本日(5/17)の参議院本会議国会議事堂(荒れ)で、

精神保健福祉法案病院についての、

反対討論に登壇しました。ムキー

 

以下、質問原稿の全文です。

 

国会審議中継PCスマホはこちらからご覧いただけます。

http://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/index.php

 

 

 

 

精神保健及び精神障害者福祉に関する法律

 の一部を改正する法律案についての反対討論

 

民進党・新緑風会の川田龍平です。

会派を代表し、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の

一部を改正する法律案に関し、

反対の立場から討論を行います。

 

4月7日の本会議において、私は本法案について、

「相模原市の事件の原因を精神障害に転嫁し、

精神保健福祉法に犯罪対策としての「措置入院制度見直し」を入れるのは、

2つの理由でおかしい」と問題提起いたしました。

 

1つは、精神保健福祉法という法律自体の目的が、

精神障害者の福祉の増進であること。

よって犯罪対策をここに入れるべきではないこと。

2つ目は、やまゆり園事件と精神保健福祉法を結びつけることで、

精神障害を持つ当事者や、その家族の人権を守るという

本法の精神から逸脱した内容になっている事です。

 

あれからすでに1か月以上経ちましたが、

この間の厚生労働委員会での法案審査で、 

政府は問題を払拭するどころか、

肝心の法案の中味は変えずに、

関連資料の中の一部だけ修正して終わらせるなど、

前代未聞のやり方をしてきました。

 

こうした姿勢は、当事者の人権のみならず、

社会における法のあり方、

そして国会における適切な立法プロセスという意味でも、

大きく矛盾しています。 

 

森友学園問題における財務省の隠蔽体質、

理財局長答弁の不誠実さ、

さらには共謀罪審議における

法務大臣と刑事局長の二転三転する答弁。

本法案の審議における厚生労働省の国会対応は、

それらと同じくらい、ひどいものだったと言わざるをえません。

 

また、この法案の内容にも、

見過せない5つの問題点があります。

まず第一にこの内容は、当事者とその家族の意思を無視しています。

例えば、措置入院者の退院後支援計画の作成を議論する、

「精神障害者支援地域協議会」の個別ケース検討会議に、

何故当事者である患者本人と家族の参加が

必須とされていないのでしょうか?

 

障害者たちはこの国で、ずっと長い間、声をあげてきました。

歴史を振り返れば、彼らの訴えて来たことが何だったか

政府は、特に厚労省の皆さんは誰よりもよくご存知のはずです。

その最大のメッセージが何だか、もう忘れてしまったのでしょうか?

 

それは、「私たち抜きで私たちのことを決めないで欲しい」ということです。

障害者の権利と尊厳を守ることは、国連の障害者権利条約にも、

書いてあります。

しかしながら厚生労働省の概要資料には最初、

「本人・家族等の参加は必要に応じて」とありました。

 

この部分を指摘されると、大臣は急に

「本人や家族が参加するのは当然だ」などと答弁し、

概要資料からその「必要に応じて」という記載だけ削除し、

肝心の法案はまったく変えないという、

支離滅裂な対応をしたのです。

 

さらに委員会において、「相模原市障害者支援施設における

事件検証及び再発防止策検討チーム」や、

「これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会」

においても当事者からのヒアリングが

ろくにされていないことも明らかになっています。

 

検討会の構成員30名をみても、

当事者の方は2名しか入っていません。

私も立場上、当事者の方々や関係団体から、

常時沢山のご意見を頂きます。

 

しかしながら、本来、精神障害者の人たちの生の声を

誰よりも一番聞かなければならないのは、

国のしくみを作り、彼らの未来を左右する立場にいる、

厚生労働省だということを、認識しているのでしょうか?

 

私自身、当事者として経験して来たことですが、

法律は一度決まったら社会の仕組みが変わり、

本人やその家族はその中で、暮らしや人間関係や、人生が、

ずっと左右されてしまいます。

 

だから立法府にいる私たちには重い責任があり、

当事者の声に真剣に耳を傾け、

出来る限り誠実な姿勢で進めていかなければならない、

そういう立場にいるのではないでしょうか?

 

第二の問題は、法案に書かれた規定の多くが非常に不明瞭なことです。

例えば、「退院」という言葉ひとつとっても、

患者本人が住む地域に戻ることなのか、

それとも措置入院が解除されて、

医療保護入院や任意入院に移行することなのか?

これだけではどちらかわかりません。

 

精神障害者支援地域協議会というのも、

代表者会議のことなのか、個別ケース検討会議なのかがわからない上に、

どんな立場の委員で構成されるのかもわかりません。

このように、この法案からは、法の根幹に関わる箇所や、

精神障害者の人権に関わる多くの重要項目が抜け落ちているにも関わらず、

政府は疑問を払拭するどころか、

「それらは秋までに出すガイドラインで規定する」などと言って

先送りしようとしています。

これは立法府としては、極めて不誠実だと言わざるを得ません。

 

第三の問題は、精神障害者支援地域協議会に

警察が参加する目的が不明確であり、

個別ケース情報が警察に伝わる可能性があるということです。

厚労省は、警察が参加するのは代表者会議のみで、

個別ケース検討会議には原則参加しないといいながら、

そのあとにこう続けました。

 

「しかし例えば自殺リスクや応急救護を要する場合などには、

個別ケースに警察が参加する場合もある」。

しかし、実際に運用を始めると、果たして、

このようなケースに限定されるのか、疑わしいです。

 

厚労省も認識されているように、現在でも、

精神保健福祉法第23条において、

自傷・他害のおそれがある方を警察が通報する件数には

各自治体で大きくばらつきがあり、

その原因について明確ではなく、

今後実態調査を行うと答弁されました。

 

つまり、個別ケース検討会議についても、

各地域ごと、個別のケースごとに、

警察が犯罪防止の観点から警察が介入すべきと判断する自治体が

いくらでも拡大する危険があるのではないでしょうか。

 

参考人質疑でも、参考人からグレーゾーン事例の対応である

「確固たる信念をもって犯罪を企画する者への対応」についても、

頭の中で考えているだけの状態であり共謀罪以上に

本人の内心の問題に介入することを認め、

刑事司法の中で重大な問題を引き起こす懸念が示されました。

 

自傷のおそれがあって、措置入院となり、

その後措置解除となった方が、

その後も警察の監視下に置かれるということが

どれだけの心理的負担を与えるか、

容易に想像ができるのではないでしょうか。

 

第四の問題は、本法案が、

障害者権利条約第14条が規定する、

障害を理由とした人身の自由の剥奪の禁止に違反する、

非自発的入院について、何の見直しも行われていないことです。

 

2013年に「精神保健福祉法」が改正された時も

私はこの問題を提起し、

医療保護入院者退院後の地域生活への移行促進策は

課題として残されていた筈です。

なのに地域移行を促進するどころか、

本法案を読むと、家族等の意思表示がなくても、

市町村の長の同意さえあれば「医療保護入院」を可能にすると書かれていたり、

「措置入院者」にだけ退院後支援計画を作成させるなど、

明らかに矛盾しています。

  

そして第五の問題は、これも2013年の改正時にも指摘したことですが、

非自発的入院である以上、不可欠であるはずの、

本人の意思を尊重するための権利擁護の制度が、

再び見送られたことです。

 

実は本法案にはひとつ、

わたくしが非常に高く評価する箇所があります。

「国及び地方公共団体の義務として、

精神障害者の人権尊重に十分配慮しなければならないこと」

という一文です。これは冒頭で申し上げた、

国連の障害者権利条約の精神に沿う、

非常に重要な、この法律の核になる、

絶対に曲げてはならない部分だからです。

 

しかしながら今申し上げましたように、

本法案の提出に至る経緯、本法案の内容

そしてこれまでの審議における政府の不誠実な姿勢、

どれをみてもこの、「精神障害者の人権を尊重する」という

法案の精神から、大きく乖離していると言わざるを得ません。

 

国民は、言葉だけでは信頼してくれません。

本当にそう思っているのなら、

政府はまず、言葉と行動を一致させて下さい。

 

従って、精神保健福祉法本来の精神に矛盾するその内容もさることながら、

法案審議過程そのものに問題がある本法案は、

立法府の一員として、認める訳にはいきません。

 

断固として廃案にするべきであると申し上げ、

私の反対討論といたします。

以上