- 【書評】
- 久しぶりの番組メモ以外でのブログ更新であり、書評です。
先日、発売されたサイバーエージェント藤田社長の著書についてです。
「起業家」
- 起業家/幻冬舎
- ¥1,575
- Amazon.co.jp
自分が、過去に働いたことのある会社の社長が書いた本なので、単にベンチャー企業の社長が書いた本というよりも、自分が働いていた当時と内容の時期が重なり、当時の自身の思い出と重ねながら、じっくり、噛みしめるように時間をかけて読みました。
また、今、自分は、事業会社側(広告主側)におり、SNSメディア戦略に関わっている中で、参考になる部分、再確認できた部分もあり、タイミング的にもちょうどよかったです。
内容は、サイバーエージェントの2000年上場後から直近の同社の動向の裏側で、代表の葛藤も含め、どのように考え、意思決定してきたか。
その他、同時期起業時期が重なるライバルであり、戦友であり、ビジネスパートナーでもある、元ライブドア代表の堀江氏とライブドアの動向(球団買収話からライブドア事件まで)を横目に見ながら当時の藤田氏の葛藤など。
全体的にはアメーバブログ事業の立ち上げから黒字化までの話が中心でした。
メディア事業への想いがありながらも、広告代理事業を強化せざる負えなかったところの説明から始まり、アメーバの立ち上げ、赤字続きの苦悩、そこから黒字に持っていくまでの代表の決意と行動、結果が読みどころだと思います。
ネット業界人だけでなく、今や事業会社もオウンドメディアに注力していく時代に入ったので、事業会社側のマーケティング担当者が読んでも、普通に起業家のビジネス書だけでなく、ひとつのケーススタディとして参考になるのではないかと思います。
文中の気になる部分を以下抜粋、
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当時売上を構成していた広告代理店事業だけでは、どう頑張っても営業利益率5%までしか見込めませんでした。広告代理事業だけでは達成不可能な営業利益率10%にした理由は、3年後までに必ず利益率の高い「メディア事業」を成功させるという想いがあったからです。
社会の公器といわれる上場企業で、誰からも期待されていないものに時間をかけて投資していくこと、それがどれほど苦難の道であるかということを、自分が身を以て体験することになりました。
最大の障害がありました。サイバーエージェントのカルチャーです。
我々の会社は広告代理事業が長く主流であったため、メディア企業のカルチャーが、ものすごく違っていることを、誰も理解できていなかったのです。
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上場直後から、メディア企業を目指していたにも関わらず、外部圧力からすぐに成果を上げやすい広告代理事業を強化してしまった点。社会的には、営業の強いネット広告会社というイメージ、社内カルチャー。そこから、メディア事業を主力に持っていくまでの経営戦略、組織戦略の実行は、企業規模が大きくなればなるほど、並大抵ではないということ。
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サイバーエージェントの業態は、優秀な人材を多く抱えることが、そのまま競争優勢性になります。
だから我々にとって採用は死活問題です。
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これも、一般的に知られているように、ネット関連企業にありながら、うまいブランド戦略で新卒を中心に人材採用に成功しているケースといえるでしょう。
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私が推し進めようとした芸能人ブログの強化案には、社内は大反対でした。
「ブログは一般人のためのものです!」「そんなブログ、私は見たくありません」会議に参加した担当者から、そんな必死の抵抗にあいました。
女性社員がプライベートのブログはアメーバではなく、他社のブログを使っていたことが判明しました。「だって××のほうが可愛いし・・・」
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これは、ネット業界人独特の志向。マニアックな仕様に慣れ、またはそれを求め、それが常識であり、マスのマーケティングの視点が欠けてしまうという現象。
ネットサービスは、いわゆるマーケティング用語でいうイノベーター(2.5%)から普及し、アーリーアダプタ(13.5%)、アーリーマジョリティ(34%)、レイトマジョリティ(34%)、ラガード(16%)へと続きますが、ネット業界人は、ネットサービスにおいては、イノベーターやアーリーアダプタの段階でサービスを利用するので、アーリーマジョリティやレイトマジョリティのマーケティングの視点がどうしても欠けてしまうのだと思います。少なくとも当時のネット業界全体の雰囲気が、サービス開発者であったとしてもそういう空気だったのだと思います。
当時はSNSといえば、mixiが主力で、一般の人でブログを書いている人もまだまだ少なかった時代。まだまだ一般的にネットリテラシは低く、たとえサービス内容がよかったとしても、デザインや仕様、プロモーションが日本市場向けにマス受けしなければなかなか受け入れられづらかったと思います。そういった意味では、今では、スマホが普及し、フェイスブックやツイッター、LINEなどSNSも複数使いこなし、ユーザーのリテラシも当時に比べ、かなり高まったので、デザインやプロモーションがいまいちでも、利便性が高ければ、普及する時代になったと思います。その代表が、LINEであり、日本市場のマーケティングから生まれたものでも世界に勝負できるようになったのだと思います。ようするに、デバイスであるスマホの普及も後押しし、日本のユーザーのネットリテラシが世界の水準に近づいたため日本発でも世界に通用するサービスが生まれたのだと思います。
アメーバブログの成功は、日本のマス市場に合わせたマーケティングの成功によるところが大きいと思いますし、ネット企業にあって、サイバーエージェントの独自のカルチャー(世間一般的なイメージはリア充率が高く、リアルのマスマーケティングが他のネット関連企業に比べうまいと思います。)によるところ、時期的にもよかったと思います。また、そのタイミングであったから、注力したというのもあるでしょう。
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「売り上げは一切見ていません」
「30億ページビュー超えたら勝手に売り上げは伸び始めるでしょう」
アメーバが勢いよく伸び始めた最初の理由は、芸能人ブログでした。
私は先頭に立って芸能プロダクションとの関係作りを強化していったのです。
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短期的な売り上げを見ていない。一定のページビューに到達してから、収益化を考えれば良いという考えは、会社の代表だからこそ、押し通せる意思決定であり、一貫性はさすがだと思います。
今、自分が事業会社でSNSメディア戦略に関わっていますが、経営環境、主力のビジネスモデルの違いはあれど、考え方は参考になります。
芸能人に目を付けたのは、代表の志向によるところが大きいでしょう。
同社がアメーバブログ事業赤字脱却に向けて苦労していた当時、私は別の事業部にいましたので、あくまで本の内容から判断するところと推測です。
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アメーバ成功の転換点 幻冬舎の見城社長から聞いた言葉で気付かされました。「全ての想像はたった一人の「熱狂」から始まる。「新しいことを生み出すのは、一人の孤独な「熱狂」である。
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革新的な「イノベーション」は一人の熱狂から始まる。
しかし、ひとりだけでは実現できない。その「熱狂」にいかに周りを巻き込んでいくか。
熱量が多ければ、巻き込み力も上がり、スピードにレバレッジがかかる。
そうすれば、先行者利益も得られ、成功確率もあがる。
ただ、熱量だけではだめ。
主力の実行者は、適切なマーケティング知識と経営知識を備えていること、判断力と周りを納得させられる説得力とコミュニーケション力も問われ、事業カテゴリにおいて関連知識も深堀され、知識に裏打ちされたアイデアに独自の尖った強みがあること、で、他社には真似できない競争優位を作ること。
ちなみになぜ私が同社に魅力を感じたのかというと、
経営者が、「ネットオタク」ではなく「企業化、起業家オタクであり、マスマーケティングに興味があること」が大きかったと思います。
それは、同社のビジネスモデルや組織戦略、企業カルチャー、ブランド戦略に表れていると思います。
3年ちょっとの期間ではありましたが、
自身としては、最初からのちに事業会社に行くことを想定していた選択であり、今でもその意思決定は間違っていなかったと思っています。
今は、事業会社側にいますが、その経験や知識が生かせていると思いますし、自身のひとつの強みとし、今後も、生かせると思います。
今までは、あえて、過去に自分が在籍していた会社については、会社名を特定できる形でブログやその他SNSで触れてきませんでした。
しかし、今や、ネットの進歩はかぎりなく進んでおり、自分の履歴書をオープンにするような時代。もしくは、それと同義のことが望む望まなる形で進んでいくであろうということを想定しての今回の投稿内容です。
個人のソーシャル化はこれからますます加速していくことでしょう。
それを追い風にできるか、逆風にしてしまうかは自分次第だと思います。
僕は、追い風にしたい。ただ、それだけです。
当時、上記会社を選んだ理由も、自身がこうやってブログを始めることを想定していたし、自身のセルフブランディングを考えていたという部分もあります。
戦略的に自身のキャリアを作ること、考えることに関しては、
おそらく人並み以上に時間を使ってきたと思います。
ブログのタイトルにはそれなりの思い入れがあり、ひとつの決意の表れだと思います。
正直、高校卒業後から世間にたいしての葛藤をずっと抱えていました。
今は、上京してきた当時の考え方と数年前、現在では、考え方も変わってきており、
どちらかというと、一人称から三人称にも意識がいくようになってきました。
とはいえ、これまで反骨心をバネに成長してこれましたし、そういった意味では、自身も、これからも「起業家」の気持ちを持ち続けたいと思います。