蒼い炎II と 白鳥

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フィギュアスケート、グランプリ・カナダが終わりました。
ファンになっている羽生結弦は銀メダルでしたね。
昨日のエキシビションで踊った「白鳥」はとても印象的でした。

前期2015/16、世界選手権のEXは「天と地のレクイエム」でした。
この季のEXでいつも踊っていたプログラムです。
災害の思いを込めたものでしたが、彼の辛さ、苦しさがあまりにも直接表現されていて、あまり好きではありませんでした。ひたむきさは分かるけど、だからそれはそれでいいんだけど、芸術作品になるのには、そこから昇華した、象徴性をもたないとなあ、と勝手なことを思っていたのです。
そうしたら、世界選手権の時はなんか、苦しみみたいなものを通り越した、普遍化したものを感じて、救われたように思いました。

2016世界選手権・EX  

大分前に下記の本「蒼い炎II」を読んでいるのですが、この中で最後の章に「天と地のレクイエム」を演じる時の心境の変化が語られています。
音楽を聴いたとたんに災害のことが思い返されて、練習で泣いてしまうほど辛かった。それが世界選手権の頃になると、段々自分の辛さを押し付けるんじゃなくて、「みんな好きなように解釈して」という気持ちになった。
「自分の中には『こういう意味もってやる』という芯があるんですよ。だけどそれを見た人がどういう背景を見てどういう心境になるかというのは、人それぞれの経験から導かれるわけだから、それはそれだと認められるきっかけになりました。」(蒼い炎II、p. 274)

これを読んで、納得がいきました。世界選手権のときの、あの一つ突き抜けたような彼の表情が。

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そして今回の「白鳥」
このテーマを、羽生君は随分前に滑っているんですね。

ホワイトレジェンド・24時間テレビ (5分頃から)

安倍奈々美さんの振り付けで、衣装も白鳥と黒鳥が混ざったようなところがありました。

そして今回の白鳥。
衣装がとても女性的。背中がほとんどウエストまで開いている。


cwbwo3rukaaowvbこれが似合うし、自分が女性的な要素があることを強調して、ゆうゆうと着てしまうところが彼らしい。

この白鳥、三回転ジャンプが一つしかない。あとは非常に優雅に柔らかく、美しく舞う。
後で読んだら、この曲はかの有名なタラソワから贈られたものだそうですね。

タラソワから贈られた白鳥

タラソワは羽生君がソチで優勝したときに、こき下ろした人。
こんなに転倒する選手にメダルを上げるべきでない、といった人です。
私はその頃羽生君のファンじゃなかったけれど、そこまで言うか、彼だって満足してないのに、と思いました。
でもあの時のことを後にブライアン・オーサーが書いているのを読むと、皆がコロコロ転倒したわけが分かります。

競技の種類に団体が入ったことから、ショートとフリーの間に休みがなく、ショートが終わってから長い記者会見があり、終わったのは既に夜中の1時を回る頃。それから宿舎に帰り、風呂を浴びて寝たのが3時ごろ。しかし、次の日はショート・トラックの競技が昼間はいっており、氷上練習は朝の10時から。朝食、準備体操などするので、あさ8時には起きなければならない。そして朝、練習をして、夜の本番まで長い休み時間。いよいよ6分間練習で凍りに乗ってみたら、朝とは全く違う感覚だった。昼間のショート・トラックのだめに、氷を固く調整してあったのだそうです。

これは、まるでピアニストがコンサート当日の朝、舞台にあったピアノで腕を慣らした後、昼間はポップコンサートがあって、ざわざわした空気が残っているところでコンサートをやるようなものでしょう。その上、いざ舞台に出てみたら、朝のピアノとは全く違うピアノが置いてあったら、奏者はどうするでしょうか。出演拒否してもいいくらいなものでしょう。
それがオリンピック。

あの時は2位になったパトリック・チャンでさえ、なのも言わなかったけど(かれははっきり物申すので有名です)、主催者はほんとうにひどいことをしたんですね。アスリートに対しても、また、遠くから高いチケットを買って来ている人たちにも(日本人が一杯いたと思います)。

選手はみんなきっと悔しかったでしょうね。
羽生君はソチの後、休まずに続けました。そして、腰が痛くなったり、捻挫したり、中国の選手と衝突したり、お腹の手術をしたり。
今期は左足の故障でほとんど滑ってないままの出演です。

タラソワ女史は先期からやっと羽生君を認めています。それもべた褒め。そしてこの歌の入った白鳥(ラブソングだそうです)を渡して、ぜひ滑って欲しいと言ったそうです。

そういうことを全部考えてみると、実にしんみりとした、美しいプログラムだと思いました。
オーサーさんのところで始めた時は、スケーティングに暴れ馬みたいなところがあって、コーチたちも困ったようです。
「これはもう、ソチまでに直すのは無理だから、彼の荒々しさを逆手にとったプログラムにしよう」ということで“パリの散歩道”が生まれたそうです。羽生君、コーチに「若者から男になれ」と言われて、相当戸惑ったようですね。一番の問題が多分気恥ずかしさを克服することだったでしょう。

そして次に挑戦したのが、クラシック。ショパンのバラードと和物「SEIMEI」。今期に入って、ショートはまたガラッと変えてプリンスの曲。フリーはまた日本人の作品で、私は「あ、これは東山魁夷の世界だ!」と思いました。




ぼーっと見てると非常に美しいのだけど、テクニックを知っている人が見ると、信じられないような難度の高いプロらしいですね。
これを今期数ヶ月かけて完成させるのでしょう。成功すれば、また世界最高点が取れるらしいです。
そうなるといいけど。

ファン、益々のめりこみます。






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