一台の名もなき人力車があった。

 

その人力車は、10年以上前、伊勢に打ち捨てられていたものだった。

 

これは大変なことだ!と雨晒しになっていたその人力車を自社の車庫に持ち帰り、保管しつつ、できる限りの修繕をしていた方がいた。

 

だが、所詮は素人。職人の手仕事で作られる人力車を元通りにすることは困難を極めた。

 

私、山田祥平は、人力車をひいての日本一周の旅を終え、伊勢での暮らしを始めていると、僕のことをよく知る方が、その人力車のことを教えてくれた。

 

訪ねてみれば、その人力車には屋号を示す木札がついていた。

 

 

”力舎”とある。

 

「もしや?」と思っていた予感は的中した。

 

実は、日本一周の旅の途中で、愛媛に立ち寄った際、道後温泉で人力車をしている方々にお会いし、そのとき、現代表の先代が伊勢から撤退したときに行方不明になっている人力車がある。

もし、伊勢でそういう情報があったら教えてくれないか?といわれていたのだ。

 

管理していた方に、その旨を正直にお伝えし、また道後の人力車の方にもその旨をお伝えした。

道後の力舎の代表の方は、ぜひその人力車をみせてほしいとわざわざ愛媛から訪ねてきてくれた。

そして、確認した上で、こうおっしゃった。

「これは確かに私たちの先代が使っていたものです。ですが、もう10年以上前の話。今さら返してくれというわけにはいきません。」

また、管理している方はこう答えた。

「私がもっていても、これを使いこなすことはできず持て余してしまうだけです。もしよかったら山田さんが伊勢のためにこれを役立ててもらえませんか?」

 

僕の喜びようが想像できますか?

 

しかも、その人力車はまだとても走れるような状態ではなかったのですが、ボロボロの人力車が二台あり、二台合わせればなんとか走れる状態にはできるだろうと、力舎の方が、めちゃくちゃ丁寧に人力車の構造や修理の仕方などを教えてくれたのだ。

 

そうして、なんとか形になり、近所に奇跡的に、全国でもトップクラスの凄腕の自転車屋さんと、神宮にも鋤や鍬を納めているような金物屋さんがいたおかげで、ど素人の僕がなんとか走れる状態にまでもっていくことができた。

 

 

自分で走れる状態にまでした人力車、どんどん愛着が湧いていく。

 

 

そんなとき、夢をテーマに富士山の頂上で毎年旧暦の七夕の日に祭りをしている大志という友人から誘いを受けた。

 

「伊勢から富士まで歩きたい。その道を伊勢夢街道と名付けたい。一緒に歩いてほしい」と。

 

彼の誘いは、魂からいつもワクワクさせてくれる。

 

そして、僕は人力車をひいて歩くことを決意する。

 

2014年のことである。

 

そのとき、いきなり名前が閃いた。

愛勇夢(あゆむ)。

 

5年以上前に思いつき、どこかにつけたかったが、それにふさわしいものに出会わなかった言葉。

それが、ここしかない!って感覚で人力車に名付けられた。

 

その話を東京で再会した書道家の遠藤夕幻にしたところ、書きにいくよ!と無償で伊勢まできてくれた。

お互いの日にちがあったのが、なんと、7月7日。七夕である。

必然のタイミングに伊勢で名前を入れることになった。

 

外宮・内宮で着物を着て正式参拝をし、拍手の音がぴたりと重なり、お互いの音がまったく聞こえないという現象が起こるほど、息がぴたりとあった二人だった。

 

そして、書き込まれていく愛勇夢という文字。

 

命が宿った瞬間だった。

 

 

 

 


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その後、場を室内に移し、紙にも文字をのせた。

すごい集中力だった。

 

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紙にも書き記されたその文字は神々しい輝きを放っていた。

 

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名が入れられた愛勇夢に乗ってもらった第1号のお客さんは、のちの夕幻の奥さんになる鴨下美智子さんだった。

縁とは不思議なものである。

 

 

 

それから数日後、この愛勇夢は夢賃乗車に使おう!と決め、夢を語れば無賃で乗れるという夢が賃金となる夢賃乗車を実行した。

 

そのときに乗ってくれたのが、この二人。

 

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めちゃくちゃハッピーなお客さんだった。

 

そのときに書いてもらった夢がこれ!

 

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そして、その具体的な中身を人力車に乗りながら語ってもらった。

 

 

そのときに話した夢が数ヶ月のうちにすべて叶ってしまったという嬉しい報告をもらった。

 

 

彼女が書いてくれた一編の文章が素晴らしいので紹介したい。

 

 

夢心地人力車〜愛勇夢(あゆむ)〜

 

地元である伊勢に帰ったばかりの私は、事の流れから伊勢の風の神力車に乗ることになった。あれから、5ヶ月ほど経つ。 これから本格的に夏を迎えようとしている頃。「愛勇夢(あゆむ)」と名付けられた神力車は、たくさんの期待と不安と迷いを丸ごと乗せて、ゆっくりと動き出した。 まさか地元で人力車に乗るなんて想像もしていなかった。隣には、出会ったばかりで意気投合した女性が、あまりにも自然に座っている。

夜の伊勢は、昼間の賑わいとはうってかわり、静けさと暗さが同居している。この先に神様が佇んでいるのだなぁという厳かさを保って、体がふっと軽くなる。

風を感じながら、表情を変えていく見慣れた町並みを新鮮な気持ちで見ていたら、祥平さんがゆっくりと歩みを止めた。

すっと月を指して、「今夜はよく見えますねぇ」と言った。

もうすぐ七夕。 月の光が、空を優しく照らす。

織姫と彦星はどうやって出逢うと思う?? 月に乗って渡るんだよ。 ロマンチックだよねぇ。

夜空を眺めながら、そんな会話が続いた。

そして、私たちが夢を語ることになった。

夢。 やりたいこと。

些細なやりとりをしながら、 ぐちゃぐちゃに絡まった心の中が、 言葉になってこぼれてきた。

今思えば、その時、心が動き出したのかもしれない。 具体的な目標が定まるわけでもなく、一人でに進み出した私。

夢は必ず叶うんだよ。 方法なんて考えなくてもいい。 月に行きたい、行きたい、と思っていたら、 いつかちゃんと行けるのだから。

そんな言葉を残して、 私たちの心を開けたまま、 長くて短い神力車の旅は終わった。

あれから、 夢、夢、夢…と考える日が続いた。

5ヶ月経った今、 気づいたら、 たくさんのことが叶っていた。

私の努力によるのではなく、 風に乗って運ばれてきたように、 色んな出逢いに導かれて、 心の向くままに動いて。

そうして、気づいた。 風になって縁を紡ぐ神力車だったのだなぁと。

 

 

この文章に基づいてみっちーこと鴨下美智子さんが絵を書いてくれた。

 

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月を見ながら僕が語ったこと。

 

 

 

七夕というのはね、織姫と彦星が出会う日なんだよ。

 

二人の間にあるものは何かわかる?

 

天の川。

 

天の川を渡るには船がいる。

 

七夕は旧暦だと半月の少し手前になる。

 

この月の形、それが天を横切る小舟になる。

 

その船に乗って二人は一年に一度、出会えるんだ。

 

二人の愛ある夢が叶う日、それが七夕なんだよ

 

 

 

 

 

 

だから、二人の夢もきっと叶う。

 

叶うって決めればね。

 

 

 

 

 

かっこいいこと、言ったけど、実は、これは大志くんから聞いた話。

 

富士山の山頂に毎年夢を届け続けている男からの受け売り。

 

彼ほど夢を真剣にみつめている人はいない。

 

毎年旧暦の七夕にやる富士夢祭り。

 

感じるところがあればぜひ参加してみてほしい。

 

必ず、奇跡という感動体験が待っている。

 

そんな彼は下の写真で先頭を歩いている。

 

 

 

 

 

 

 

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この年、僕らは彼らと、伊勢から桑名まで一緒に歩いた。

人力車をひいて。

 

 

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七里の渡しにて、スワンボートに乗り込み、海を渡っていく彼らを見送った・・・

 

 

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