(要旨)

■失業率は、失業者数を(失業者数+就業者数)で割った値

■失業者はゼロにはならない

■失業率が下げ止まると賃金が上がるはず

■失業率は景気の遅行指標(景気に遅れて動く)

 

(本文)

労働力不足なら、企業は失業者を雇えば良いので、失業者はゼロになる(失業率もゼロになる)はずですね。なぜ、そうならないのでしょうか?そもそも失業率って、どう計算しているのでしょうか?今回は、初心者のために失業率について解説してみました。

 

■失業率は、失業者数を(失業者数+就業者数)で割った値

完全失業者とは、仕事を探しているが働けていない人を指します。高齢者や専業主婦や学生などで、働く意志のない人は失業者ではありません。従って、「高齢化が進んで働かない人が増えると失業率が上がっていく」という事にはならないのです。

 

仕事の意欲はあっても、仕事を探していない人は、やはり失業者ではありません。したがって、高齢者の失業率は現役世代より低くなっています。現役世代は簡単には仕事探しを諦めない一方で、高齢者は仕事探しを簡単に諦めるからです。

 

失業率は、失業者数を(失業者数+就業者数)で割った値です。従って、仕事探しを諦めた人などは、失業者でないだけでなく、そもそも失業率の計算の分母にも入りません。従って、「高齢化が進んで働かない人が増えると失業率が下がっていく」という事にもならないのです。

 

■失業者はゼロにはならない

労働力不足なら、企業が失業者を雇うだろうから、失業者はゼロになるはずだ、と思っている人は多いようですが、そうはなりません。失業者の満たす条件と企業の求める条件が異なるからです。たとえば企業が「パソコンの出来る人を募集」したとすれば、パソコンの出来ない人は失業したままです。「田舎で両親の介護をしながら働ける仕事を探している人」は、都会で求人があっても失業したままです。こうした事例を「雇用のミスマッチ」と呼びます。

 

高度成長期の失業率は1%強でした。当時でさえも、失業率はゼロにはならなかったのです。今がゼロでないのは当然です。しかし、当時の水準に近づいて行く事は可能なのでは?残念ながら、そうでもないのです。現状(3%弱)を大きく下回る事は考えにくいと言われているのです。

 

高度成長期は、農村から若者が都会に働きに来ました。都会では豊富な仕事がありました。そして、都会の仕事は「工場での単純労働」という「誰でも出来る仕事」だったのです。しかし今、工場の単純労働はアジアで行なわれており、国内の工場には単純労働はあまり残っていません。「パソコンが使える人」といった募集が多いのです。当時は、「親の介護をしながら田舎で働きたい」という人は少なかったですが、今では大勢います。当時は「とにかく働かなくては」という人ばかりでしたが、今は「満足のいく仕事が見つかるまで親に食べさせてもらおう」という人も少なからずいます。

 

■失業率が下げ止まると賃金が上がるはず

失業者が大勢いる間は、企業は自由に安い労働力が使えます。次第に失業率が下がって来ると、「1日4時間しか働けません」といった子育て中の女性などが仕事を探しはじめます。今までは仕事探しを諦めていたのですが、自分でも働けるかも知れないと考えるからです。

 

そうした動きが一巡すると、賃金が上がりはじめます。「アルバイト募集。他店より高い時給を払います」といった貼り紙が目立つようになってくるのです。労働力の奪い合いです。そうなると、今まで仕事を探していなかった人の中に、「そんなに時給が高いなら、少し無理をしてでも働こう」という人が出て来ます。失業率が下げ止まってからも、就業者数は増え続けるのです。

 

しかし、就業者数の増加ペースは鈍って行きますから、景気が拡大を続ける限り、労働力不足が深刻化していき、労働力の奪い合いによる賃金上昇が続くことになります。もっとも、賃金の上昇は非正規労働者が中心で、正社員の給料はそれほど上がらないかも知れません。正社員は終身雇用制で年功序列賃金ですから、労働力の奪い合いで賃金が上がるという事が起きにくいのです。最近ようやく、中小企業では労働力の奪い合いによる賃金上昇が始まったようですが。

 

■失業率は景気の遅行指標(景気に遅れて動く)

「失業率が下がっていれば景気は回復中で、上がっていれば景気は後退中」というのは、誰にでもわかりやすい景気の判断法なのですが、少しだけ注意が必要です。現在のように、景気が緩やかな上昇を続けている時は、失業率は下げ止まるまで緩やかに低下していくだけですから、問題はないのですが、景気が方向を変える時には失業率を見て景気を判断するのは危険なのです。

 

景気が悪い時は、社員がヒマにしています(社内失業もいます)。景気が回復を始めると、彼等が忙しく働くようになり、更に景気が回復すると彼等が残業するようになります。更に回復が続くと、労働者の募集が始まりますが、そうなると今まで仕事探しを諦めていた人々が仕事を探しはじめますから、失業率はなかなか下がりません。更に回復が続いてようやく失業率が下がり始める、というわけです。

 

景気がピークアウトして後退を始めるときも、まずは残業の削減があり、次いで社員が余裕が出来て来て、はじめて人員削減が始まりますから、やはり景気後退のタイミングに遅れます。従って、一般の人が景気のイメージを掴むのには便利ですが、景気予測のプロたちは「失業率は遅行指標だから、失業率を見ていると景気が方向を変えた事に気付くのが遅れてしまう」といって、あまり注目していないのです。失業率の雑学豆知識でした(笑)。

 

 

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