2016年01月28日

『ケトン体が人類を救う』読書感想

テーマ:糖尿病
『ケトン体が人類を救う 糖質制限でなぜ健康になるのか』
宗田 哲男著
光文社新書

著者は、絨毛-胎盤に高濃度のケトンが存在することを見出し、それを根拠に、胎児はケトン体を主要な栄養源にしているという説を提唱している。

したがって、成人もケトン体を主要な栄養源にして生きることができるはず、と論理展開している。

また、脳はブドウ糖だけでなく、ケトン体も栄養源にできる、と考えている。

大変興味深く、また考えさせられる内容だった。糖尿病の日常診療に、もっと積極的に糖質制限を取り入れるべきかもしれない。

ただ、率直に言えば論理展開の粗さも目に付いた。特にコレステロールについてがいまいち。著者自身も評価しているRCTの結果(数多くある)をどのように考えているのだろうか。この項目は記載しない方が良かったのではないか。

糖質制限に関する記述について、疑問が3点ある。

1番目の疑問 低血糖について

低血糖は死に至る危険がある状態だ。その理由は、低血糖だと脳がブドウ糖(栄養)不足のため昏睡に陥ること。また、低血糖状態はしばしば危険な不整脈を誘発することだ。
著者の考えが正しいならば、低血糖状態でも高ケトン血症であれば、昏睡にもならないし不整脈も誘発されないのだろうか?

2番目の疑問 糖尿病性ケトアシドーシスについて

著者は、糖質制限でたんぱく・脂肪で十分栄養をとっている状態で、正常血糖であればケトーシスであっても問題ない、と言っている。それは理解可能。では、正常血糖であってもケトアシドーシスになるレベルのケトン体濃度は、どの程度なのか、ということが疑問。血液pHの低値が生体にとって危険なのは疑いの余地がないからだ。通常DKAの時の血中総ケトン体は1万越えとなることが多いが、著者は5000を超えても問題ないケースを記載している。では、どの程度を超えると危険なのか?

3番目の疑問 

日本人の現状は高炭水化物(炭水化物50-60%)、米国人の現状は高脂肪食(脂肪50%超)、南米の畜産国家では高たんぱく食の国もある。世界で一番長寿な国は日本。米国は心筋梗塞による死亡率が高く、長寿国家ではない。糖質制限のクオリティーを決めるのは、糖質の代わりに何を食べるか、ではないだろうか。それが本当に肉と卵とチーズでよいのだろうか。コレステロールの血中濃度は、食事より体質の影響が大きく関わり、だからこそスタチンは良く効く。MEC食は(Meat, Egg, Cheese)、やっても良い人と、やってはいけない人がいるのではないか。

まとめ

面白い本だが、危険な面もある。一番感銘を受けたのは、胎児の栄養面の考察。さすが産婦人科医。二番目におもしろかったのは、学会で「襲撃された」というくだり。危険な面は、著者のコレステロールに関する勉強不足と、1型糖尿病に対する配慮が無い記述。いずれも、経験が乏しいこと、知らない(勉強不足な)ことを軽率に書いてはだめでしょう、医者なんだから。考察の緻密さと慎重さという意味で、同じ炭水化物制限推進派でも山田悟先生とはまったく違う。山田悟先生の本ならば自分の患者にも安心して勧められるが、この本は読んでも良い人といけない人がいると思う。本書は重篤な副作用をもたらす可能性があり、一言でまとめるならば「劇薬指定」。
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