顕微授精の際に良い精子を選ぶ事が大切なのは言うまでもありません。
その一つの方法としてヒアルロン酸を用いる方法が報告されてます。
これは精子の構造機能的に成熟した精子原形質膜にヒアルロン酸受容体が発現している事を利用した方法で、ヒアルロン酸に結合する精子は精子核の染色体異常率が低い事、DNAダメージが少ない事が証明されており、精子選別に期待が寄せられています。
これに関する演題が昨年の生殖医学会にありましたので紹介します。
加藤レディスクリニックからの発表です。
演題(演題番号O-087)
当院におけるヒアルロン酸結合精子を用いたICSIの成績
目的
近年ICSIを行う際の精子選別が注目されている。その一つとしてヒアルロン酸に付着した精子を用いてICSIを行う事(HA-ICSI)が報告されている。今回ヒアルロン酸を多く含むSperm Slow (MediCult社)を使用してHA-ICSIを行い、通常のICSIと比較したので報告する。
方法
HAーICSI群とICSI群で正常受精率、異常受精率、良好分割胚率、良好胚盤胞発生率及びDay2単一胚移植における着床率を比較した。
成績
HA-ICSI群とICSI群を比較した結果、正常受精率、異常受精率、良好分割胚率は有意差が無かった。
良好胚盤胞発生率は43.0%、34.4%となり、両群間に有意差は見られなかったものの、HA-ICSI群がICSI群に比べて良好胚盤胞発生率が高い傾向が見られた。
Day2単一胚移植の着床率は31.6%、22.2%となり、両群間に有意差は見られなかったものの、HA-ICSI群が着床率において高い傾向が得られた。
結論
今回の検討の結果、良好胚盤胞発生率及びDay2単一胚移植の着床率において有意差は見られなかったもののHA-ICSI群において高い傾向が得られ、ヒアルロン酸結合精子を用いたICSIの有用性が示唆された。
この結果から言える事として
顕微授精において、ヒアルロン酸を使用した精子選別方法は今後期待できる方法と言えます。
以下のいくつかの論文でも同様にその有効性が報告されています。
with normal nucleus, resulting in improvement of embryo quality.
Parmegiani L, Cognigni GE, Bernardi S, Troilo E, Ciampaglia W, Filicori M.
Fertil Steril. 2010 Feb;93(2):598-604.
Efficiency of hyaluronic acid (HA) sperm selection.
Parmegiani L, Cognigni GE, Ciampaglia W, Pocognoli P, Marchi F, Filicori M.
J Assist Reprod Genet. 2010 Jan;27(1):13-6