今月号で衝撃的なあの言葉を放った
龍の妄想補完話です。

龍は何を思ってあの言葉を言ったのか
というのを妄想しながら書きました。


ではでは早速どうぞ~~


※このお話は別マ2月号までのネタバレを含みますので
未読の方はご注意ください。



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しょーたが、黒沼に好きだといった。



黒沼との間に、
何があったのか、
細かいことは俺は知らない。

でも、
明らかにちょっと前までしょーたは落ち込んでいた。

俺は初めて見たかもしれない。

あんなに落ち込むしょーたの姿を。

どちらかといえば、
俺もしょーたも、
リトルリーグにいるときからいくら怒られても、
あまりめげるタイプじゃなかった。

むしろ、逆に負けたくないって気持ちの方が強くて、
悔し泣きしてる姿はみても、
落ち込んだりしてる姿なんて、
お互いほとんど知らないくらいだ。

なのに、
そんなしょーたが、
明らかに落ち込んでいたから、

驚いた。

その原因が
黒沼のことだっていうのは察しがつく。

千鶴とおなじくらい、しょーたはわかりやすいから。
何も言わなくてもだいたいなんとなくわかる。


そんなしょーたの口から、

「ふられた」

と、聞いたとき、
俺は一瞬耳を疑った。

黒沼がしょーたをふった??

何かの間違いだろう?

てっきり俺は
黒沼もしょーたのことを好きだって思っていたから。

何がどうしてそうなったんだ?

俺にはさっぱりわからなかった。

でも、
黒沼も明らかに様子がおかしかった。


俺の中には何かしっくりこない気持ちふつふつと沸いていた。



――本当にしょーたはふられたのか?――



でも、
それを俺がしょーたに言ったところで、
黒沼としょーたの気持ちがつながるとは思えなかった。


これは、俺が口を出すような問題じゃない。

しょーたが自分できっと答えを見つけるはずだと思った。


それからしばらくして、
教室で二人でいたとき、

『俺もあきらめたくない、・・・好きなんだ』

そう言ったしょーたの顔はどこか吹っ切れた感じがした。

そうか、答えを見つけたのか。



やっぱりな。



簡単にはあきらめられない気持ち

それは俺もわかる。


*******


その後、山車作りに集まったときに見たしょーたは
明らかに違っていた。

どこか落ち着きがなくソワソワしている。

何があったのかまでは想像できないが、

地に足がついていない様子から、
黒沼との間に何かがあったことは明らかだった。
それも、何かいいことが。

本当、わかりやすいな・・・。



だけど、
俺の思考はそこでストップした。

なぜなら俺はその場で寝てしまったから・・・。






そして話は冒頭に戻る。

校庭に響いた

「・・・すきだよっ!!」

という声。

しょーたの気持ちはどうやら黒沼に届いたらしい。

よかったな。

そんな気持ちと同時に俺の中で何かが疼いた。

ジョーを抑えながら、
ちらりと千鶴に視線を送ると、
嬉しそうな顔をして二人を見ていた。

俺がしょーたのように言ったら、
はたして千鶴に伝わるのか?

「ん?なんだよ龍」

俺の視線に気づいた千鶴がこちらを見たが、

「いや、べつに」

そう言って、俺は再びしょーたたちの方へと視線を送った。

「???」

怪訝な顔をしている千鶴。

たぶん、千鶴の答えは想像できる。



だから俺は言わない。



まだ、言わない。


*********


クラスの打ち上げ会場は、
しょーたと黒沼のことでもちきりだった。

そして、
後からやってきた二人は、
照れながらも幸せそうで、
今までと違う空気になんだか俺まで恥ずかしくなってしまうほどだった。


そんな二人の様子を嬉しそうに見守る千鶴のことを、
いつもよりも目で追ってしまっている自分がいた。

俺もしょーたたちに少なからず感化された・・・のだろうか?



そして次の日、

しょーたと黒沼の話題は学校中に広まっていた。

俺も登校してきてすぐに何人かに

「なあ、龍も知ってたの?」

と質問攻めにあう。

でも、
黒沼としょーたがつきあうことってそんなにおかしいか?

俺には正直、信じられないと言ってる奴の方が疑問だった。



そのあとは一日学校祭の片付けに追われた。

俺としょーたは体育教官室の掃除をすることになった。

モップがけをしながら、

「よかったな、しょーた」

今まで言うタイミングがなくて言えなかった言葉をようやくいうと、

「龍、どーもな」

しょーたは照れたように俺に礼を言った。

イヤ・・・本当に俺は何もやってねーんだけど・・・。

そこに

「俺には?俺には?」

突然現れたピン

「どー考えてもMVP俺だろう?ハイッありがとーございます!!」

いつもなら、なんでだ!とすぐさま反論するしょーたが

「・・・・・・・・ありがとうございます」

素直にそう言った。
一瞬、
俺も、言われたピンもあっけにとられた。

今までしょーたがこんなことピンに言ったことなかった。




・・・しょーた・・・よっぽど・・・




ピンはどうやら黒沼にもいろいろ言ったらしい。


それが、なんなのかはよくわからないが、
結果的にいいほうにいったことは間違いなさそうだった。

俺としょーたが、
なんだかんだで
ピンに対して頭があがらない・・というか、
どこか尊敬の念を抱いてしまう理由はそこだ。

言い方はともかく、
ピンの行動や言動は
なぜか不思議とあとでジワジワ効いてきたりする。

事実、
前に俺に作ってくれた
マル秘特訓メニューも、内容はかなりめちゃくちゃだったが、
そのとおりにやっていたら、
筋力とスタミナが格段にあがった。

意味がないようで意味がある。

それがピンだ。

「ぼっちゃんよ・・・恋愛はなァ――最初に告白する奴だけが本命と戦えんだよ。2番目3番目以降の奴は戦う資格すらない」

そしてまた、ピンの口から突然放たれた言葉に
モップを持っていた俺の手が止まった。

深い意味はよくわかならい。

でも、
しょーたに向けられたであろうその言葉は
なぜか俺の心にストレートに響いた。




言われて気づいた。

まだ、言わないなんていってる場合じゃなかった。

フィールドにすら俺はあがってなかったのか・・・。


どうやら
長い間思い続けていたせいで、基本的なことを忘れていたようだ。


心のどこかで、このポジションのまま隣にいることが一番の近道だと決め付けていたのではないか?

このままでいたら、どこかで千鶴の方が気づいてくれると思っていたのではないか?

自分にそう投げかけた言葉は、事実そのとおりだった。


千鶴にとって一番近いのは俺。

俺以外の奴が千鶴に似合うわけがない。

妙な自信があったけど、


何も言わなくてもわかるだろう。

なんて
そんな都合のいいことあるわけない。


チャンスは待っていたって、やってこない。

自分で行動をおこさなくてはやってこない。


それは俺が野球の試合の中で散々学んできたことじゃないか。


なのに、
俺は、まだ何も言えてない。

いや、もしかしたら前にも言ったのかもしれないけど、
自分ですらあいまいな記憶。それを千鶴が覚えているわけがなかった。

このままだと俺は、これから先、
同じように返ってくる言葉ばかりを想像して、ずっとその場に踏みとどまり続けることになる。

ただ、予定のない試合のために、準備だけして構えて、待っているだけ。

きっと、
そんなことをしているうちに、
あっという間に誰かにかっさらわれる。

ノーゲームで試合終了だ。


不戦敗


それだけは絶対嫌だった。


だから、俺は言った。
今度はきちんと記憶に残して。

今はまだ届かないことわかってるけど、

一応、言った。


「すきだよ」


返ってきた反応は予想通り

「ちょ・・・だっ・・・ビックリするわ!今さら!!知ってるっての!!」

だった。

でも、それでもいい。

とりあえず、言いたかった。

これで俺はようやくフィールドに立つことができた気がする。




プレイボール





まあ、誰がきたところで負ける気はねーけど。


【END】

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と、いうわけで、龍の心のつぶやきでした。

ピンの言葉はたぶん、風早よりも龍のほうにぐっときたんじゃないかなって思って。

あのセリフにつながったのは、こういう経緯だったからかな?
と勝手に想像しました。

龍の想いは、
果たしていつちづに届くんでしょうね~~?

龍ってあまり話さないので、
なかなか心の声を想像するのは難しかったんですけど、
でも、楽しかったです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。