編曲について

2009年06月20日(土) 07時27分06秒 テーマ:音楽話
 前のコメントでTEJさんが質問されていました編曲の件、
良い機会なんで、書いておきたいと思います。

まず、大きく分けて我々の仕事には、劇伴(BGM)と歌曲の
作曲の2種類があります。

前者は作曲と編曲が同時に行われますので、当然、
作曲家と編曲家は同じ人になります。

編曲家が重要なのは、後者です。

歌曲の場合、メロを書く人とサウンドを作る人が違う場合が
多いのです。

なぜなら、音楽家の持って生まれた特性として、メロとサウンド
両方ともずば抜けた才能の人はなかなかおらずに、必然的に
こう言った分業制が出来たのだと思います。

この、『メロの人とサウンドの人の間に流れる深い川』の話しは
カットされてしまったNHK熱中夜話第2夜で、少し語っていますが、
また、機会を設けて書いてみようと思っています。

ともあれ、歌については2業種がお互いを必要とした時代が
あったのです。

これも、現在では作曲をする時に作曲家が、デモテープの段階で
サウンドまで作り込む事が多くなり、作曲と編曲が違う人の場合
でも、最初の作曲家が考えたサウンドに少し手を加えたくらいの
上がりになる事が多くなりました。

このために現在のポップスは、斬新なサウンドのスペシャリストが
少なくなって、同じような編曲の嵐になっています。

これは、今の曲がサウンド重視になり、太く美しいメロが
なくなって来たのにも原因があります。

残念ではありますが。

だから、メロとサウンドの作り手は、ある程度分業の方が、
良いのではないか、と思います。

これの良い所は、才能がぶつかり合う所です。

そして、2回の熟慮のチャンスのある所です。

二つの違う才能が化学変化を起こし爆発した時には、最初
作曲家が一人で考えたものより、想像出来ないほどの
素晴しい曲が出来たりします。
(御旗なんかはこれですね)

つまり、作編曲同じは、良く言えば”トータルに計画された”、
悪くは”予定調和過ぎ”

別なら、良くは”化学変化”
悪くは”チグハグな方向性”

と、言えます。

私が自分作曲した曲を編曲に出すのは、同じ事務所の編曲家の
ため、などでは断じてありません。

根岸、岸村を始めとするサウンドのスペシャリストが、私の曲を
どのように料理し、どのような答えを出し、そしてそれが
時として”化学変化”を起こすのが楽しいからです。

とは言え、自分しか出来ないサウンドのものもあります。
これは、自分で編曲するようにしています。
(代表的なのは”ドリーム夢の1ポンド”かな?
 あんなもの誰も編曲出来ん!)

私は編曲家ではありませんので、他人の曲を編曲するのは
上手いけど苦手です。
なぜなら、その曲が私の個性が強すぎるので、全部”私色”に
染まってしまうからです。
(メタルダーなんか、もろにそうですよね)

なので、私の個性がどうしても必要な時に限り、お引き受け
しています。
(ケロロの”翔べ!ガンダム”の編曲など)

今後も、このスタンスを取りますので、他の人の作品の
編曲だけの仕事は、あまり多くないと思います。

ただ、数少ない編曲だけの仕事にも愛着のある曲が
多いのも確かです。
(”摩訶不思議アドベンチャー”とか)

またいつか、
ココロを揺るがすようなメロに出会いたいですね。

そんな曲を編曲出来たら幸せなのですが。

コメント

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1 ■なるほど・・・

公平先生、こんにちわ!

まさか、こんなに直ぐ答えて頂けるなんて。
ありがとうございました!

読んでいて思いました。
時代が変わろうとも、「常に音楽を楽しむ」という基本的な事を、先生はずっと忘れてないなぁ・・・と(^^。
だから、必然的に田中公平作品には多くのフォロワーがいるんだなぁ・・・と。

アニメは元々好きだったんですが、アニメソングに本格的に目覚めたのは、90年代に入ってからです。
その中で、挙げられてる『超人機メタルダー』や、初代『ドラゴンボール』。
これらの作品で使用されてた主題歌は当時から特に心に残ってたんですが、先生が関わってる事実を知ったのはつい数年前だったりするんです。

不思議なモノで、他にもそういったパターンがあります。
「えぇぇ!そうだったのか!?」という気持ちと「やっぱりそうだったか!」という二つの気持ち。

それだけ、公平先生の生み出す作品に、自分の中に流れる音楽的センス(?)や嗜好が大きく、それも無意識の内に、既に当時から深く深く刻み込まれてたんだと思いますね(^^。

公平先生を意識するようになって以降、『空想科学世界ガリバーボーイ(ゲーム版)』という、とんでもない作品に遭遇出来た事は、僕にとってかけがえのない「事件」でした。

それらのキッカケをくれたのも、やはり『サクラ大戦』でした。

『ドリーム/夢の1ポンド』等は、サクラ歌謡の中でも作・編曲をされてる数少ない貴重な曲ですが、根岸先生・岸村先生・松尾先生・多田先生などに託してらっしゃる理由が今回ハッキリと分かり、ずっとモヤモヤしてた感情がスッキリと無くなったように思います(^^。

僕が、近年で一番驚いてしまったのは、「まじめにふまじめ かいけつゾロリ」のED『あっちゃこっちゃゴー!』のブラスアレンジです。
あれは本当に凄いアレンジだなぁと思いました。
仮に、公平先生が編曲していた場合は「どんな感じになったのかなぁ・・・」と想像しながら聴くと、より深いモノを感じれられます。

イマジン所属の先生方はホントに凄い方ばかりだなぁ・・・と思わざるを得ないTEJでした(笑)。

今回は質問に答えて下さって本当にありがとうございました(^^!

2 ■そういえば・・・

世の中があまりにメロ重視、作曲家重視なコトに対するアンチテーゼなのかどうか、ずいぶん前に大滝詠一さんが(恐らくはあえて)「本当に大事なのは、アレンジャーなんだよ」と話されていたことがあったように記憶しています。

実際は「どちらが上」ということは無いのでしょうけど、もすこし、アレンジャーに対する世の中(←「日本の」と一言付けたほうが適切でしょうか)の認識が高まるべき・・・なのでしょうかねぇ?


さて、(公平先生の仕事を“あえて”除いた/笑)アニソンの編曲で個人的に記憶に残るものは、「風の谷のナウシカ」のアレンジャー/萩田光雄さんの仕事でしょうか。
特にストリングスアレンジは絶妙の素晴らしさで。

3 ■アッセンブルインサートの編曲好きです。

 こんにちは。先生の編曲ではアッセンブルインサートが好きです。OPアニメーションとあわせて、とてもテンポよく気持ちいい曲だと思います。今でも聞き返していますし、カラオケで歌いますよ。
 機会があったら、熱中昼話で紹介していただいた編曲のABCの話も希望します。あの話を聞いてからアニソンの聞き方がずいぶん変わりました。

4 ■編曲って深い

こんばんわ
田中先生のお話は毎回目から鱗で
大変勉強になっています
最近のポップスが全て同じに聞こえるのは
そのようなカラクリがあったからなんですね・・・
自分の曲に科学変化を求める
田中先生こそ真の作曲家!パチパチパチ
これからも聞き手の度肝を抜く楽曲を
期待しております(ハードル高いですか?)

あと今日発売の音楽雑誌ミュージックマガジンで
菅野よう子さんの特集を組んでますよ
田中先生だけでなく興味のある方は是非

5 ■無題

けこれまたコメントしたいことがいっぱいあるテーマです(^_^;)

作曲者と編曲者では、これまで編曲者が一段低く扱れてきたと思います。著作権的には作曲も編曲も同じに近い扱いを受けているようですが、作曲家別の楽曲リストなどはありますが、編曲者別の楽曲リストはまず見かけませんし、音楽史的にもオーケストレーションの名人としてラヴェルやグロフェ、リムスキ=コルサコフらの名前が挙がるくらいで、編曲オンリーで音楽史に名前を残している人はやはり作曲家の扱いに及ばないですね。

しかし、これもそろそろ変化があってもいい頃かもしれませんが、ひとつ田中先生も触れていますが、作曲者よりも強い個性を持った編曲者というのがどうなのか、という問題にぶつかりそうな気がします。大編曲家A氏の作品は共通のアイデンティティに満ちている、ということになった場合、元作品の個性がどこかにふっとぶ、ということですから、作曲家としては嫌だろうな、と。

話が変わりますが、「夢の1ポンド」は独創性という点でサクラの作品の中で随一だと思っています。曲ののっけから音色と楽想が一体となった出来栄えはベルリオーズの「幻想」のアタマを想起させるものだと思います(どちらも個性のある管楽器の音色で始まることも偶然ではない気がします)。そのベルリオーズは、ピアノスケッチを経ずにオケスコアを書くのが常だったとか。作曲と編曲が一体となった「ずば抜けた能力の作曲家」なわけですが、「夢の1ポンド」を書いた田中先生もまさにその意味では「ずば抜けた作曲家」なのだろうな、と。

編曲によって「プラスの化学反応」が起きる楽しみがある一方で、「編曲を許さない元作品の完成度の高さ」というのも存在すると思います。
たとえば、ショパンのピアノ曲などは、別人が後にオケ編曲した「レ・シルフィード」という曲がありますが、ほとんど効果がなく、やはり元のピアノで演奏するほうがはるかに良いと思います。
化学反応の楽しみを捨てるということではありませんが、かように「編曲を許さない完成度」を持った作品も、ぜひ作っていただきたい、というのはやはり外野からの身勝手で大変なお願いでしょうかσ(^_^;)

長くなってすいません。

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