原点

ブラックジャックの「ある老婆の思い出」を読んでいた。

ひとりのアメリカ合衆国大統領。彼がお母さんのおなかにいるとき。お母さんは街角で、子宮破裂を起こした。そして、病院に運ばれ、ブラックジャックの手術を受け、彼は無事生まれた。そして、お母さんも無事であった。無事に生まれた彼は、やがて、法律学校に進み、政治家となり、そして、アメリカ合衆国大統領となった。

つまり、彼がアメリカ合衆国大統領になれたのは、ブラックジャックのおかげ。

ちょっとまってください。ブラックジャックが手術する前、街角で子宮破裂をしたお母さんを最初にみつけたのは、病院の看護師でした。看護師は、お母さんを見つけ、介抱しながら通りがかった車をとめました。とめた車は、ブラックジャックが運転していたのです。そして、ブラックジャックと看護師は、お母さんを病院に運んだのです。

つまり、彼がアメリカ合衆国大統領になれたのは、たまたま通りがかった病院の看護師のおかげ。

ちょっとまってください。病院の看護師は、その日の手術で受け持ち患者を亡くし、控え室でしばらく泣いていました。手術をした医師が、笑いながらゴルフに行く様に文句をいい、その後同僚と一緒に食事をしました。そして、帰宅途中に子宮破裂したお母さんを見つけたのです。受け持ち患者が亡くならなければ、看護師は、お母さんと出会うことはなかったのです。

つまり、彼がアメリカ合衆国大統領になれたのは、なくなった患者さんのおかげ。

と、こんなふうに、ある現象が、次の現象とつながり、また次の現象になってつながっていく。そして、ついに大きな変化を引き起こしていく。

これを「バタフライ効果」と呼ぶそうだ。

ブラックジャックは、物語の中で語っている。「私たち(医療者)は、星を動かすようなもんだ。星なんて宇宙の中で決められたところで光ってんだろう。人の一生だってそうさ・・・。ちゃんと運命にしたがって、生まれて死んでいくんだ・・・。もし、人のいのちを救って、その人の人生をかえたなら、もしかしたら、歴史だってかわるかもしれないだろう?」

これが「自分の原点」。