2011年10月07日

CLLの免疫療法

テーマ:血液

勤務先の抄読会メモ:


ノーベル賞を受賞後死亡していることが判明し話題となったラルフ・スタインマンの発見した樹状細胞や、あるいはTリンパ球を用いて、がんの免疫療法が取り組まれてきた。街中のクリニックでも自費診療で研究的治療として行われているが、免疫細胞を投与することによるがん治療の成果は今までは特筆すべきものがなかった。


しかし、今年8月に1例報告だが画期的な成果が発表された。


慢性リンパ球性白血病(CLL)患者に、CD19を認識して破壊するTリンパ球を投与するという治療法。

CD19はCLL細胞だけでなく正常Bリンパ球にも発現している。

患者からTリンパ球を採取し、レンチウイルスベクターを用いてCD19を認識する受容体を導入する。受容体の細胞内ドメインには4-1BB signaling domeinとTCR zeta signaling domeinがくっつけられている。これら2つのドメインはTリンパ球が増殖するための共刺激のsignal。この遺伝子改変Tリンパ球1.46×10^5/kgを患者に投与。

患者は従来の治療に反応しなくなった末期患者。


投与初期には何の反応も見られなかったが、day14に発熱・嘔気・食欲不振が出現、day22に腫瘍崩壊症候群が出現(UA 10.6mg/dl、P 4.7mg/dl、LHD 1130 U/L、sCre 2.60mg/dl)、day23には骨髄から腫瘍細胞が消失(FISH negative)、day31にはCT上リンパ節腫張が消失、day 300には完全寛解・ただし正常B細胞も欠失し低γグロブリン血症で定期的なIVIGが必要な状態となった。


血液内科専門医のコメント;

成功要因は3点考えられる。

①CLLを対象とし、ターゲット遺伝子をCD19としたこと。

 CLLからは4-1BB, TCR zeta以外のT細胞増殖因子が出ており、投与した遺伝子改変Tリンパ球の増殖を助けたはずだ。

②遺伝子改変Tリンパ球が正常Bリンパ球も抑制するため、マウス遺伝子から作ったCD19応答受容体への免疫反応が抑制された。

③造血幹細胞からはBリンパ球が新たに産生されつづけるため、導入Tリンパ球への増殖刺激は腫瘍減少後も継続した。

課題は、腫瘍崩壊症候群を抑制するために、導入Tリンパ球の増殖速度を制御すること。


ブログ筆者の質問;

導入Tリンパ球に、例えば特定の物質を投与すると死滅するような仕掛けを施しておき、CLL治癒後に導入Tリンパ球を除去すれば、正常Bリンパ球は立ちあがってくるのか?

答え;YES


文献; 

Chimeric Antigen Receptor-Modified T Cells in Chronic Lymphoid Leukemia.

David L Porter et al.

NEJM 365:725-733, 2011 


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2010年11月12日

トロンボポエチン

テーマ:血液

ITPの治療薬として、トロンボポエチン受容体作動薬がまもなく登場するようだ。

・経口薬 eltrombopag 非ペプチド製剤

・注射薬 romiplostim トロンボポエチンアナログ


副作用も少なく、大変良いとのこと。

romiplostimは、標準治療だと5万/mm3程度で推移しているITP患者の血小板数を、15万/mm3程度で維持できるようだ。

(NEJM 363:1889-1899, 2010)



ところで、どうでもいいかもしれないが、analogueとmimeticはどう使い分けるのだろうか。

NEJMではthrombopoietin mimeticと記載している。



検索によるヒット件数


        thrombopoietin analogue   thrombopoietin mimetic


Google    9万件               2万件

Pubmed   7件                 42件


        insulin analogue         insulin mimetic


Google    29万件               14万件

Pubmed   2400件               600件


        incretin analogue         incretin mimetic


Google    5万件                1万6千件

Pubmed   160件                106件


一般ではanalogue優位、専門誌では分子によってどっちが主流か違うんですね。

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2009年08月20日

鉄欠乏性貧血の治療

テーマ:血液

鉄欠乏性貧血の治療には、輸血、鉄剤の経静脈的投与、経口投与がある。


輸血は緊急性があるとき(ショック、あるいは内視鏡を安全に行うためなど)に行う。


鉄剤の投与量を計算するために必要な数字は(もちろんおおまか)


循環血液量 (標準)体重の7.5% 


Hb 1g中の鉄の量 3.4mg


経口投与された鉄の吸収率 10%


フェリチン1ng/ml が 貯蔵鉄8mgに相当

(フェリチンの目標値を60ng/mlとすれば、貯蔵鉄は60×8≒500mg)


MAP 1単位 140ml 全血の200ml由来


以上。



ここで症例問題

60kgの50歳男性、慢性的な上部消化管出血(2ヶ月来の黒色便)、Hb 4.5g/dlだがvitalは何とか保たれている。

この方は全治いかほどの傷病でしょうか。


*************************************


vitalは保たれているが、内視鏡を安全に行うために輸血する。


目標Hbを7g/dlとして、MAP 1単位中のHb量を26.5gとすると、


(7-4.5)g/dl×(60×0.75)dl =112.5g


112.5g ÷ 26.5 ≒ 4単位


もちろん、さらなる輸血の準備も万端として内視鏡へ。


安全に内視鏡が終わりました。胃潰瘍が確認されたが、止血の処置は不要だった。患者のHbは計算どおり7g/dlになった。


しばらくPPIを投与し胃潰瘍を治療せねばならない。そのため、鉄剤は最初は経静脈的投与とする。


目標Hbを9g/dlとして、


(9-7)g/dl×(60×0.75)dl×3.4mg/g=306mg


306÷40≒7


40mgの鉄剤を1週間経静脈的投与し、その間に食あげし退院とした。


外来で4週後FGS施行したところ胃潰瘍は軽快しており、鉄剤の経口投与は可能と考えられた。


Hbは計算どおり9g/dlだった。


目標Hbを15g/dl、フェリチンを60ng/ml(現在2ng/ml)つまり目標貯蔵鉄を500mgとし、


(15-9)g/dl×(60×0.75)dl×3.4mg/g + 500mg ≒ 1400mg


鉄の経口投与時の吸収効率を10%とすると、1400×10=140000mgが総必要量。


1日200mg2xで内服として、予想される内服必要期間は、


14000÷200=70日間



あとは、1ヶ月毎に採血でデータを確認しながらフォローアップ、といったところか。


*************************************


このように予想すると、本症例は診断時に全治3ヶ月、うち入院加療期間1~2週間、と推定できる。


これが胃がんだったら、まず治癒切除可能かどうかを診断することになる。


経験のある医師だったら、生活習慣や服薬歴などを問診し、これぐらいはさっと予想できる。


蛇足:経過中の外来で、飲酒・喫煙ばりばりのコントロール不良の糖尿病患者が喜んでも、HbA1cは偽性低値だと教える必要あり。胃潰瘍を契機に摂生するようになれば、不幸中の幸いであり、糖尿病担当医は大喜びだ。

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2009年04月26日

体位性偽性貧血

テーマ:血液

座位から仰臥位になると、間質液が血管内に移動するために血液が希釈され若干Hbが低下する。2g/dL以上変化する場合も14人に1人程度みられる可能性があるという(文献)。これを体位性偽性貧血 postural pseudoanemiaという。


外来では通常座位で採血するが、入院後は仰臥位でするため、入院しただけでHbが低下したように見えることがある。この場合、あわてて貧血精査の上・下部内視鏡検査などを計画する前に、座位で再検する必要がある。


文献: 『内科研修の素朴な疑問に答えます』 編集:小松康宏/谷口誠 メディカル・サイエンス・インターナショナル (32~35頁)


上記文献は、聖路加国際病院と三井記念病院の有志のコラボレーションで生まれた本です。教科書に書いてないような疑問点をリストアップし、分担執筆を各方面に依頼して誕生しました(2009年4月10日発行)。ブログ筆者も編集協力しています。おもしろい本でおすすめです(医師向け)。

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2009年04月20日

EDTA依存性偽性血小板減少症

テーマ:血液

血算をひさしぶりに測定したところ、血小板だけ6万に減少している方がいた。

以前は20万台で正常だった。検査室に問い合わせると、以前も血小板の凝集は見られていたので、EDTA依存性の偽性血小板減少症の可能性はあると。


実際のところ血小板だけ低値に出るのは採血や分注の手技に手間取ったためであることが最も多い。


しかしEDTA依存性偽性血小板減少症も0.03~0.3%程度の頻度で存在する。


その場合、凝固のスピッツで測定する(クエン酸Na)、血算のスピッツにテオフィリン・カナマイシン・硫酸Mgなど他の薬剤を加えて測定する方法などがある。


一般の診療所だと、血算のスピッツで再検し手技の問題を除外すると同時に、凝固のスピッツで血小板を再測定するのが現実的な対応だろうか。


なお上記のケースでは、再検にてEDTA検体で9万/μlで凝集あり、クエン酸検体で17万/μlであった。

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2008年03月01日

Dasatinib

テーマ:血液

フィラデルフィア染色体陽性のCMLはimatinibにより治療成績が格段に向上したが、同じフィラデルフィア染色体陽性でもALLの方は予後不良。


しかしdasatinibという薬は、フィラデルフィア染色体陽性のALLにも奏功率が50%程度あり、imatinib抵抗性の原因となる遺伝子変異があっても効くという。


Ottmann O,. et al. Dasatinib induces rapid hematologic and cytogenetic responses in adult patients with Philadelphia chromosome-positive acute lymphoblastic leukemia with resistance or intolerance to imatinib: interim results of a phase 2 study. Blood 110:2309-2315, 2007


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2007年02月01日

鼻血を出しやすい体質

テーマ:血液

先天的に鼻血を出しやすい体質が存在します。その名はOsler-Weber-Rendu病。

Hereditary hemorrhagic telangiectasia(HHT)、遺伝性出血性毛細血管拡張症ともいいます。

常染色体優性遺伝し、頻度は5万人に一人程度。

先天性の疾患なのに、出血症状は50歳以降にでることが多いらしい。

その理由としては、加齢による血管周囲組織の脆弱化などが考えられているようです。

15%程度が、肝臓や肺に動静脈婁を有します。


最近経験した症例では、急性心筋梗塞治療後に抗血小板薬開始を契機に鼻血や下血といった出血症状で診断された方がいます。肝臓に多発する動静脈婁も認めました。


治療は、局所療法。腸管の毛細血管を熱凝固するなど。


動脈硬化性疾患の増加とともに、こういった形で診断されるVascular Purpuraが増えるかも知れませんね。

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2005年10月09日

半落ち

テーマ:血液

横山秀夫の小説「半落ち」(講談社文庫)を読みました。感動しました。

物語の中心人物は、殺人を犯してしまった人望が篤いはずの現役警察官です。息子を白血病で亡くしてしまい、さらに妻がアルツハイマー病に罹ります。息子の命日に、夫婦で墓参りにいったのに、アルツハイマーの妻は墓参りに行った事を忘れてしまいます。夜に「息子の命日すら忘れてしまった」と泣き叫び、息子のことをまだ覚えているうちに殺してくれと夫に頼みます。夫は、妻を手にかけてしまいます。彼は自首します。殺人事件に関する事実関係は自白しますが、何かを隠している…(全てを自供した全落ちではなく半落ち)。これ以上は、興味のある方はご自分でお読みください。

さて、この小説ではアルツハイマーや白血病という病気が重要な役割を果たしています。白血病をはじめとする悪性の血液疾患は生活習慣病とは考えられていませんが、今回は血液疾患の治療について少し述べてみたいと思います。


近年、白血病の特効薬が開発され治療に使われるようになってきました。慢性骨髄性白血病などのイマチニブ非ホジキンリンパ腫(CD20陽性の場合)のリツキシマブなど。そのような治療法の進歩もあり、悪性の血液疾患も化学療法で根治することが多くなってきましたが、化学療法で根治できない場合や再発した場合などでは、究極的な治療法は骨髄移植です。まず血縁者でドナーを探し、適合するドナーがいない患者は骨髄バンクでドナーを探します。


わが国の骨髄バンクは1991年に設立され、2004年9月の時点で累積ドナーは25万人で、骨髄移植を必要とする17000人の登録患者の35%にあたる5800人が骨髄移植を受けています。累積だと35%ですが、初期には残念ながら間に合わずに亡くなっていった方もいらっしゃることでしょう。現在では約半分の患者でドナーが見つかり年間750~800人が骨髄移植を受けているようです。一人の患者が80%以上の確率でHLA遺伝子レベルが完全に適合したドナーを得るに必要なドナープール数は約30万人とされ、その目標に向って広報活動が行われています。


さらに、これとは別に臍帯血移植も行われるようになり、現在までに国内で2000例以上が臍帯血移植を受けているようです。


さらに自家移植といって自分自身がドナーとなる治療もあります。悪性リンパ腫の中でもホジキンリンパ腫は、化学療法や放射線療法で約75%が治癒します。しかし化学療法などで一旦治癒(完全寛解)したものの再発した場合や、化学療法などで治癒出来なかった場合、人から造血幹細胞を貰って移植するよりも成績が良いため自家移植が一番良い治療法となっています。



追伸: この作品は直木賞を逃した(or 直木賞がこの作品を逃した)らしいのですが、その理由は★法律的に受刑者が骨髄移植のドナーになれないからネタばれなので、読後の人だけ反転させて読んで下さいだそうです。残念ですね。

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