子宮内膜症は産科的なリスクを上昇させると言う報告がありましたので紹介します。

 

方法

デンマークにて調査を行いました(1989年-2013年)。

子宮内膜症がある場合に産科的なリスクがどのようになるかを検討しています。

82,793名を対象としています。

1,213名が子宮内膜症と診断されています。

1,719例に妊娠が認めています。

子癇前症、帝王切開、産後の出血、早産、small for gestational age(SGA) を検討しています。

 

結果

子宮内膜症がある場合、子宮内膜症が無い場合と比較し産科的リスクは以下のようになりました。

早産のリスク:補正オッズ比1.67

早期の早産のリスク:補正オッズ比1.91

子癇前症のリスク:補正オッズ比1.37

帝王切開のリスク:補正オッズ比1.83

(産後の出血やSGAは相関しませんでした)

 

結論

子宮内膜症があると早産、帝王切開のリスクが上がる事がわかりました。

 

Endometriosis and pregnancy complications: a Danish cohort study

 2017 Jan;107(1):160-166.

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卵巣にチョコレート嚢腫がある場合、嚢腫がある卵巣から排卵するかどうか不安になる方もいます。嚢腫により排卵が妨げられるのではという考えもあります。この辺りはとても心配なところです。

 
これに関してまとめてある論文がHum Reprodにありましたので紹介します。
 
方法
チョコレート嚢腫が排卵に対してどのように影響しているかを調べています。
対象としては2009年9月から2013年6月まで。妊娠を望む方で、生理が順調で、片方に2センチ以上の卵巣チョコレート嚢腫がある方を対象としています。
除外対象としては卵巣へのオペの既往がある方、3ヶ月以内のホルモン療法を受けている方としています。
244名(1,199周期)を対象に、最大6周期まで排卵をエコーにてモニターしました。平均年齢は34.3才。
55.3%は左に嚢腫があり、44.7%は右に嚢腫がありました。
嚢腫の平均径は5.3cm。左右差は有意差を認めました(P = 0.024)
 
エコーにて排卵は以下のように確認されました。
嚢腫がない健常側において596周期(49.7%; 95% CI, 46.8–52.6%)
チョコレート嚢腫がある側において603周期(50.3%; 95% CI, 47.1–53.2%; P = 0.919)
この結果に有意差は認められませんでした。
 
チョコレート嚢腫の直径が4cm以上の166名の方において、6cm以上の45名の方でも同じ結果が出ました。
105名が自然妊娠となりました。(43.0%; 95% CI, 36.7–49.5%).
 
この論文から言えることとして
卵巣チョコレート嚢腫があっても、嚢腫があるサイドからも健常側と同様に自然に排卵することがわかりました。
また良好な自然妊娠率を示すこともわかりました。
今後腹腔内の癒着状況や両側の卵巣チョコレート嚢腫の場合はどうなるかに関しても更に評価する必要があると思います。
 
Hum Reprod (2015) 30 (2): 299-307.

子宮内膜症は重症化すると月経痛、性交痛、排便痛など様々な症状を引き起こします。

また排卵した卵子が卵管に入らず不妊にもつながります(ピックアップ障害)。

 

この場合体外受精で妊娠させることも可能ですが、重度の子宮内膜症があると着床環境が良くなく、良好な胚盤胞を移植しても妊娠に至らない「反復不成功」となるケースも多々あります。

 

その場合どのようにして妊娠へ至らせれば良いのか、ただ移植を繰り返すことしかないのか、内膜症の治療をすれば良いのか、オペにより卵巣へのダメージはないのか、オペ後AMHは低下しないのか、これらの疑問が生じてきます。

 

子宮内膜症が重度で体外受精反復不成功の場合に腹腔鏡手術で内膜症の治療を行い、その後妊娠に至る確率が上がるという論文がfertil Sterilにありましたので紹介します。

 

方法

2006〜2014年にかけて78名の方が対象となりました。

78名全員が重度の子宮内膜症(rAFS分類Ⅲ〜Ⅳ)を有する体外受精反復不成功不妊症例でした。それに対して熟練した技術を持つオペレーターが執刀し内膜症の治療をしました。

 

オペ後33名(42.3%)が出産しました。3名(9%)が自然妊娠し、残りの30名は体外受精での妊娠でした。

出産した人の平均年齢は32.5歳、出産できなかった人の平均年齢は35.5歳となり年齢差は3歳認められました(P<0.001)。

卵巣予備能の低下が認められた割合はそれぞれ2/33(6%), 13/45(28.8%)

正常な子宮の形態を有している割合はそれぞれ15/33(45.5%), 9/45(20)

 

結果

重症子宮内膜症で体外受精反復不成功の女性に対して、熟練した技術を持つ腹腔鏡手術を行うことで、術後に半数近く妊娠し、体外受精の妊娠率が向上することがわかりました。

 

この結果から言えることとして

繰り返し移植しても結果が出ない反復IVF不成功の場合、腹腔鏡手術をして腹腔内の着床環境を整えることで、その後の移植で妊娠に至り易くなることがわかりました。

結果が出ない場合には是非腹腔鏡手術をトライしてみることが良いのかと思います。

 

Fertility outcome of laparoscopic treatment in patients with severe endometriosis and repeated in vitro fertilization failures

Fertil Steril 2016 Oct; 106 (5): 1264–1269

子宮内膜症について

テーマ:

不妊症の一つの原因として子宮内膜症があげられます。

生殖年齢女性(20代~40代前半)の約10%に子宮内膜症が発症しています。

子宮内膜症患者の30~50%に不妊症に不妊症合併します。

同様に不妊症患者の30~50%が子宮内膜症を有しています。


子宮内膜症は放置しておきひどくなると、手術をしなければいけない等治療が結構大変になります。

生理痛がひどいと思ったら、早めの受診をお勧めします。


今すぐ妊娠を希望していない場合は、低用量ピルが一番お勧めです。

今は保険がきく低用量ピルがありますので、経済的な負担も少なくなっています。

また低用量ピルは子宮内膜症の悪化を防ぎ、服用中は排卵もしないため、卵巣を休ませる事が出来ます。


卵巣チョコレートのう腫も早い段階で治療をすれば、卵巣機能(AMH)を低下させる事無く、癒着を完全に取り除き、卵巣嚢腫のみを摘出できます。


不妊治療と同様に子宮内膜症も早めの検診が最も大切と言えます。



子宮内膜症に関する過去の記事をまとめました。

良ければ参考にして下さい。


子宮内膜症と不妊症 ①


子宮内膜症と不妊症 ②(薬物療法)


両側卵巣嚢腫手術により閉経が近くなる


卵巣のう腫手術とAMH


卵巣チョコレートのう腫と体外受精


子宮内膜症を告白