遅ればせながら、昨日の試合の振り返りです。
毎度のことながら長いですが、ご容赦くださいませ。


@First Energy Stadium 13:00(日本時間6日深夜2:00)kick off

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1試合目を超える23535人が入ったFirst Energy Stadium。
傾斜のきついスタジアムはスタンドがそびえるようで、観客が入った感じや、声の響き方も、初戦のDick’s sporting goods parkとは違った迫力でした。


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試合開始時は27℃、湿度は60%以上あり、とても雷雨の予報は信じられませんでしたが…。


日本の布陣は、4-4-2。岩渕選手がシャドー気味の4-2-3-1にも見える形でした。
前節ボランチの宇津木選手は左サイドバックで、岩渕選手も1試合目のワントップから、この試合では2列目に。

    菅澤優衣香  岩渕真奈

増矢理花           杉田亜未

     阪口夢穂 中里優

 宇津木瑠美 熊谷紗希 高木ひかり 川村優理

      山根恵里奈

対するアメリカは、1試合目は4-3-3でしたが、この試合では4-4-2の布陣に。
1戦目では2列目の新星ピュー選手を起用しましたが、スピードのあるダン選手を2列目に下げ、トップでモーガン選手と2トップを組むのは経験豊富なプレス選手。


    モーガン  プレス

  ヒース ロング ブライアン ダン

クリンゲンバーグ         オハラ
    サウアーブラン ジョンストン

         ソロ


チームの特徴でもある「ボールを繋ぎながら、細やかに、丁寧にサッカーをしていく」ことを1試合目からのテーマとして臨んだなでしこジャパン。 


初戦と違って高地の難しさ(酸素が薄い)からは解放されたものの、2戦目の会場となったFirst Energyスタジアムは初戦のピッチに比べて芝が長いためボールが走りにくく、横幅も狭さが感じられたようで…アメリカが得意とするサイドからのクロス攻撃は、より脅威に。

「(アメリカの)クロスへの対応は日本の課題です。クロスを上げさせないこととか、中で競り合う際にもう一歩体を当てるとか、スピード。そこら辺のパワーとか集中度を上げて、なんとか凌ぎながら自分たちのペースにしていきたいです」(高倉監督)

日本はラインを高く設定してコンパクトな形を保ち、同じく高いラインからプレッシャーに来たアメリカに真っ向勝負を挑みます。


1分 アメリカ (日本から見て)左サイドから仕掛けれられ、プレス選手の強烈なシュートを浴びますが、山根選手が正面でパンチング。
「今日は絶対に「逃げない」姿勢を持つことを意識しました。あの場面は自分でも何が起きたのかよく分からなかったのですが、その想いが形になった場面でした」(山根選手)

アメリカが立ち上がりに仕掛けてくるのは、これまでのW杯やオリンピックでの戦い方からも顕著でした。日本は立ち上がりの決定的なピンチをしのぎ、流れを待ちます。


4分 アメリカ ダン選手が右から中央に切れ込み、ミドル。バーの上へ。

6分 日本 左サイドで細かくつなぎ、増矢選手のクロス気味のラストパスはGKソロ選手の正面。

8分 アメリカ (日本から見て)右サイドからプレス選手が切れ込んで、マイナス気味のクロスをヒース選手がスルー。走り込んできた中盤の選手(不明)のミドルシュート!これも山根選手が正面でキャッチ。

11分 アメリカ カウンター。モーガン選手から裏に抜けたプレス選手へのパスはオフサイド。

12分 日本 阪口選手からの浮き球のラストパスに、2列目から飛び出した岩渕選手が合わせようとしますが、わずかにボールが長くなり、ゴールラインを割ります。

14分 日本 増矢選手がドリブルで仕掛け、縦でパスを受けた菅澤選手がターンから仕掛けようとしたところで倒され、ペナルティエリア中央手前の絶好の位置でFKを得ます。しかし、杉田選手の蹴ったボールはバーの上へ。

20分 アメリカ ブライアン選手がエリア内に仕掛けてきますが、ここは高木選手が体を当てて対応。ノーファウルで確実にボールを奪いきります。


アメリカのサイド攻撃に苦しみながらも、この時間帯はアメリカのプレッシャーをパスでいなしながら、日本のリズムが作れていました。中盤の中里選手、増矢選手が流動的にポジションを変えながらボールを出し入れし、阪口選手が長短のパスを織り交ぜて左右のスペースに展開。日本らしい細やかなパスワークが見られた時間帯でした。

特に、「(1試合目の途中から)初めて試合に出た時はすごく緊張したんですけれど…そこで、自分らしさを出せる自信が持てたので。前回よりも今日の試合は気持ち的には楽に入れました」(中里選手)
148cmと小柄な体格でも、当たり負けせず、ポジショニングでも持ち味を発揮していました。


第一戦の後、
「アメリカはあのままじゃ終わらないと思います。ある意味楽しみではありますけれど、どんな感じでくるのか怖い。でも、変にビビって90分間終わってしまうのは本当にもったいないと思うので、物怖じしないでやりたいと思うし、その後に結果はついてくる。まずは思い切ってぶつかりたい」
と話していたのは阪口選手。

この試合が代表デビューとなった高木選手も、持ち味のロングフィードや、落ち着いた対応が光りましたね。

しかし、この試合はつなぎのミスも多く、守備から攻撃に切り替わった時に「ちょっとしたパスのズレ」や、自らのミスからピンチを招く場面が増え、再び試合の主導権はアメリカに移っていきます。

トラップが大きくなったところや、バウンドを見送った瞬間など、一瞬の隙を見逃さない抜け目なさも、アメリカの怖さ。中盤でボールを奪うと、前線では決定力のあるモーガン選手とダン選手がゴールに目を光らせます。


そして、27分。
アメリカは中央でFKを得ると、CK同様、低いボールを入れてきます。杉田選手のクリアが中途半端になって後方にこぼれると、ロング選手がすかさず拾ってクロス。ファーサイドからジョンストン選手がトップスピードで詰めて、アメリカが先制。⚽️1-0

第1戦は先制してゲーム運びを優勢に進められた日本ですが、先制されたこの試合は、逆の立場に。
元々ラインは高いのですが、攻撃にも人数をかけたい。必然的に、両サイドバックの裏はさらに狙われやすくなります。

30分 アメリカ 左サイドから攻められますが、増矢選手が最終ラインまで戻って対応。

前半はアメリカの一方的な攻撃に押し込まれた日本。ミスからの失点は防げたものですが、攻撃でも、中盤でボールを回せる場面はあっても効果的な攻撃にはつながらず、シュートを打たせてもらえませんでした。


後半に向けて高倉監督は交代策も含め、修正を加えます。

HT 日本 菅澤優衣香→千葉園子
     杉田亜未→中島依美

中島選手が右サイドに入り、岩渕選手と千葉選手の2トップに。

「アメリカの前からの圧力があったので、裏を狙って相手のディフェンスラインをひっくり返すために『空いたスペースで受けて、そこから中盤でつないで展開していこう』と伝えました」(高倉監督)

そして、後半。

千葉選手が前線から相手を追い、守備から攻撃への切り換えのスイッチが入りました。前線では岩渕選手がしっかりとボールを収め、ポストプレーで頼もしい存在感を発揮。バイエルンで、欧米の大きな選手たちと戦う中で培った体の強さが印象的でした。しかし、アメリカの守備も時間をかけて作ってきた高い組織力があり、そう簡単には崩せません。

「アメリカのプレッシャーが早いので、一人一人が良いところに立って少ないタッチで簡単にボールを回していこうと話していました。ただ、相手が前から来ていることをチーム全体が怖がっていたのかなと。『それをかわせたらチャンスになる』という風に考えられなかったのが、足りなかったところかなと思います」(阪口選手)


46分 アメリカ 中盤から斜めに抜け出した選手(不明)が決定機を迎えるものの、山根選手が飛び出してパンチング。

50分 アメリカ 右サイドでボールを失い、ヒース選手が角度のない位置から送ったマイナス気味のパスに、プレス選手が合わせますが、ゴール右へ。

54分 アメリカ 右サイドを崩され、プレス選手のクロスを受けたヒース選手の横パス。モーガン選手が走り込んだ決定的な場面でしたが、山根選手が長い足でクリア。

56分 日本 川村優理→有吉佐織

57分 アメリカ ブライアン→ホラン

62分 右サイドでダン選手に裏を取られ、クロスからモーガン選手に決められて追加点を許します⚽️0-2

65分 岩渕真奈→横山久美

交代直後の66分、その横山選手の落としを阪口選手がミドルシュート。GK正面。

67分 増矢理花→佐々木繭

74分 千葉選手がボールを奪って、並走する横山選手へ。横山選手のミドルシュートはゴール左に僅かに逸れます。

ここで、突然の大雨。

みるみるうちに雲に覆われ、雨も大粒でした。
雷の予報もあったのですが、8マイル(約12km)以内に落ちると、試合が中断という決まりがあるそうで、試合は一時中断に。
つい20分前まで青空だったのに!


BEFORE

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AFTER

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アメリカの天気予報の精度、恐るべし…。

その後、再開を待ったのですが、結局、試合は中止に。
75分を超えると国際試合として認められるそうです。結果は、0-2でアメリカの勝利(公式発表かは未確認)。


「失点シーンだけ見ると、またミスがらみでもったいなかったと思いますけれど、それも自分たちの実力です。前半0-1というのは想定していたので、そこから良い形を作りたいなというのはあったんですが、相手のプレッシャーをはがすことができなかった。前線と後ろのタイミングが合わなかったですし、全体的に不安定感が多いゲーム展開になってしまいました」(高倉監督)


試合を振り返ると、やはり1試合目に比べてミスは多かったですね。アメリカは1試合目に比べると、たしかにゲーム運びも個人の上手さという点でも一段ギアが上がっていました。ですが、相手以前に、集中力の欠如が原因に思えるミスもありました。


収穫としては、特に守備面では山根選手や中里選手、高木選手など、チャレンジを見せてくれたのは頼もしかったですね。
千葉選手同様、2部のノジマステラで戦う高木選手。今回の遠征の中で、成長の様々なヒントを見つけているようです。

「(各年代代表とのレベルの違いについて)世界でプレーしている人も多いので、そういう選手の経験とか、予測の種類の多さを感じました。熊谷選手は、相手がしてくるだろうと思うパターンが何個も頭の中で用意されている。相手が『こうしてくるだろう』といのが何個もあるんだなぁと。それは指示の出し方でも分かるし、プレーでも分かりました。(予測と違うプレーを相手がしてきた場合の対処)トライ&エラーだよ、と、紗希さんやなでしこの選手たちに言ってもらいました。やってみないと失敗もできないので、チャレンジしてみたいです」(高木選手)

試合前にそう話していた高木選手。
「緊張するタイプ」と言っていましたが、そうは見えなかったです手描きふうクローバー


練習量が足りない中で様々なことを吸収し、女王アメリカ相手にまったく違う展開となった2試合を経験したなでしこジャパン。若い選手たちが得た貴重な経験が、今後にどう生かされるのか楽しみです。


「1試合目はシュート数(の少なさ)を考えるとすごく良い形で得点できて、自分たちのゲームにできたように思うんですけれど、勝ちきれなかったのは非常に残念でした。今日に関して言えば、得点がなかったのがすごく心残りです。(選手たちの収穫について)自分たちができることとできないことは、はっきりしたと思います。「できていたつもり」だったことが、たとえばメンバーが変わるとできない。それではできているとは言えないと思います。個人のサッカーの質にもう一回立ち返って、もう一歩上に行く努力をして、チームとしても前進していけるようにしたい。フィジカル的な要素ももちろんですけれど、より技術的なことや、状況判断をもっと考えてプレーしていかなければいけないと思うので、要求していきたいと思います」(高倉監督)

今回のアメリカ遠征の中でも数々の逆境を乗り越えた新生・なでしこジャパンの進化に引き続き注目したいと思います


この2試合を通じて特に”変化”を感じた選手については、また別のコラムにて。