今回は、長崎県畜産試験場研究報告についての紹介です。



その1.雲仙火山降灰の付着した粗飼料が家畜に及ぼす影響


要約すると、

[試験方法]

ホルスタイン1頭にH3.7.1から90日間、ローズグラスの乾草を飽食させ、毎日1kgの火山灰を直接、ルーメン(第1胃)に投与し、その後、剖検した。


[結果]

飼料摂取量、及び、体重に顕著な変化は見られなかった。

胃汁成分は、正常値範囲内を推移した。

血液成分は、正常値範囲内を推移した。

血清中酵素成分・蛋白成分に降灰による影響は見られなかった。

血清中無機成分のマグネシウムは、増加が見られたが、これは、降灰摂取の影響が認められる。

同、鉄は、急激に低下し、やや正常値に近づくが、正常値までの回復は見られなかった。

第4胃に、降灰が200mlみられたが、降灰投与の割りに少ないと思われた。

病理組織所見では、第4胃から直腸にかけて、粘膜固有層に好酸球およびプラズマ細胞の浸潤が認められた。

脾臓の鉄が異常に多かったが、ヘモジデリン沈着が原因と思われた。

家畜の健康に対する降灰摂取の影響は全体的に考えると、健康を阻害したと考えられる異常は認められなかった。


[小生の感想]

長期間、特定のミネラル(Mg、Fe)が増えたり、減ったりすることで、何か病気になるのであろうか。もし、であるなら、治療が必要ということになるが・・・。




その2.降灰を混合した粗飼料が採食性と乳量等家畜に及ぼす影響


要約すると、

[試験方法]

1区2頭を計3区6頭のホルスタインに対して、試験区ごとに、ソルガムサイレージに降灰を40g/kg、20g/kg、0g/kg混合したものを1日2回不断給与した。

泌乳量、残飼は毎日計量し、体重、乳質は各試験の期末2日間の平均を取った。


[結果]

粗飼料採食量は、灰の付着した粗飼料ほど低い傾向が見られた。

乳量、乳成分には、差は見られなかった。

血液成分、胃汁について、対照区と差は見られなかった。


[小生の感想]

黒毛和種についても知りたいところである。

胎児に与える影響なども知りたい。




その3.雲仙火山降灰が肉用牛の採食性に及ぼす影響


要約すると、

[試験方法]

黒毛和種成雌牛4頭に、1頭当たり、朝9時に、稲ワラ2kg、夕方4時に、降灰混入大麦サイレージ10kgを給与した。

混入割合は、2日おきに変化させた。


[結果]

体重は、ほぼ変化無かった。

採食率は、混入率30%で、78%、混入率15%で、85%、混入率10%で、99%、混入率5%で、100%であった。よって、サイレージ現物中10%以下の降灰混入は、採食性や健康状態には、殆ど影響しないと思われた。

1頭に軟便が見られた。


[小生の感想]

現物中10%以下なら問題ないのなら、サイレージ200kg中、20kgの灰が混入しても問題ないことになる。

その5.(1)で、イタリアンライグラスの灰付着率が3.3~5.9%で、乾かして振るえば、32.5~51.7%の灰落下率となるのであれば、一般的なラップサイレージの中に混入している火山灰は、1.6~4.0%程度ということになり、許容限界10%を大きく下回る。まぁ、普通に収穫(作成)すれば問題なしと考えてよさそうである。





その4.雲仙火山灰の付着した粗飼料が家畜に及ぼす影響


要約すると、

[試験方法]

去勢シバ山羊3頭について、その1.と同じ試験をした。ただし、降灰の投与量は、体重比0.15%(現物50%)とその半量(現物25%)とした。


[結果]

食欲、体重、臨床所見、血液生化学検査において異常を認めず。

剖検所見では、第4胃に降灰が僅かに残留した以外、異常を認めず。

病理組織所見について前回認められた消化管の変化は認められず。

降灰摂取が家畜の健康を阻害したと考えられる試験結果は認められず。


[小生の感想]

山羊は、降灰に強いのか?




その5.雲仙火山降灰が飼料作物の生育等に及ぼす影響

  ―(1)飼料作物における降灰付着調査―


要約すると、

[試験方法]

イタリアンライグラスとバヒアグラスに降灰が降雨・予乾によりどれほど付着(落下)するかを調査した。


[結果]

刈取り直後のイタリアンライグラスについては、生草中の灰混入率は、3.3%~5.9%であり、バヒアグラスの付着率は、4.9%~7.5%であった。

降雨後のイタリアンライグラスでは、無倒伏であれば、23.3%の灰落下率であり、バヒアグラスでは、9.7%の灰落下率であった。

予乾処理後のイタリアンライグラスでは、35.2%~51.7%の灰落下率であり、無倒伏のものが灰落下率が高かった。


[小生の感想]

イタリアンライグラスに付着した降灰を除去する方法としては、乾かし、振るい落とすしかないと思うが、乾燥に要する日数やジャイロヘイメーカーの回転数や回数などのデータが欲しいと思う。

例えば、最低2日間天日干し、その間、ジャイロヘイメーカーを4回掛けると、火山灰は、85%除去できるとか。何らかの指針が欲しい!




  ―(2)播種直後の降灰が飼料作物の発芽に及ぼす影響―


要約すると、

[試験方法]

とうもろこし、ソルガムを

H3.6.27には、降灰0kg/㎡、5kg/㎡、10kg/㎡、15kg/㎡

H3.7.3には、降灰0kg/㎡、10kg/㎡、20kg/㎡、30kg/㎡

H3.7.5には、降灰0kg/㎡、30kg/㎡、50kg/㎡、70kg/㎡に播種し、

発芽率を算出した。


[結果]

降灰量20kg/㎡水準までは、両草種とも、発芽良好であった。

降灰量30kg/㎡では、発芽率は、両草種とも、低下した。

また、播種後、晴天が続き積灰の固結化が進むと、発芽日数の延長、発芽率の低下、奇形を生じるものが認められた。


[小生の感想]

まぁ、予想される話です。




  ―(3)多量降灰土壌における栽培改善技術―


要約すると、

[試験方法]

トウモロコシ、ソルガム、イタリアンライグラス、えん麦を、無降灰区、降灰区、改善区Ⅰ(苦土石灰・牛糞施肥、10cmの耕運深度)、改善区Ⅱ(苦土石灰・牛糞施肥、15cmの耕運深度)に播種し、発芽・生育状況を調査した。


[結果]

多量降灰土壌において、苦土石灰・牛糞を施肥し、耕運することで、発芽・初期生育にを改善することができる。


[小生の感想]

まぁ、予想される話です。



その6.降灰付着飼料作物の品質向上技術


要約すると、


[試験方法]

イタリアンライグラス(3.3%火山灰付着)に、無添加、フスマ10%添加、フスマ20%添加、糖蜜吸着飼料10%添加、糖蜜吸着飼料20%添加し、サイレージを作り、約2ヶ月後に開封し、評価した。

ソルガムに、無降灰、無添加(火山灰5%混入)、フスマ10%添加(火山灰5%混入)、フスマ20%添加(火山灰5%混入)、糖蜜吸着飼料10%添加(火山灰5%混入)、糖蜜吸着飼料20%添加(火山灰5%混入)し、サイレージを作り、約2ヶ月後に開封し、評価した。


[結果]

イタリアンライグラスでは、無添加では、pHが高く、評価は「劣」。

添加したものでは、品質が改善されたが、効果は、添加割合の高いほうが大きくなった。

ソルガムでは、火山灰付着による明らかな品質低下は認められず、添加による品質改善も認められなかった。


[小生の感想]

できれば、他の添加剤も試験して欲しかった。

しかし、フスマそのものを添加する技術は、いかがなものであろうか。フスマを水に溶かし、その溶液を漉しとり、その炉液を添加する方が経済的な気がするが。





以上です。

このシリーズ記事が、今後の新燃岳火山活動による家畜や飼料作物への悪影響を最小限にする一助となることを希望します。

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