不正競争防止法の改正に思うこと
今年の2月に、不正競争防止法の改正が閣議決定された。
http://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/index.html
http://www.meti.go.jp/report/downloadfiles/g90216a01j.pdf
正直、この頻繁かつ小出しな改正の流れには少し呆れている。
不正競争防止法で営業秘密が保護されるようになったのは平成2年の改正時からである。
しかし、営業秘密の侵害行為が刑事罰の対象とされるようになったのは、平成15年の改正時からである。それまでは、刑法の窃盗罪、業務上横領罪、背任罪で処理してきたのであるが、平成2年法以降、刑法を適用した事案は極めて少ない。不正競争防止法で不可罰としているのに刑法を適用するのは抵抗があるのだろう。
平成15年改正は慎重に作られており、(1)原則として「使用」と「開示」のみを処罰し、「取得」は不可罰(媒体を領得、または内容を複製した場合に限り可罰)、(2)「使用」と「開示」について「不正の競争の目的」を要件とする、という方針が採られた。
平成17年改正で国外犯処罰、退職者処罰の手当がされた。
法定刑も少しずつ重くなった。平成15年法で最高懲役3年だったのが、平成17年法で懲役5年、平成18年法で懲役10年になった。
こういうのを小出しの改正といわずに何と言おう。刑事罰を少しばかり重くしたところで技術流出が減るとでも思っているのだろうか。
商法の改正でも、監査役の権限を少しずつ強化する小出しの改正を何回も行ったが、実務に何の影響も与えなかった。訴訟で監査役の責任が問われる事例が現れて、初めて実務が動いてきた(ノーを言う監査役が出てきた)のである。
不正競争防止法の今度の改正の趣旨は、要するに(1)「取得」も可罰とする、(2)「不正の競争の目的」では厳しすぎるから「図利加害目的」(不正の利益を得る目的または保有者に損害を与える目的)で十分とする、ということである。
まさに平成15年改正時の立法の苦労を否定するもの。こういうのを「なし崩し」という。
借地借家法を作るとき、「定期借地権」はよいが「定期借家権」はダメと、散々議論して決めたはずなのに、あっという間に法改正で定期借家制度が導入されたのを思い出すではないか。
刑事罰を強化することが技術の流出の防止につながるという発想が根本的に誤っていると思う。
もちろん適切な刑事罰を設けることは必要だが、それだけで十分なはずはない。いい加減、違う方向性を考えないといけない。
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