黄体化未破裂卵胞 LUF | 両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

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黄体化未破裂卵胞 LUF(luteinized unruptured follicle)


LUFとは 

LUFとは卵胞から排卵しないままに黄体形成を認める事を言います。少し難しいので基礎的な事を含めて説明します。

普通は14日目ころ卵胞が20mmに達すると卵胞から卵が排卵します。その後空の卵胞が黄体というものに変わります。そして黄体はプロゲステロンを分泌して視床下部の体温中枢に作用して体温が0.3度位あがってきます。

しかしLUFとはその排卵がうまくいかないまま(卵が卵胞内に残ったまま)黄体形成を認める事を言います。内分泌学的には黄体化現象を示しますのでプロゲステロンは上がりその結果体温も上がります。


LUFの診断

LUFがあるかないかは体温やホルモン検査では診断できなく、必ず排卵後にエコーで排卵を確認をしないと分かりません。


LUFの原因

はっきりしていませんが以下の事が予測されます。

①子宮内膜症による癒着

②非ステロイド性消炎鎮痛薬によるプロスタグランジン合成障害

③LHサージの不十分


LUFの頻度

正常 5~10%

子宮内膜症 25%


LUFへの対策

LUFを繰り返す長期の不妊の場合は以下の2つの選択肢があります。

①腹腔鏡下に卵巣周囲の癒着を剥離する事をお勧めします。つまり卵巣周囲に癒着があることで物理的に卵が外に出れない事が多く、これに関しては腹腔鏡下に容易に取り除く事が出来ます。

②体外受精:LUFを繰り返す場合で手術を希望しない場合は採卵を行うことがLUFへの対策となります。


ボルタレンを使うと排卵しない??

ちなみに排卵時期に鎮痛剤を飲んだりボルタレンの座薬を使用するとLUFになりやすい事がわかっています。(上のLUFの原因の②にあたります。)

妊娠を希望する女性は排卵日には鎮痛剤を飲まない方が良いという事になります。この鎮痛剤とLUFの効果をうまく利用して、採卵の際にボルタレンを使用すると排卵を防いで採卵まで持たせてくれるという効果があります。排卵抑制目的にボルタレンを処方するクリニックがあるのはこのためです。


ボルタレンの添付文書には以下のように書いてあります。

「ジクロフェナクナトリウムを含む非ステロイド性消炎鎮痛剤を長期間投与されている女性において、一時的な不妊が認められたとの文献報告があるため追記いたしました。主な機序としては、プロスタグランジンが排卵に関与しており、非ステロイド性消炎鎮痛剤がそのプロスタグランジンの合成を阻害していることが考えられております。」





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