮影した写真を、グラフィックデザイナーが使っているであろうアルゴリズム(考え方)をモチーフに、自動的にポスターにレイアウトしてくれる。
  • Cooliris Discover
    シリコンバレーにあるデベロッパーCoolirisとWOWの協同開発、Wikipediaを雑誌のように楽しむアプリ。


  • 【シリコンバレーは激しい開発スピード。我々はまだまだ努力が足らないな】
  • このアプリケーションふたつを比較として面白いと思っていること。
  • addLibは、売るということは考えていない。
  • 自分たちがどういったポリシーでグラフィックデザインに取り組んでいるか振り返ること。
  • デザインに対する自分たちの眼差しを、売れなくてもいいから考えてやっている。
  • Coolirisはこれと真逆で、自分たちが作った技術をいつ公開するか。
  • オープンソースにする前提でスタートしているので、激しい開発工程でやっている。
  • プログラマー自身がアイディアと企画を考えて、デザイナーがそれに付いていくような感じ。
  • なかなか刺激的なスタイルだった。
  • それまで、シリコンバレーの方は、昼寝したり、あまり仕事してないイメージだった(笑)。
  • けど、ものすごく働いているのがわかった。
  • その人はアップルでも経験しているんだけど、もっともっと激しい制作スピードだったと聞いた。
  • 我々はまだまだ努力が足りないな、と思った(笑)。


  • 【海外に打って出る考えがなくなった】
  • 個人としての活動として、二十世紀ボヤージという作品を、ウェブで公開している。
  • 10年前に初めて作って、自身が海外とのつながりの突破口になった作品。
  • ちなみにWOWが海外に進出したのは2008年。
  • ロンドンにいったんオフィスを借りて、その後フィレンツェのパートナーに窓口をお願いしたり。
  • またロンドンのアズテックという会社と窓口を作ったりして、現地での活動をはじめた。
  • けれども、それよりもだいぶ早く個人的には海外に向けて取り組んだ。
  • ボランティアで英訳してくれる海外の方が現れて、海外からすごくコメントが寄せられた。
  • そのとき「WEBってすごい」「インターネットってこういうものなんだ」とすごく感じた。
  • それを感じてから海外に打って出るみたいな考えがなくなった。もう自然につながってる。
  • 意識するまでもなく普通にメールが1通来るという状況がわかった。
  • 挑戦するという意識がなくなり、別に出ていかなくてもつながっていける、という考えに至った。


  • 【インターネットと地域性の中で何を作っていくか】
  • ネットを使った表現、ネットを使ったコミュニケーションは非常に大事だと思う反面、
  • 自身は仙台という地方都市でデザインを進めていく。これからも何十年と生きていく。
  • そのとき、ローカリティ、地域性、の中で何を作ってくのかというのはすごく重要だと思っている。
  • 松島流灯会海の盆 というお祭りがあったが、30年前に途絶えてしまった。
  • いわゆる商業イベントができたおかげで、街の文化としてあったお祭りが途絶えてしまった。
  • だけど、震災を期に復活させようとなり、そのプロジェクトに参加した。
  • 地元のみなさんのコミュニケーションツールだったりとか、ウェブとかビジュアル面でのお手伝い。
  • 地方都市、仙台、みたいなところで何かを作っていくときに、ハイブリッドな視点が重要じゃないか?
  • 「土地と関係のないネットワークでの世界」×「土地にくっついている世界」
  • 創造性が交互に行き来することによって、何か独自性が生まれるんじゃないかと感じ始めている。
  • 中学生ぐらいのとき地元が嫌いになっていく、洋楽のほうがかっこいいじゃん、みたいなのがあった。
  • でも本当は、自分の周りにいけてるものがたくさんあることに気づいた(笑)。
  • なので、もう一度地元を見返していきたい。


  • 【境界の部分ってすごく熱い】
  • 別の次元、別の業種、別の世界と交わっている、そういう境界の部分がすごく熱いと感じている。
  • たとえば「他者と自分」の関係なんかもそう。
  • 別の世界との境界が存在しててそれが交わったりしてる部分。
  • そこに、僕らはコマーシャルだったりビジュアルデザインを提供していく。
  • そう考えたとき、いま最大の接点がiPadのようなデバイスになってきていると思う。
  • その接点の部分に、我々がビジュアルデザインを提供できなかったらやっぱり面白くない。
  • 積極的に進めて行きたい。


  • 【ウェブは、もっと広い意味でのデザインの対象物になる】
  • UIのプロトタイプを作ったりする際、積極的にウェブの技術に取り組んでいる。
  • 最近では、WebGL みたいなものに激しく取り組んでいる。
  • ウェブを使ったテクノロジーみたいなものは、今後、ウェブという世界に留まることはないと思う。
  • もっと広い意味でのデザインの対象物になるのではないか。
  • イラストレーターの代わりにHTML/CSSソースを使うような選択肢って出てくると思う。
  • 映像出身の我々でさえ、当然ウェブの世界に入り込んで来ている。


  • 【日本のクリエイターはそもそも世界にでていくべきか?】
  • 出て行くべきだとは思うけど、何しに出て行くのかが重要。
  • 利益をあげるのか?クライアントと一緒に成長していくのか?というところの目的を明確にしないと。
  • もうひとつ、インターネットですぐにつながれるので、あまり意識しなくていい。
  • ソースをたくさん手に入れて、オープンソースのプロジェクトにガンガン参加しているとする。
  • そうなると、出てってはいないけど、そこに染み出している状況。
  • 以前、高木正勝さんのインタビューを読んだ。
  • 「世界に認められたっていうけど、海外の数人ぐらいのキュレーターに認められただけ。」
  • 「別に海外のサービスを成功させているわけではない。」
  • であれば、あまり頭でっかちに考えずに、まずはネットベースで気楽に挑戦。
  • と考えてみたほうが、自分のきっかけを広げていくことになるんじゃないか。


  • 【世界に出ようとおもったきっかけは?】
  • WOW10周年なのでなんかやりましょう、という社内事情で海外デザインイベントに自分たちで出展。
  • そこからつながった方と交流をしながら色々なプロジェクトに拡がっていったというのがきっかけ。
  • テントロンドンというデザインイベントの初回枠。
  • そのときは影絵をしたが、意識したのは、自分たちだけができるデザインや仕掛け。
  • それでいてシンプルで言葉の壁を感じさせないもの。
  • 具体的な作品は、映像を投影して片方から見ると瓶と花が一緒になって咲いているように見えて、
  • 他方から見ると瓶しか置いてないものに見える。その視点の移動をデザインした。
  • 案の定、海外の方が両側から眺める、という導線を取ってくれた。
  • こちらの設計したエクスペリエンスデザインに則ってくれたのを見た。
  • 「あ、自分たちならではの言語で勝負できる」というのに気づいた。
  • そこですごく喜んでいただけたので「これはいけるな」と気づいた。


  • 【映像だけのクオリティでは、ハリウッドやヨーロッパには勝てない。】
  • 映像だけのクオリティでは僕らのセンスでは彼らに勝てない。
  • 特にハリウッドやヨーロッパには勝てない。
  • そこでインタラクションも含めたビジュアルデザインだろう、と思った。
  • そのとき、それが実現できてよしいけると感じたので、賭けてみようと方向性を振った。


  • 【必要最低限のすべてをそぎ落としたシステムを意識】
  • 自分たちの自腹。すべて手弁当。必要最低限のすべてをそぎ落としたシステムでやっていた。
  • 普通の人が普通に買えるだけの範疇(笑)。
  • プロジェクター、検知させるセンサー、パソコン、というもって行きやすいパッケージ。
  • どこでもゲリラ的にやれるということは、最初はかなり意識してた。


  • 【世界に出て変わったことは?】
  • 仙台で起業したので、東京で成功したい、日本で成功したい、とずっと思って一生懸命やってた。
  • けど、実際海外に出てみたら、もっと世界の隅々のひとに認めてもらいたいと思った。
  • なので、日本もそのひとつというふうに思えるようになってから価値観が変わった。
  • そして作るものの軸が、言語に頼らないものにシフトした。
  • それともうひとつ、自分たちに「しか」できないことはなんだ?というのを強く意識するようになった。
  • 海外に出て向こうにすでにあるものを憧れとしておいかけても仕方ない。
  • あーなりたい、と憧れを追いかけるのではなく、むしろ視線が自分の内側を向くようになった。
  • そこからさらに変わったのは、日本のことをもっと知りたい、ということ。
  • 引きこもり体質だからかもしれないけど、自分を見直すようになった(笑)。


  • 【現地の方と、一緒にやっていく、というスタンスはすごく重要】
  • ロンドンのオフィスはもうなくて、フィレンチェに代理人がいる。
  • 現在ロンドンには、インスタレーションなどの設営をするパートナーはいる。
  • そこにWOWはデザインを提供している。
  • 会社としてはヨーロッパの市場を攻めている。
  • けど、現地のひとが介在していないと、パッと来て終わるんじゃないかと思われなかなか続かない。
  • 現地の方と一緒にやっていく、というスタンスはすごく重要と感じている。
  • そこでつながって、また次のステップにつながっていく。
  • 一番最初にロンドンにいったときには、物件見て回って速攻借りた。
  • けど、それだともたなかった(苦笑)。
  • それよりも、リアリティのある、現地の方といい友好関係を結ぶべき。
  • いいビジネスパートナーを見つけて、いい仕事を選んでやっていくというのが重要。


  • 【世界と比べたときの日本のクリエイティブの実力とは?】
  • WOWは広告賞には縁遠い。
  • どちらかというと、まだ産業化しないところに興味を持っている。
  • ビジネス的にはよくない視点だと思うけど(笑)。
  • まだ賞もらえる手前の、業界が確立する手前のところで頑張る、というのをやりたい。
  • 実力とは、でいうと、表現力は日本はすごく高い。
  • むしろ、カンヌ広告賞なんかはもっと獲ってる印象だったので日本の受賞が少なくて意外。


  • 【使う、というのは得意だけど、作る、というのが日本人は苦手】
  • 世界と比べたときに、実力の差で感じるのはもっと技術よりのところ。
  • 日本人はFlashを使う、というのは得意だけど、根底技術や基盤技術を作るとなるとたちまち弱い。
  • jQqueryとかオープンソースのプロジェクトに対してもっと日本のデベロッパーはコミットすべき。
  • そして、そのフィードバックを日本にも返していくというところがあっていい。
  • なので、なるべくそういう基盤となる技術にタッチしつつ、表現もするところは心がけている。
  • そのへんをもっと積極的にやると、(日本の)底力をあげられるんじゃないか。
  • 単に花火をあげる、単にキャンペーンを作るのではなく。可能性は秘めている。


  • 【最初に道具を作る、というのをもっとしたほうがいい】
  • いま企画しているのは、デザイナーがインタラクティブなものを作るためのツール。
  • ビジュアルフローのプログラム環境を作って、オープンソースにできないかな、ということ。
  • いわゆるクオーツコンポーザーみたいなもの。年内には出したい。
  • デザイナーとプログラマーの垣根を越えていけるツールとして確立していきたい。
  • もともと映像出身なので、プログラマーへのコンプレックスが高いし近づきたい(笑)。
  • そのコンプレックスがあいまって、プログラマー、デザイナー、のためのものができたら目標達成。
  • 最初に道具を作る、というのをもっとしたほうがいいかなと思っている。
  • たとえば本を執筆する前には本を執筆するためのツールを作る。
  • プレゼンの前にはプレゼン資料を作るツールを作る、ということをやっている。
  • ツールを作ることで把握できる。


  • 【繊細に、あいまいに、ささやかにつながっていくことが好き】
  • 気にかけてもらうのが重要かなと思っている。
  • ちょっと気になる存在になるとか、なんか微増していくとか。
  • なんかどーんとやるのではなく、ささやかな継続性が好き。
  • 繊細な、あいまいな、ささやかな、そんなつながり。
  • それがどんどん増えていくみたいなことができないかなという想いがある。
  • クオーツコンポーザーをマニアックに勉強していたらその作者と出会うことが出来た。
  • わざわざ日本に来たときにも会ってくれた。
  • 映像をつくっているとき、シネマ4Dの開発元のひとたちも来てくれた。
  • 道具を作っている作り手と会えるというのは光栄なこと。
  • そういうアプローチをしていきたいし、そこまで届くものづくり、表現作り、をしていきたい。


  • 【世界に出るには何から攻めれば良いのか?】
  • デベロッパーにとって英語が読めると、最新の翻訳される前のソースやドキュメントが読める。
  • しゃべれればもちろんいいけど、最低限そこにタッチできないと、デベロッパーとしてつらい。
  • 翻訳を待っていると半年ぐらいかかるし。


  • 【世界に出て行くために必要な人材は?】
  • (言語の/英語の)恐怖症って、一番大きい壁だと思う。
  • まずはそこを取り除ければ、あとはなんとかなる。
  • なんとかなることをみんなが知っていくことが重要。
  • Coolirisと仕事をしたときには、24時間Skypeでつながってチャットしている状態。
  • 画面をたまに乗っ取られてプログラミングされたりしてた。
  • ソースコードで会話している。
  • 自分たちの共通言語を見出すことができれば、あとは仕事になる。一歩踏み込める。
  • それと、スタッフに海外現地を見せること。
  • 自分たちの作品が、海外でここまで通用しているという成功体験を見せることは大事。


  • 【これから世界に向けてどうしていくのか?】
  • WOWではなく個人としてだけど、海外に出て行くフェーズではない。
  • 自然につながって、世界中のデベロッパーが使うものをこちらから提供していく。
  • 僕らの技術を欲しがる、僕らの感性を欲しがる、というのがこれから数年の目標。



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