「ふぁ~……」
真理の口から大きなあくびが出た。
1日目のお昼用に、とお母さんが作ってくれたサンドイッチを食べた真理は、眠くなってしまった。
昼寝をしたい気分だったが、それよりも先にやることがある。
おばあちゃんとの約束を実行するのだ。
「よしっ!」
真理は勢いよくソファから立ち上がると、服についたパンくずをはらった。
そして、スカートのポケットから小さな鍵を取り出す。
鍵は、ずいぶん古いもののようで、にぶく金色に光っていた。
(一体どこの鍵なんだろう?)
真理は、鍵に合う鍵穴を探し始めた。
リビングから始めて、キッチン、洗面所、客間、おばあちゃんの部屋……と順々に見て回る。
鍵穴を見つけるたびに、息をひそめてそっと鍵を差しこんでみる。
しかし、鍵は一向に合わない。
おばあちゃんの部屋があやしい、とにらんでいた真理だったが、おばあちゃんの部屋を探しつくしても、それらしい鍵穴は見つからなかった。
「はぁ~あ」
思わずため息がこぼれる。
はじめのうちこそ、ワクワクドキドキしていた真理も、こう見つからなくては飽きてしまう。
(おばあちゃんも、ドコの鍵だかぐらい書いておいてくれればよかったのに……)
すっかりやる気をなくした真理は、ペタンと床に座りこんでしまった。
ひんやりした床が、何だかとっても気持ちいい。
(これじゃあまるで宝探しじゃない)
「宝探し……か」
真理が小さかったころ、おばあちゃんの家にくるたびに、宝探しごっこをしたものだった。
おばあちゃんの家は古い洋館で、いかにも宝物がかくれていそうに、小さい真理には思えた。
家中を走り回っては、気になるものをいろいろと見つけた。
見つけるたびに、おばあちゃんにじまんげに持っていったものだ。
おばあちゃんはうれしそうに「これはね……」と説明してくれた。
宝石箱にオルゴール、古いアルバム……。
ある時、小さな真理は、屋根裏で鍵のかかったボロボロの箱を見つけた。
真理はいつものように「鍵をあけて」とおばあちゃんにお願いした。
しかし、その時のおばあちゃんの反応はいつもとちがっていた。
箱のことを聞いたおばあちゃんは、驚いたように目を見開くと、そのままだまりこんでしまった。
真理がもう一度お願いすると、おばあちゃんは困ったように笑った。
そして「この箱の鍵をなくしてしまった」とつぶやいた。
しかし、真理はそんな言葉では納得せず、ダダをこねておばあちゃんを困らせた。
するとおばあちゃんは「いつか必ず箱の中を見せてあげるから」と約束して、ゆびきりをしてくれたのだった。
(きっと、あの箱の中にはスゴイ宝物が入ってるんだ)
小さな真理はそう思った。
(もしかして……)
真理はわれに返った。
(そうだ。きっとあの箱がそうなんだ!)
確信めいたものが真理の心にあった。
やる気をなくしていた体に力がわいてきた。
真理は立ち上がると、屋根裏に続くせまい階段を一気にかけのぼった。
そのままの勢いでドアを開ける。
屋根裏には、たくさんのものがホコリをかぶってごちゃごちゃと置かれていた。
しかし、真理はまっすぐ、迷うことなく部屋のすみに向かう。
何故か、体が場所を覚えていた。
ホコリをかぶったものをどかしていくと、見覚えのある箱が見つかった。
記憶にあるよりもずっとボロボロに見える。
けれど、間違いなくこの箱だ。
真理は息を整えると、そっと鍵穴に小さな鍵を差しこんだ。
そして、ゆっくり鍵を回す。
カチリ
小さな音が鳴る。
鍵が合ったのだ!