2010-02-28 22:15:13

池波正太郎「剣客商売」

テーマ:ブログ



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池波正太郎は恥ずかしながらこれが初めて。以前NHKで山本一力が、池波正太郎の男の哲学について熱く語っていた。山本一力の「あかね空」は面白く読んだものの、その後テレビで見掛ける山本一力のキャラがあまりにもワイドショー仕様のため、そのとばっちりを受けた池波正太郎も読まずにいたのだ。しかし今回、歴史や民俗学チックなネタになると二人で異様に盛り上がる美冬女史に、前々回のコメントでオススメ頂き、いそいそと手に取った。




物語は、田沼意次の権勢華やかなりし頃の江戸が舞台。かつて剣客としてその名をとどろかせ、道場も繁盛させたが、今は隠居して下女のおはるとウフフな生活を送っている59歳の小男・秋山小兵衛と、その息子で、逞しい体躯を持ち、父の隠居と川を挟んですぐのところに新たに自分の道場を構えたばかりの25歳の大治郎が、女武芸者の佐々木三冬などとともに、次々に遭遇する事件を解決していく話。




時代小説と言えば、

「司馬遼太郎とか隆慶一郎のもんじゃね!?」

と思っている超初心者の僕にとって、その文体は、

「とても新鮮」

だった。

…僕が書くと、どうしてこうもウザい感じになってしまうものか、と思うのだが、しかしこれがこの「剣客商売」の文体の特徴のひとつなのだ。上記のような感じで、読点、改行、鍵括弧で、主に形容詞句というか、慣用句的なひとまとまりをポンと取って出して、一旦立ち止まるのだ。これが説明的なパートでは特に度々使われる。これは初めての感触だった。独特の「間(ま)」が生じて、なんとものどかな印象を受ける。最初こそ戸惑ったが、それがなんとも心地よい。




何よりこの物語全体が醸し出す「楽しい」雰囲気に、とてもよくフィットしているのだ。文中「この物語が年月と共に進むにつれ、両家の関係がどのように、田沼意次や佐々木三冬、そして秋山小兵衛父子へ影響をもたらすことになるか、…筆者も実は、たのしみにしているのである。」とある。この作品はその後永く続く「剣客商売」シリーズの第一作になるわけだが、既に一作目にしてそのことをはっきりと認識した、売れっ子作家の強烈な自負を背景にしてこそ可能な決めゼリフに他ならない。解説にも「これはもう素晴らしい筆力であるが、先生ご自身も(中略)書くのを十分に楽しまれたのではないか」と書かれている。もちろん物語中、斬った張ったはふんだんに盛り込まれ、感情移入させた登場人物の死ぬ場面もあるわけだが、全体に漂う雰囲気は何しろ飄々とした楽しさ、面白さだ。




泰平の世、己の剣術を自分の中の一番の能力とする者は、戦国時代のように傭兵として日本中を渡り歩く「いくさ人」として身を立てることはもはやできない。「兵法者」「武芸者」としてビジネスの能力にも長けていなくてはならない。早々に隠居し、裏ではフィクサーのようなことをして、悠悠自適な生活を送る主人公の父親・秋山小兵衛。持ち込まれる問題や事件を、幅広い人脈と未だ衰えない剣術・身のこなしで鮮やかに解決していくのが痛快だ。しかも必ずしも「天に代わってオシオキよ!」ではなく、私怨をする立場、される立場それぞれに加勢したり、礼金をためらうことなく受け取ったりという人間臭いところも、むしろ好感がもてて快かった。そしてその息子の大治郎、剣術も確かで、思慮深くもあるのだが、まだ若く無欲な彼を、表ではそしらぬフリをしながらも、ハラハラしながら見守る父親としての小兵衛の姿も微笑ましく楽しい。また女武芸者の佐々木三冬、政治の実権を掌握している田沼意次の隠し子という設定も面白い。オススメ下さった美冬さんのハンドルネームの由来でもあるとのこと。がっつかずにはおれようか。そしてその佐々木三冬がらみで、時の人田沼意次とも関わりを持つに至る。これは最近ドラマ化された「JIN」のように、歴史上の登場人物に主人公が絡んでいくワクワクした楽しさもある。また大治郎と三冬との嬉し恥ずかしな行く末もギュンギュン気になる。どこをさがしてもハズレのない、極上のエンタメ小説なのであった。




そしてこの本の解説、翻訳家の常盤新平が書いている。いまは休刊となってしまった雑誌「ダカーポ」で、今のブログのハシリみたいなのを連載されていた。その訳書・著書は拝見したことがないのだが、このヒトの影響で、シングルモルトのウィスキーに手を出したこともあったり、毎回読むのを楽しみにしていた方だ。これは読後の満足感、今回も倍増やがな、とモリモリ読み進んでいると、何やらこの解説、この作品だけでなく、シリーズ全体のネタバレ満載のご様子。それでも好きなヒトの文章だからと、恐る恐るそのまま読んでいたら…あった。あってしまった。嬉し恥ずかしの結末、バッチリ。この先「キミたち、どうなのよ!?どないやねん!?コノコノ~!!(アホ)」と読もうと思っておったのに…無念。常盤センセイの作品を一冊も読まなかった天罰か。しかしながら、シリーズの続きを読みたいというモチベーションはいささかも変わらない。美冬さんに感謝。




2月20日(日)

「剣客商売」読了。数日前に読み始めたときは、通勤の細切れの時間に少しずつだったのでなかなか読み進められなかったのだが、家でがっつり読み始めると、あまりにオモロくて貪るように読んだため、何書くか全然考えてなかった。とにかくこの前使い始めた読書メーター、登録しただけで全然本を読んでいなかったのでつまらない思いをしていたのだが、やっとこ一冊読んだわけだからと、いそいそと入力。すると「読み終わったみんなとコメント」の欄に、2月18日付けで「藤田まこと氏追悼で再読」とのコメント。…え!?そう言えば今朝、サンデーモーニングで藤田まことが亡くなったとか言ってたけど…ともどかしい思いでwikiで「藤田まこと」を調べると、4日前の2月17日(水)に76歳で亡くなられている。まさに僕が「剣客商売」を読んでいたさなかだ。そしてテレビドラマの「剣客商売」、1998年から2004年にかけてなんと50話あまり、そしてその後もスペシャルドラマとして、藤田まこと主演で放送されていたというではないか。…全く知らなかった。僕がほっとんどテレビを見なかった頃だ。「必殺仕事人」のイメージが強いし、「はぐれ刑事純情派」はチラと見たことがあったが、これは初耳だった。さぞかし面白かっただろうなと思う。藤田まことと言えば、子供の頃家でAMラジオから流れてくる「当たり前田のクラッカーでお馴染みの藤田まことです」は耳タコでうんざりだったが、コメディー出身の人が演じる燻し銀的な役は、とても味があって見応えがあるように思う。「踊る大捜査線」のいかりや長介もそうだし、関西ローカルでは「部長刑事」という長寿番組で、それこそ藤田まこととかつて「てなもんや三度笠」で共演し、その後「カバ」の愛称で呼ばれて吉本新喜劇の座長も務めた原哲男というおじさんもいい味を出していた。これらはまさに「おいしい役」ではあるのだが、例えばかつて高度成長期に、第三次産業のサービス業を区別・揶揄する意味で第二次産業の製造業が自身を「正業」と呼んでいたように、お笑いブーム全盛の今はともかく、かつては芸能界での端役であった「コメディアン」にとって、花形である「俳優」はまさに一種の憧れで、自分がそれを仰せつかるのであれば、その思い入れ、力の入れ方が人一倍だったろうし、実際藤田まことの真面目な役作りへの姿勢はたいへんなものだったそうで、「仕事人」シリーズにおいての話題作り丸出しの最近のちゃらちゃらしたジャニーズの投入も、藤田は面白く思っていないのではないかと、本人は何も言っていないにもかかわらず、周囲がとても気を遣ったのだそうだ。ジャンルは違うが、それぞれ最初はコミックバンドであったサザンが「いとしのエリー」で、米米倶楽部が「浪漫飛行」で世間をあっと言わせ、そして同時に強力な支持を得、その後人の心を打つ楽曲づくりへと純化して行ったと似ているようにも思う。しかしひとつ確実なのは、いずれの場合でも、誰でもコメディアンやコミックバンドが路線変更すればウケるというわけではないはずで、彼らに十分な才能があったからこそ、ということだ。

 夜のテレビで、NHKが藤田まことの追悼番組として、彼の親友で、先に亡くなったムード歌謡の歌手のフランク永井を偲び、自身闘病中の身体をおしてフランク長井の持ち歌を藤田ひとりが歌った番組が再放送されていた。曲の合間に、大阪の劇場などの思い出の地で、フランク永井の思い出をゆったりとした大阪弁でしみじみと語るその姿は、俳優でもコメディアンでもない、ひとりの裸の男、真人間そのものといった感じを深く受けた。そしてそのことで逆に、ああこれならドラマ「剣客商売」も、見応え十分であったに違いない、と思ったことだった。彼の死は悔やまれてならないが、この他にはないというタイミングの思わぬ形でそれに立ち会う気持ちになれたのは、僕にとって貴重な経験だった。極めつけのにわかファンではあるが、藤田まことさんのご冥福を心よりお祈りいたします。

 そしてこのことの他にもうひとつ、今日はちとブルーというか、心配なことが僕にはあった。毎週土曜日に更新されるはずのわれらが御大、志水辰夫のブログが、今日の日曜になっても未だ更新されていないのだ。ちょうど1年ほど前にも更新が滞ったことがあったのだが、そのときはなんと、京都の里山を歩いているときに、斜面を滑り落ちて大怪我をされていたのだ。数週間後にようやく復活したブログでは、骨折した状態で、なんとかキーボードが叩ける状態になったから、とのことで、あなたひとりのカラダじゃないのよ、と安堵しつつも肝を冷やしたものだった。その後は回復され、最近では最新のウォークマンで音楽を聴きながら歩く楽しさに目覚め、お住まいの京都の鴨川沿いのウォーキングも頻繁にされているとのことだったが、なんせ御大も御年とって73歳、ちゃんちゃんこなんか重ね着しなくてはならないご高齢なのだ。76歳で亡くなられたという藤田まことさんのこともあり、してはならぬと思いつつも、いやでも悪いほうの想像をしてしまう。大丈夫なんかいな、御大。




2月21日(月)

仕事後、帰宅・シャワー・メシ・爆睡。




2月22日(火)

帰宅時におおそうだ、とわれらが御大のブログをチェックしてみると、なんと21日(月)付けでブログが更新されているではないか!!「スタッフからのお知らせ」とかは勘弁してくれよ…、などど不謹慎ながらも祈るような気持ちで記事を開くと、なんと記事の内容は、ありていに言えば「飲んだくれていた」のだ。ヘナヘナ。

 旧友の佐々木譲の直木賞受賞パーティーに駆けつけていたというのだ。「ふだん業界のことはあまり書かないようにしているのだが」と断った上で、大勢の人がパーティーに来ていた中で、その二次会以降、お開きまで固定だったメンバーが記されていた。その顔ぶれが圧巻。佐々木譲、船戸与一、北方謙三、大沢在昌、西木正明、逢坂剛、藤田宜永、森詠、宮部みゆき、そしてわれらが御大。「ほとんどのものが、30年以上のつき合いになるのだ。いちばんあとから加わってきた宮部みゆきでもう20余年になる。お互いまだ、右のものとも左のものともわからなかったひよこの時代から、遠慮会釈なく悪口を言い合ってきた戦友である」つって、ひえ~!!とチビりそうになった。いやちょっとだけチビったかも。たしかに新宿などで作家仲間とよく遊んでいたとは言っていたし、船戸与一や北方謙三などとはこのミス1位を「おれが獲る」「いや今年はオレが」的なやりとりがあったとも書かれていたが、実際にこうして顔を合わせたと聞かされると、やはりビビらされるものがある。「あの北方を評して大沢が『だれだれさん(某作家)はものになると思うけど、北方はそのうち消えるでしょう』と公言した……といったエピソードがふんだんにある仲間なのだ。」ってオイ。そこまで書かんでも。まあ無断で引用しまくっている僕も僕なのだが。しかし大沢在昌がホストを務めた対談集「エンパラ」でも、われらが御大シミタツ、大沢在昌を漢語読みの「ザイショウ」呼ばわりしていた。文壇広しと言えども、愛称とはいえ、今や推理作家協会の理事長をしたり、文学賞の選考委員を歴任する大沢をザイショウと呼べる人間はもはやそう多くはあるまい。何しろ互いに売れない時代、「A級(永久)初版作家」と呼び合っていた仲なのだ。「『これだけの顔触れのそろうことが、この先もまだあるだろうか』ということばが何回も出た」とのこと、ほんとにそうだと思う。いまどきどこの誰が頼んでも、これだけのビッグネームに動員を掛けられることなんて、そうそうない。お元気そうなことが何よりうれしかったし、とびきりの話も知ることができたのだから、こちらの若干暗澹としていた気持ちも吹っ飛んでしまった。




2月23日(水)~26日(金)

記憶なし




2月27日(土)

今週は御大、更新されているだろうとブログをチェックすると、果たしてきっちり更新されている。これまでと相変わらずの、京都は暑いだの寒いだの、どこへ出かけても年寄りばかりでうんざりする(!!)だのと相変わらずでホッとする。そして今年も花粉症がハゲしく発症したとのこと。しかし花粉症、アレルギーなのだから、免疫の過剰反応なわけだが、普通なら高齢になれば免疫機能が低下するため、その症状も緩やかになるのが普通だ。ウイルスに対する免疫の反応である風邪の時の高熱も、高齢の方にはあまり見られず、ぐずぐずと治らない状態が続くのと同様だ。だからして花粉症の症状が強く出るというのは、免疫の向かうベクトルはいかんせん間違っておるけれども、免疫機能それ自体はバッチリ働いているというたいへん喜ばしい証拠なのだ。これはやはり僕がヨイヨイのジジイになるまで、われらが御大の作品を楽しめそうだ。それに先週のブログ記事、あんなすごい話が読めるんだったら、更新が多少遅れるのもやぶさかではない。つって、僕はいったい何様なんだろうか。てめえが早く更新しろっつう話だ。




長々とすみません。最後まで読んで頂き、ありがとうございました。(了)

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