2016年02月05日

シルバー民主主義

テーマ:社会

とある予防医学賞の授賞式で、小児科の先生が受賞者となり、それに対して祝辞を述べられた小児科学会会長のことばが大変印象的だった。


「小児科分野の研究者への授賞ありがとうございました。(中略) ところで皆さん、20歳未満の若年者への政府支出を1とすると、65歳以上への支出がどれくらいか御存知ですか?18ですよ。難破船の救助時の国際ルールを御存知ですか?まず小児、次に女性・けが人、壮年、最後が老年者です。これ以上は言いませんが・・・。」


想起されるのが、最近話題となっている画期的な抗がん剤。新規作用機序で、いろいろな癌腫の長期生存を達成する可能性がある薬剤だが、肺がんに使うと体重60kgの人で年間約2100万円!かかる。高額医療費制度を使うとわりと敷居が低い。現在、海外で開発された経口のC型肝炎治療薬が高額すぎると話題になっているが、さらにそんなものが登場。


このような高額な抗がん剤をがんがん使うと、この比率がさらに開大していきそうだ・・・。この薬価、厚生労働省は、何を考えているのだろうか・・・。海外にどんどん輸出し、国内での薬価は早く引き下げてほしい。

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2015年05月25日

子どもの貧困の原因と対策

テーマ:社会

2011年のデータでは、貧困(相対的貧困)世帯のこどもが6人に1人(約16%、実数で232万人)だという。


相対的貧困世帯というのは、「社会の標準的な所得の半分以下の所得しかない世帯」のことで、額でいうと、「2人世帯であれば177万円、3人世帯で217万円、4人世帯で250万円を下回る世帯」だという。


最初に聞いたときは「いったいどこの国の話だ」と思ったが、日本の話だ。

最大の要因はシングルマザー家庭の増加だという。


そう考えると、性の乱れが社会問題化しているという言い方もできるのではないだろうか。

婚前交渉ということば自体が時代遅れと言われるかもしれないが、もっと男女の性的な関係を大事に考え、軽々に行わないようにし、結婚をもっと神聖なものと考えて尊重することが、結果としてシングルマザーを減らすのではないだろうか。


法律的な観点からは、生物学的な父親に経済的な責任を取らせる仕組みを作るとか、医学的な観点からは、避妊教育を強化しそれを性感染症を減らすことにもつなげるなどが必要か。


このような考え方は保守的と言われてしまうのだろうか。でも、保守的にふるまうことが身を守るのではないか、特に女性は。若さは一過性であり、性の歓びも一過性だが、夫婦関係や家族関係は一生継続する強固な関係だ。性欲を否定するわけではないが、若者は簡単に一線を超えず、愛とはなんだろうかと、もっと真剣に悩み考えるべきではないか。


また、離婚してシングルマザー家庭になる場合、かなりの割合で離婚原因が夫のDVだという。DVをする男を減らすことも、根本的な対策として必要だ。男女の違いをきちんと認識することと、男女平等というのは違うことだ。日本ではあまりレディーファーストという概念が日常生活で意識されていないと思うが、これは結構悪いことなのかもしれない。義務教育から、男子が女子を気遣うことを推奨し、「非力な女性に暴力をふるうのは卑怯であり、悪だ」という感性を養うように、日本男子の教育の見直しが必要ではないか。


また、現存するDV家庭の夫を改善し離婚を防ぐことはできないだろうか。家庭がひとつの密室になっていることが、不適切な行為が行われる原因だろう。家庭の孤立を防ぎ、地域社会の活動で人の出入りを生じさせることが、DVを減らすことになるのではないか。なにかできるのではないか。個人的にできる努力としては、DVに悩む女性が社交を減らすのではなく、むしろ頑張って近所づきあいを増やしお客さんにきてもらう、あるいは夫に友人などを連れてこさせる、などだろうか。少々交際費が増えても、DVに悩み追い詰められ離婚して困窮するよりはまし、かな。そんなにうまくいかないか?DV家庭が改善し幸せな家庭になれば、こどもにとってこれに勝るものはない。


いずれにせよ、こどもの6人に一人が貧困だなんて、気がめいる惨状だ。なんということだろうか。国防を固めるより先に内部崩壊せぬよう、注意が必要ではないか。

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2015年01月21日

オバマケアの失敗

テーマ:社会

外来で患者さんに本を勧められて読んでみた。

『沈みゆく大国 アメリカ』 集英社新書 堤 未香 著 2014年11月 第一刷発行


本書によると、米国国民に国民皆保険制度を与えようとするオバマ大統領の試み;オバマケアは、完全な失敗に終わったようだ。わが国の国民皆保険制度のありがたみを実感するとともに、日本の官僚制度にも良いところがあるのではと思わされた。米国では、政府機関職員と実業界の交流が盛んといえば聞こえは良いが、一方で自分たちの商売に都合が良い政治のルール作りをしている人たち(回転ドアをくぐる人たち)がおり、米国の制度を改悪することもあるようだ。


我が国の、実業経験のない頭でっかちの官僚にも、存在価値は十分あるのかな。回転ドア制度は、政権交代により政策スタッフが入れ替わるから良い制度だという見方は、甘すぎるようだ。業界は、2大政党のどちらにも大量の資金と共にロビイストを送り込むからだ。


オバマ大統領、残念ながら、米国の医療事情を改善するのには、力不足だったようだ。もっともオバマ大統領一人の責任に帰するのは正しくないのだろう、改善しようとした事は確かなのだから。米国の医師たちには、医療をビジネスとして人倫を踏みにじる保険業界に全力で反撃してほしい。ふりかえってわが国も、国民皆保険制度を維持するために、無駄な医療費を削減する自浄作用が必要なのだろう。

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2013年07月24日

米ハフィントン・ポストの衝撃

テーマ:社会

『米ハフィントン・ポストの衝撃』

牧野洋 著

アスキー新書


ハフィントン・ポストは1995年に創刊された米国のNo1ネット新聞だ。

一応日本版もある。

最近あることを契機にハフィントン・ポストに興味を持ち、この本を見つけたので読んでみた。

一言でまとめると、インターネット新時代を解説してくれる本としては梅田望夫『ウェブ進化論』以来の良書だった。紙媒体の新聞メディアの将来像を理解させてくれる。


本を読み終わってから著者に興味を持ち巻末の著者紹介を読んでみた。1960年生まれ、慶応卒。日経のニューヨーク駐在や編集委員を経て2007年に独立したジャーナリスト。秀逸だ。

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2012年03月27日

西日本は脱原発を

テーマ:社会

最近のニュースを見ると、脱原発を提唱する人が増えているようだ。

文化人だと、坂本龍一さん、大江健三郎さんなど。


今回の福島原発のダメージの大きさを考えると、一般常識的な考え方からすると当然かなと思う。

東京では、東日本の野菜などを気にせずに購入する人ももちろんいらっしゃるだろうが、一切買わないという考え方の人も多くいる。例えば、食材の宅配サービスでは「西日本野菜セット」を発売している大手業者もいるぐらいだ。

身の回りに、西日本に転居する人もいないではない。医学の学会でも、招待された海外の研究者が東日本への来日を拒否するため、会場が西日本に変更されたりしているのも事実だ。


もし西日本で福島と同様な原発事故が発生したら、日本にとって致命的な事態になるのは間違いない。国家としてのリスク管理をするのであれば、西日本は脱原発、という選択肢もありではないか。海洋汚染のリスクからは、山脈を隔てた日本海側は脱原発とすべきかもしれない。東北~関東が程度の差はあれど、すでに放射能汚染されているのは否定できない事実だ。想定外のリスクを想定するというのは論理矛盾であり、原発が存在するならば事故はありうる、としか言えない。経済的に激変緩和措置が必要なら、安全管理を厳格化するとともに西日本の脱原発のリミットを明確にしてほしい。国家の存亡をかけたリスク管理と言えるのだから。


追記; 福島の特に居住エリアでは除染を徹底してやるべきなのはもちろんだが、除染が不可能な汚染地帯は農業を断念し、原発もむしろ増設し工業立県にした方が良いのではないか。このような大事故の後は、思い切って政治的に動かないと放射能被害がかえって拡大するように思う。当事者が感情的になるのは当然でありしかるべき配慮を受ける権利があるが、日本全体の利益を考える為政者は感情的に行動してはならないだろう。農業は西日本でやってほしい。輸送コストが多少かかっても購入する人はたくさんいる。


追記2; 海洋汚染を調査し、特定海域の海産物の注意点について国内のみならず国際社会に発表していくことも、日本の責務だろう。事故後の継続的な対応にこそ日本の真価が問われているのではないか。

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2011年11月24日

生活保護の医療扶助の自己負担導入について

テーマ:社会

生活保護の医療扶助の自己負担導入を政府が検討するというニュースがあった。


妥当かもしれない。


というのは、最新の治療というのは保険適応になっていてもそれなりに高い。なので、費用面で最新治療導入に二の足を踏むケースも当然ありうる。それが、生活保護になると全額扶助されるので、かえって導入しやすいなどの矛盾がある。


例えば、ジェネリック医薬品、治療上重要なホルモン製剤(インスリン、甲状腺ホルモンなど;インスリンはジェネリックを見たことが無い)に関しては全額扶助というのならば、分かりやすいかもしれない。もちろん制度設計は難しいだろう、例えば高額な抗がん薬や生物学的製剤は・・・。静注用抗生剤は・・・。厳密に考えるならば、日本の財政状況と、治療によって得られるQALY(Quality Adjusted Life Years)に基づく費用対効果などの概念も取り入れて検討しなければならないだろう。


例えば、先進国で健康寿命を1年延ばすのに許容される国費は400~500万円程度が上限と考えられている。そういった上限額も引き下げられる方向に行く可能性がある。例えば、透析も自己負担が生じる可能性があるのか・・・。世界の透析患者の約4割が米国と日本で占められているという状況も変わっていくのか・・・。


税金の使い道を考え、なるべくあるべき姿を目指すというのは必要だろう。・・・それにしても、日本は余裕がなくなってきたんだなあ。


12/11追記 生活保護費の半分が医療費だという。大病を患い療養している間に職を失う(クビになる)人の割合が多いのだろうか。

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2011年08月14日

官僚の責任

テーマ:社会

『官僚の責任』

古賀茂明 著

PHP新書


古賀茂明さんは通産省の官僚。

天下りをはじめとする官僚の利権システム(国のために働かない人がお金をもらえるシステム)を否定する改革派官僚だ。

本書を読むと、中央官庁のあまりの腐敗ぶりに愕然とする。

通産省と東電の癒着のすさまじさには圧倒される。

山崎豊子の「沈まぬ太陽」や、その映画を思い出す。

腐敗の広がりが深刻だ。


今、国家は大きな岐路に立っているようだ。

総理が交代しようとしているが、民主党にどこまで改革を期待できるか。

一つのリトマス試験紙が、古賀茂明氏の処遇だと言えよう。

根本的な大改革を実現しなければ、日本の将来は暗い。


9/16追記


今日の読売新聞のニュースで古賀さん退職が報じられていた。

枝野さんは改革の意思を明確にしており、期待していただけに残念。

古賀さんは、これから日本のために活躍して頂ける方であるのは衆目の一致するところだろう。戦闘力を自ら放棄するとは、与党の度量不足だ。


9/26追記


今日の読売新聞のニュースを見て感動した。

古賀さんは特定の政党に所属して選挙に出馬したりせず、党派を超えて改革派議員を政策面で支援したいという。

日本のために仕事をするという、まさに官僚の鏡だ。良識ある議員を結ぶ環としてもがんばってほしい。

通商産業政策が専門なのだろうが、それ以上に、中央省庁の現場を知りかつ官僚組織再編のアイデアを持つ重要人物だ。古賀さんはこれまでと同様、ひたすら国からの要請を待っていらっしゃるのだろう。官僚にはこういう方もいる。

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2011年08月12日

福島第一原発の放出している放射能量

テーマ:社会

7月27日に衆院厚労委員会で、児玉龍彦教授(東大先端研教授、東大アイソトープ総合センター長)が行った意見陳述が、インターネットを介して広まっているようだ。動画がyou tubeで紹介され、書き起こし文までwiki経由で見られる。雑誌AERAでも紹介されていた。児玉先生は日本医学界を代表する科学者だが、東大消化器グループ(旧第三内科)に所属する臨床医でもある。


広島や長崎は原爆が落ちてから50年は草木も生えないだろうと言われていたが、そうでもなかっただろう、福島の原発も大丈夫だという楽観的な意見が無いではなかった。


しかし、児玉教授の試算では、今回原発から放出された放射性物質は、ウラン換算で広島型原爆の20個分であり、しかも原爆から放出された放射性物質は1年で1000分の1になるが原発からのものは10分の1にしかならないという。


風評被害を避けるのは大事なことだが、現状がどれくらいの状況になっているのかを正確に知り、対策を立てて実行する必要がある。現在の政府の対応は全く不十分なようだ。国民の被曝は確実に進行しており、しかもその程度と危険度が分からないままだ。児玉教授は具体的な提案をしている。政府/国会議員が迅速に科学者の意見を理解し対応することを望む。政治ごっこをしている場合ではない。


**************


報道日 場所 物 核種 量


5/12 茨城県(行方市) パセリ: 放射性セシウム 1110Bq/kg


5/13 神奈川(足柄) 生茶:  〃 530~780Bq/kg


7/25 福島(広野町) 小麦:  〃 630Bq/kg


7/25 福島(田村市) ナタネ: 〃 720Bq/kg


8/19 宮城 イノシシ肉:    〃 2200Bq/kg


8/20 栃木 腐葉土:      〃 2800Bq/kg →全国(沖縄まで)に出荷


8/26 千葉(白井) 玄米:   〃 47Bq/kg


9/3  埼玉 茶葉:         〃 1500Bq/kg

9/3  千葉 茶葉:         〃 2700Bq/kg


9/3  福島(棚倉) チチタケ: 〃 28000Bq/kg


9/6 福島(南相馬) クリ:    〃 2040Bq/kg


9/7 栃木(日光) 野生シカ:  〃 2037Bq/kg


10/12 横浜市港北区 マンション屋上の溝の堆積物 〃 105600Bq/kg


9月7日追記

広島型原爆20個分(ウラン換算)の放射性物質の除染方法・コストと、分離した放射性物質の廃棄場所の確保を検討・決定する必要がある。日本は何をどうしていくか、世界から注目され評価されている。ドイツ大使館(東京都港区)に着任拒否する人が多く機能不全になっているというニュースも、外国が日本の安全管理を信用していない証左だ。日本の報道が3.11後メルトダウンを否定する大本営発表を長らく垂れ流し続けたのは、海外メディアの笑い物になっている。国民はごまかせても、不適切な対応を続ければ日本の評価を下げ、結局は国益を決定的に損なう。


10月31日追記

朝日新聞の報道によると、ノルウェーなどの欧米研究チームは福島原発が放出した放射性セシウムを3万5800兆ベクレル、その大半は海に落ちたが、19%の6800兆ベクレルが日本列島に降下したと推計している。降下した面積は国土の約3%、11338km2。均等割りすると5997億ベクレル/km2=599700Bq/m2。表面10cmに集積し、土の重さを2g/cm3と仮定すると、3000Bq/kg。汚染土の総量は2.3兆kg、体積で11億5000万m3となる。もちろん実際には均等に降下していない。除染の費用対効果を検討して優先して除染する範囲を決め、手をつけられないぐらい汚染度が強いエリアに除染した土壌を集積するしかないだろう。汚染度が比較的低くても、上流の森林からの放射性セシウムが継続的に流入し続けることが予想される地域の農作物作付け制限も必要だろう。ごまかさず真実を公表し、さっさと決めてやるべきだ。そのためには事態の正確な理解と、強い信念と政治的指導力が必要だ。人命第一として迅速に進めなければ、政治家というより人として最低だ。


11月25日追記

阿武隈川から海に流れ出る放射性セシウムの量が1日あたり約500億ベクレルにのぼることが判明したという。阿武隈川流域の農作物作付け制限をただちに検討すべきだ。調査は文科省、決断は農水省、だから時間がかかるなどと言わないでほしい。

11月28日追記

阿武隈川流域は山地が79%、農地が18%で996.6km2。平成7年の時点で流域の第一次産業就業者数は73800人、出荷額は31928億円、これは福島県内の57%、宮城県内の14%のようだ。これだけ見ても大問題だ、その後農水省はちゃんと動いているのだろうか。

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2010年12月04日

Quality Indicator

テーマ:社会

メディカル朝日という雑誌に、聖路加国際病院院長の福井次矢先生のインタビューが載っていた。

医療の質を毎年測って公表することで、病院は診療の改善をしていかねばならないという話。

電子カルテデータを基に医療内容を数値化(Quality Indicator)して公表しているそうだ。

HbA1cも公表しており、7%以下の割合が当初46%だったが、09年には62.8%まで改善したという。


これを読んで、おや、と思ってしまった。

聖路加は新患は取らないのかな?


ある病院で治療を受けている患者の平均HbA1cは、その病院で診ている糖尿病患者の重症度を表しているだけではないかと思う。糖尿病の診療の質を測定するには、ΔHbA1cを公表する必要がある。つまり、断面調査のデータだけではダメだ、ということ。

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2010年01月10日

益川敏英先生

テーマ:社会

ノーベル物理学賞の益川敏英先生のご講演を聞く機会がありました。


大変面白かった。



話題1: 科学と自由


ヘーゲル曰く、自由とは必然性の洞察であり、益川先生曰く、科学とは自由を提供するものだという。


自由とは必然性の洞察である、を益川流に解釈するとこういうことだそうだ;

レバーが2個あります。片方を引くと、100万円が出てきてそれをもらえます。もう片方を引くと青酸カリが出てきて死んでしまいます。なにも知らされず、どちらかのレバーを引いてもいいよ、と言われるのは自由ではない、レバーを引くとどうなるかを知ることによって真の自由が得られる、ということだそうだ。


そして科学は自由を提供する、換言するならば、選択肢を増やしてくれる。



話題2; 科学者の社会的責任


益川先生は、科学者の社会的責任ということばがお嫌いだそうだ。なぜなら、科学は自由を提供するものであり、その科学自体も完全に自由であるべきで、科学が提供する自由をどのように使用するかとその是非はまったくの別問題であるからだ。科学者の社会的責任というと、科学自体の自由を制限されるような印象があるのだろう。


例: フェライトの実用への応用


よくあるU字型の磁石の磁力は100ガウス程度だが、フェライトの磁力はその30倍あるという。1960-70年代に高層ビルが立ち並び始め、そのころテレビの電波障害が問題になりはじめた。テレビ塔から受診した電波と、高層ビルで跳ね返ってやってきた電波がわずかにずれ、ゴーストが映ってしまう現象だ。わが国のあたまの良い人が、高層ビルの表面にフェライトの微小粉末を混ぜた塗料を塗ると、電波が吸収されゴースト現象を防げることを見出した。ところが後年その技術がステルス戦闘機に応用された。そういうわけでステルス戦闘機には日本の技術が使われている。だからといって、ゴースト現象を防ぐ技術を考案した人に社会的責任を問うことはできない。


だが、益川先生は一市民としての社会的責任は科学者にも当然ある、とおっしゃっていた。似非科学やにせ科学を許さない態度が重要だとも。



話題3: 科学の社会的価値


先生が7つほどの事例を研究してみたところ、基礎研究が実用化されるのにはおおむね100年程度かかるそうだ。


例; Maxwellの電磁方程式


1860年代に、電磁力の法則をMaxwellが電磁方程式という形でまとめた。1940年代前半に、レーダーの実用化にMaxwell方程式が使われた。レーダーを発生させ、それを発射する場所まで導く導管の作製にMaxwell方程式が必要だった。約80年経過している。


最近の科学研究には金がかかるようになった。益川先生がこどものころ、テレビに使われている真空管は17本程度だった(こどものころ、テレビの裏側をはずして中を見て、数えてみたそうだ)。現在ではテレビの付加価値を高めるために、真空管にあたる部品が1000万個使われている。テレビの原理がわかっている電子工学の教授にでも、自宅のテレビを修理することは難しい。そういう時代になった。昔の理論物理の研究は紙と鉛筆でもできた。今は素粒子の研究を直径30kmの機械を使ってやる時代だ。そんな巨額の金を投じてやる基礎科学研究の成果が実用化されるには100年かかるので、何の役に立つかと問われれば、役に立ちません、というほかない。


事業仕分けが気になっていらっしゃるのでしょうか。



話題4: 科学的思考法の普遍性


科学的思考というのは、原理がしっかり分かっていれば、未知の対象にも応用がきくものだそうだ。


例; タバコモザイク病


1800年代、フランスで絹製品の生産拠点で、カイコのえさのくわの葉にタバコモザイク病が流行り、問題解決のためパスツールが呼び寄せられた。パスツールはカイコを知らなかったために、ファーブルにまずカイコを見せてくれ、と頼んだという。カイコが入った繭を手に取ったパスツールは、繭を耳元で振り、「あ、音がする」といったそうだ。繭にカイコが入っていることすら知らなかった。


今で言えばタバコモザイク病はウイルス病であるため、当時の顕微鏡でのぞいても見えるものではなかった。しかし細菌感染という概念を持っていたパスツールには、この病気を理解することができ、免疫学的な方法による対処法で問題を解決することができたそうだ(タバコモザイクウイルスの弱毒株によるワクチン接種のような方法?)。



蛇足; 国立京都国際会館から足を伸ばす


国立京都国際会館は良く学会に使われるが、せっかく京都に来たのでちょっと抜け出して散策したい、という場合にお勧めの場所は大原である。国際会館から山あいの道をバスで24分程度走ると大原バスターミナルへ、料金は300円ちょっと。ちなみにタクシーだと2500円程度。大原バスターミナルから徒歩0.6kmで三千院、1kmで寂光院へ行くことができる。


寂光院は聖徳太子が父親の菩提を弔うために建立した寺だが、平家滅亡のおりに平清盛の娘で安徳天皇の母である建礼門院が、平家一門とわが子を弔うために出家して住んだ寺として有名だ。ただ残念なことに、本堂は2000年に全焼してしまったため、現在は復元された建物が建っている。ひなびた感じの、田んぼや農家が最在する中に通る道を行くと低い山の中腹にあり、いかにも世をはかなんで隠棲するのにふさわしい場所だ。沿道にはみやげものやお茶屋さんがところどころにある。秋に行けば紅葉が美しいのだろう。

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