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ハングリー精神と国技意識の魂

テーマ:闘争
2006年06月25日(日)
日本人はそんなにバカじゃない。

正直、私を含む多くの、にわかサッカーファンは、結果!結果!と言いつつも、魂を揺さぶるプレーが見られればよかったと大半は思っているに違いない。日々、成果主義実力主義な競争社会の中で暮らしている日本人は、WBCにしてもW杯にしても癒しを求めているに違いないし、勝利こそが最大の癒しとは感じつつも、欲張りを不徳とする日本人は本当に心の底から勝利「のみ」を望んではいない。日本人の精神構造は勝利以外のものから癒しを探し得る能力があるのだ。究極的には敗者の美学の看板により、敗北から癒しを得る希有な精神構造なのだ。

ところで、ブラジル戦の惨敗は様々な意味が詰まっていて考察するには面白い。

スポーツの世界では度々、こうやって日本が惨敗すると「日本人にはハングリー精神が足りない!!」というハングリー精神論が登場するのだが、私はハングリー精神論に懐疑的な目を持つフリタである。

スポーツにとどまらず、勝敗を決するすべてのものについて言えると思うが、果たして本当にハングリー精神だけあれば勝てるのだろうか?何かを成し遂げられるのだろうか?

日本人は経済的に豊かになった→ハングリー精神が欠落した→だから弱くなった、というハングリー精神論、よくよく考えてみると非常に怪しいロジックである。

たとえば今回のW杯にたとえて見れば一目瞭然なのだが、日本代表とブラジル代表。果たしてどちらの国の選手がハングリーなのだろう?

どう考えても日本代表選手の方がブラジル代表選手よりも安い給料ではないか。

確かに、多くのブラジル代表選手らの子供時代は非常に貧しい暮らしをしていたのだろう。貧困から一流のサッカー選手になる過程の中にあるハングリー精神論の正当性に否定言説をはめ込む余地は、無い。

しかしロナウジーニョらをはじめとする世界のトップスター達はすでにハングリーな生活を送ってはいないのである。にも関わらず、彼らは玉田選手が1点取っただけであの反撃により4点も取ってしまった。圧倒的な能力の違いを見せて。「金」をスタートとしたハングリー精神論がダメだと言うならば、では「勝利」だったらどうなのか。

どう考えても勝利に飢えていたのは日本の方である。ブラジルは勝利に関しても日本より満たされていたではないか。にも関わらず、やはりブラジルは颯爽と4点も奪取してしまったわけである。

本当に日本代表に、あるいは日本人に欠けているのはハングリー精神なんだろうか。

私はそれは違うと思うのだ。

身近な話で言えば、フリタも経済的に飢えた階級である。しかし、フリタな私にハングリー精神がふつふつと沸き起こる事は思い当たらない。ハングリーならハングリー精神が芽生えるのだろうか、そして、ハングリー精神が強力なエネルギーとなるのだろうか。

やはりそれは半分当たっているようで実際は半分も的を得ていないように思う。

あのブラジルの強さの正体は何なのか。

あの日本の弱さの正体は何なのか。

フリタの結論を先に言うと、その正体は愛国心以外にありえないのである。

まーたウヨってる話かよ!!と私の話に嫌気がさしたにわか日本人諸君、しばし待たれよ。

ここで指摘する愛国心というのはだな、国家の威信をかけての「プライド」と言えばわかるだろうか…もっとわかりやすく言うとだな、ようはサッカーというものに対する認識の違い、つまりブラジル代表にとってサッカーは「国技」であり、日本代表にとってサッカーは「国技ではない」という認識の差異がもたらしたもの、それがあの1対4という結果なんだと私は思うのだ。

ブラジル人にとってサッカーは国技である。ブラジル人からサッカーを奪ったらアマゾンとカーニバルの姉ちゃんしか残らないのがブラジルである。

つまり、ブラジル代表の強さは、国技意識の強さ。言い換えれば「満たされている者の強さ」なのである。

一方、ハングリー精神とは「満たされていない者の強さ」である。

世の中というものは実に面白いもので、たとえば政治は満たされている者、すなわち政権与党が圧倒的に選挙で強いものである。満たされていない側の野党も奮闘はするが、最後の最後で勝つのは、満たされている側の政権を渡すまいとするガムシャラでジャブジャブな勝利への渇望であった。

それは、受験勉強を例にしても同じ事が言える。親が東大卒で満たされている家ほど、子供の東大入学への執念深さがある。

そうなのだ。満たされている者はそれを失うのが怖いゆえに、満たされている者としてのハングリー精神なるものを持っているのである!

チャレンジャー精神はチャンピオンが腑抜けた時は確かに脅威たりえるが、チャンピオン精神というものが堅固に存在している時はチャレンジャー精神はそれに対して確実に劣るのである。なぜならチャンピオン精神の中にハングリー精神が宿っているからである。

そんな不思議な精神構造を可能にするのは、サッカーブラジル代表でいうなら「国技意識」しかないのだ。

考えてみれば確かに日本の国技は強い。日本の野球は国技であるがゆえにWBCで優勝したし、柔道も国技であるがゆえに五輪や世界選手権は日本の金メダル独占状態である。

野球や柔道は国技であるからこそ、満たされたものを失う怖さからくる尋常ではないハングリー精神によってその強さを誇るのだ。

反論が予想される。

じゃあなんでベースボールが国技の米国はWBCで惨敗し、相撲が国技の日本はモンゴル人力士にやられ放題なのかと。

実は日本の相撲と米国のベースボールは非常によく似た所がある

それは相撲には世界選手権が無く、モンゴル人力士がタイトルを総ナメにしても興行権は日本、つまり失うものが少ないのである。また野球WBCも第1回大会は「当然のように」米国で開催された。日本が優勝したところで、大リーグの栄華は失われる事はない。優勝した日本人選手が何もしなくとも大リーグでプレーする事を欲する、つまり米国にとって失うものは相撲同様に少ないのだ。

この点において日本国技の相撲と米国国技のベースボールは同じであり、日本国技の野球と日本国技の柔道、ならびにサッカー国技のブラジルとはだいぶ違う状況なのである。

もし、モンゴル人力士が横綱を独占する事でモンゴル相撲が日本の相撲を脅かす存在に、あるいは、WBCに日本が優勝することで日本のプロ野球が米国の大リーグを脅かす存在になるならば、ようは「満たされているものへの脅威」となるならば、米国のベースボールや日本の相撲は国技意識を全面に出し、死に物狂いでサッカーブラジル代表同様の盛り返しを仕掛けてくるだろう。

さらに深く掘り下げておくと、この国技意識とは、やはりナショナリズムなのである

サッカーはFIFAが中立的に開催するナショナリズムの衝突現場であり、五輪もIOCが主催するナショナリズムの衝突現場だし、各スポーツの世界選手権は各スポーツの世界的規模の協会が主催するナショナリズムの衝突現場なのだ。

しかし、始まったばかりのWBCはナショナリズムの衝突現場になるか大リーグの興行の延長上になるか未だ不透明な状況であり、米国の戦略的思惑としては、大リーグ活性化のためにWBCを有効に使いたいだけなのかもしれない。

では相撲はどうだろう?

これは絶対ナショナリズムの衝突現場にはできない状況である。小錦事件を見てもわかるように、興行の構造的問題からナショナリズムを煽ると国際的差別問題になってしまうからだ。だから日本人力士を鼓舞する事はできても、打倒外国人力士などと看板掲げて協会が肩入れする事は出来づらいのである。

話をサッカーに戻すが、日本代表がブラジルに勝つには「ブラジルと同等かそれ以上の国技意識」を日本サッカー界に根付かせるほかなく、その手段にはナショナリズム、すなわち愛国心を選手も指導者もファンもサッカー界のすべてに浸透させるしかないのだ。

それでも反ナショナリズムは減らないだろうが、そもそもJリーグチームがやってる地域密着型は、実際はナショナリズム密着型の延長上にあるのだ。

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