安倍政権が最大のチャレンジと位置づけている「働き方改革」は、罰則つきの「残業時間の上限規制」が最大の目玉だ。

 電通の女性社員が過労自殺したことをきっかけに安倍政権が“国民受け”を狙って取り組んだ政策である。長時間労働がなくなるのは結構なことだが、この安倍流「働き方改革」は、まさに机上の空論。日本経済の実態をまったく分かっていない。幻に終わるのは確実だ。東京商工リサーチ情報本部長の友田信男氏がこう言う。

「いま日本企業にとって一番の悩みは、深刻な人手不足です。長時間労働も、人手不足が大きな要因になっています。ヤマト運輸が典型です。とくに中小企業は困り果てている。東京商工リサーチが“残業の理由”をアンケート調査したら、〈納期に対応するため〉40%、〈人手不足のため〉22%でした。どこも人を集めようと努力しているが、苦戦している。新たに人を雇えなければ、長時間労働を続けるしかない。安倍政権が掲げる“働き方改革”に文句をつける気はありませんが、企業が長時間労働を解消したくても、簡単に解消できないのが実情です」

だいたい、よほどのブラック企業でない限り、どの経営者も従業員を倒れるまで働かせようとは思っていないだろう。もし、無理やり「働き方改革」を実現しようとしたら、中小企業がバタバタと倒産する恐れがある。

「中小企業は大企業に比べて生産性が低い。生産性が低いということは、収益力が低いということです。収益力の低い中小企業が、長時間労働を解消するために無理して社員を増やしたら、さらに収益力が下がる悪循環に陥ってしまう。本来、“働き方改革”は、労働者のために行うものですが、肝心の勤め先が傾くというアベコベの結果になりかねません」(友田信男氏=前出)

 それでなくても、アベノミクスの失敗によって、16年の中小企業の廃業は過去最悪の2万9583件を記録している。

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