PCOS(polycystic ovary syndrome)の場合、基本的に生理が不順なので生理を起こしてから採卵周期に入ることが多いかと思います。

この際、自然に生理を待つか、ピルを用いて生理をおこすか、黄体ホルモンを用いて生理をおこすか、この3パターンが選択できます。

このような前処置がその後の妊娠率、出産率、流産率にどのように影響してくるかあまりよくわかっていません。

どの方法が妊娠率、出産率を高く出来るかに関しての論文が2月のHum Reprodにありましたので紹介します。

 

方法

2013-2014年において14箇所のセンターにおいてPCOSと診断された1,508名が参加しました。

自然待機群(コントロール)323名

黄体ホルモン群283名

ピル群902名

生理の2、3日目からアンタゴニスト法で刺激を行っています。新鮮胚移植、凍結胚移植での妊娠率、流産率、出産率を比較しました。

 

結果

新鮮胚移植

妊娠率[自然待機群:63.6%。ピル群48.8%]相対リスク0.77

出産率[自然待機群:48.1%。ピル群36.1%]相対リスク0.75

ピル群において有意に妊娠率、出産率が低くなりました。

 

凍結胚移植

妊娠率は自然待機群とピル群で同等でした。

流産率はピル群と自然待機群で(27.7% vs 13.0%, RR: 2.13)となりピル群で有意に高くなりました。

出産率はピル群で49.9%、黄体ホルモン群で50.7%、自然待機群で60.2%となり有意差は認めませんでした。

 

黄体ホルモン群は自然待機群と比べ新鮮胚移植、凍結胚移植の両者において同様な妊娠率、流産率、出産率となりました。多変量ロジスティック回帰分析によるとピル群において出産率は有意に低下することがわかりました。

 

結論

PCOSで生理開始を調整するためにピルを用いると新鮮胚移植において妊娠率、出産率が低下しました。

黄体ホルモンを用いると、ピルを用いた場合よりも妊娠率と出産率が有意に上昇しました。

 

この結果から言えることとして

PCOSの場合ピルで生理を起こすのではなく、自然に生理を待ってから採卵周期に入る方が良い結果が出ることがわかります。その他として黄体ホルモンを用いることも好ましいことがわかります。

 

Effect of pretreatment with oral contraceptives and progestins on IVF outcomes in women with polycystic ovary syndrome

Hum Reprod (2017) 32 (2): 354-361.

 

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PCOSは体外受精の適応になるか?


多嚢胞性卵症候群(PCOS)は排卵が規則的に起きていなく、生理不順となり妊娠しずらくなります。

そのため卵管因子や男性因子等の体外受精や顕微授精でしか妊娠できない疾患とは異なり、PCOSは厳密に言うと体外受精の適応にはなりません。

ただ排卵誘発剤を使用して排卵障害の治療を行ってもなかなか効果的でない場合には、早く妊娠するために、妥協案として、体外受精を検討する事も一つの方法と言えます。


PCOSで体外受精を行うメリットとして

①排卵誘発の注射により沢山卵胞が出来た場合(通常4つ卵胞が出来た場合はキャンセルになる事が多いと思います)、自然排卵の場合は多胎が怖いのでキャンセルになるようなケースでも、体外受精の場合は採卵して移植胚数を制限して、残った胚を凍結する事で多胎を防げるという最大のメリットがあります。

②一度の採卵でたくさん凍結卵を確保する事が出来るケースが多いです。


デメリットとしては

①PCOSは卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のハイリスク群のため、PCOSに対しては慎重に誘発剤を用いる必要があります。

②体外受精をやらないでも妊娠出来る可能性があるため、コストや時間的な負担になる事があります。


結論として、PCOSが体外受精の適応になるかどうかは、難しい問題ですが、やはりケースバイケースとなります。

年齢、不妊期間、過去の治療結果(排卵誘発剤への反応)、過去のキャンセルの頻度、ストレス等を総合的に判断して、体外受精をやるかどうかを決めていくべきかと思います。

(また腹腔鏡でのドリリングと言う選択肢もあります。)