2005-11-25 01:48:28

作品のカラーコーディネート。

テーマ:
【誰か(本)】 

●著者 :宮部みゆき
●出版社:光文社(2005.8 発行)
●価格 :¥900


最近は時代ものやファンタジーなどがメインで
現代を舞台にした作品が少ない宮部さんの
久しぶりの現代ミステリー。

大財閥「今多コンツェルン」会長の娘婿である
杉村三郎は、ある日義父から妙な依頼を受ける。
会長の個人運転手を長年務めてきた梶田信夫が
自転車に轢き逃げされて命を落とし、
残された二人の娘が父親の想い出を本に
したがっているので、相談に乗って
やって欲しいというのだ。梶田の足跡を
たどり始めた三郎を不審な出来事が襲う…

宮部作品にしては珍しく、それほど大がかりな
設定や仕かけがあるわけでなく、
ほんとに些細な日常をとっかかりにしながら、
次第に登場人物の過去や関係が明らかになって
くるという展開だが、相変わらずうまい文章で、
グイグイと話に引き込んでいくところはさすが。

しかし、肝心のなぞ解きの部分が、どうも
うまくはまっていない印象を受けた。
何かこの部分だけが、色がそろったパズルの
中でちがう色であるような、物語全体のカラー
から浮いてしまっているように思えるのだ。
静かに、淡々と梶田の過去へと迫っていく
展開を追う読者は、そこにセピア調の
せつなさを伴った解答を期待していたのではないか。
しかし出てきた答えは、妙に生々しくケバい色を
したものだったという感じで、なんだか後味も悪い。

さりげない設定から始まり、徐々に期待が高まった
分、ちょっとガッカリしてしまった。


■個人的ハマリ度  ★★★(★5つが最高)
宮部 みゆき
誰か Somebody


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2005-11-21 02:42:15

超B級テイストを、超A級グレードでデコレート。

テーマ:映画
【宇宙戦争(映画)】

<2005年、アメリカ>
●監督/スティーヴン・スピルバーグ
●出演/トク・クルーズ、ダコタ・ファニング 他


いやー、予想していたとはいえ、
やっぱりこれは、バカ映画だった。
もっとも、単なるバカ映画でなく、
監督、俳優、映像、それぞれ超一流で固めた上で、
あえてB級に徹した、確信犯的なバカ映画だ。

アメリカ国内で、稲光が何度も地上にまで
達するという異変が起きていた。
ある日、港湾労働者レイの住む街で、
地底から突然、巨大な異星人が姿を現す。
レイは別れた妻から預った子供たちとともに
必死に逃げるが、異星人は街を破壊し尽くし、
レイらに迫り来る…

前半の異星人の出現から、パニックになった
人々がなす術もなく、ビームによって次々に
殺戮されていく様子は、さすがに息を飲む迫力。
このあたりの得体の知れない恐怖を描かせたら
スピルバーグが天下一品なのは、ジョーズや激突
時代からの折り紙付きだ。

しかし異星人のあのデザインはどうなんだろ?
映画の展開を考えると、具体的に姿を見せざるを
得ない以上、なんらかのカタチを与える必要が
あるのだろうが、なんかオマヌケな印象で、
怖いというよりも、笑ってしまう。
それにガンガン地球を破壊しまくっていると
思ったら、なんだか妙に神経質な面もあったり…
まあこのあたり、突っ込み出したらキリがないので
やめておこう。

しかしこの監督は、相変わらず人間ドラマを描く
のが苦手(というか興味がない?)だなあ。
家族の愛とか絆を宣伝文句に使ってたけど、
そっちはあくまで、ほんのおまけに過ぎない。
スピルバーグに言わせれば、そんなものを
見る映画じゃないでしょってところだろうが。
なにわともあれ、一見の価値はありと言っておこう。
いや、一回見れば十分って意味で。(笑)


■個人的ハマリ度 ★★★(★5つが最高)
パラマウント・ホーム・エンタテインメント・ジャパン
宇宙戦争


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2005-11-18 03:29:28

カリブ海ふたりぼっち。

テーマ:映画
【オープン・ウォーター(映画)】

<2003年、アメリカ>
●監督/クリス・ケンティス
●出演/ブランチャード・ライアン、ダニエル・トラヴィス 他


もしサメの泳ぐ大海原に取り残されてしまったら…
これは、そんな考えただけでゾッとする、
実際に起こった出来事を映画化した作品だ。

カリブ海での観光ダイビングを楽しんでいた
夫婦が海上に上がると、そこに待っている
はずの船の姿はどこにもなかった。
実は、船のスタッフがダイバーの人数を
数えまちがえ、もう引き上げていたのだ。
いくら待っても、船は戻ってこない。
通りかかる別の船に必死でサインを送っても
気づいてもらえない。
やがて足下を、いくつものサメの影が
回りはじめる。
太陽が沈み、周囲が闇に覆われて…

およそ考えられる「絶望的な状況」の中でも
これはかなり上位に入るのでないか。
最初は楽観的だったふたりだが、自分たち
が置かれている状況を理解するに到り、
嘆き、怒り、互いに責任を押し付けあう。
実際、こんなことになれば、自分も同じことを
するだろうなと思わずにいられないのは、
やはりこれが事実に基づいているという
リアリティのせいだろうか。

結末は見てのお楽しみだが、
メイキングを見て驚いたのは、撮影には
本物のサメが使われ、スタントなしで
役者が実際にサメと共演していることだ。
文字通り命がけの撮影。
役者魂の成せる技と言えばそれまでだが、
自分だったら絶対お断りだ。(笑)
シーンのほとんどが海、
出演者も、ほぼふたりという、
シンプルが故に難しい設定を
一気に見せる演出もなかなかのもの。


■個人的ハマリ度 ★★★★(★5つが最高)
ポニーキャニオン
オープン・ウォーター


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2005-11-15 18:05:13

渾身の一作の、裏にあるもの。

テーマ:
【鬼子(本)】 

●著者 :新堂冬樹
●出版社:幻冬舎文庫(2003.4 発行)
●価格 :¥600(上巻)、¥560(下巻)


新堂作品はいつ読んでも、人間の奥底にうごめく
エゴや嫉妬、怒りなどを余すことなく描いていて、
読み終わると、どっと疲れが出るのだが、
それでも一度読みはじめると、途中でやめられない
麻薬のような魅力がある。

本作の主人公は、売れない純文学作家の袴田勇二。
彼はここのところ、息子の浩の家庭内暴力に
悩んでいた。妻の君江までがなぜか冷たい態度を
取る。そして娘の詩織が浩の不良仲間に陵辱される
にいたり、完全に家庭は崩壊する。
途方にくれた袴田に近づいた編集者の芝野は、
ある提案を持ちかける。家庭崩壊のありのままを
暴露した作品「鬼子」の執筆を…。

主人公が小説家ということもあってか、
いつにもまして、その心理描写には鬼気迫る
リアリティを感じる。
主人公の追い込み方もすごいが、それにも
まして編集者の芝野のキャラがえぐい。
文庫の解説の人が、この本を編集者から
渡された時に、「くれぐれも言っておきますが
これはフィクションですから」と言われたと
書いているが、まったくこんな編集者が実際に
いたらと考えると、冷や汗が出てくる。
とはいえ、血眼になってベストセラーを求める
出版業界を考えれば、決してフィクションの
世界でないかも、という思いもちらっと浮かぶ。

物語は袴田を巡る意外な真実が明らかになり、
さらに衝撃のラストを迎える。
このあたり、いささか強引な気もするが、
もう勢いで読まされるという感じで、
これもありかなと思えてしまう。

最近は感動系の作品まで、その幅を広げている
新堂氏だが、ここまで極限のエゴを
描けるということは、その対極の愛をも
描けるということなのだろう。
少々刺激的な読書体験をしたい方は
一度お試しを。


■個人的ハマリ度  ★★★★(★5つが最高)
新堂 冬樹
鬼子〈上〉
新堂 冬樹
鬼子〈下〉


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2005-11-12 00:29:17

愛はファンタジー?

テーマ:映画
【きみに読む物語(映画)】

<2004年、アメリカ>
●監督/ニック・カサヴェテス
●出演/ ライアン・ゴズリング、レイチェル・マクアダ 他


あの「マディソン郡の橋」を超える感動!と
やたら派手なうたい文句で宣伝していた
記憶がある。

ある施設で、記憶をなくした老女に、若者の
恋愛物語を読んで聞かせる老人がいた。
物語の舞台は1940年代、アリーとノアは
ひと夏の恋に落ちるが、身分の違いから
別れ、別々の道を歩むことになる…

結論から言うと、
映画の冒頭で「もしやこういう落ち?」と
予想した、まさにその通りの展開だったので、
いささかもの足りなさを感じた。
映画の大部分が、恋愛映画の定番を揃えました
という内容だけに、ここでもうひと捻り、
ワンサプライズがほしいところ。

若いふたりの恋愛場面も、瑞々しさにあふれ、
悪くは無いのだが、どこかで見たような
シーンの連続で、新鮮さはあまりない。
時代が違うといえばそうだが、
身分の違いと言われてもピンとこないしなあ。

ラストもきれいごとすぎなるような気がするが、
あるいは、この映画は一種のファンタジーとして
見るべきなのかもしれない。
年輩の人、それも夫婦一緒に見ると、
かなりツボにはまるかもしれないが。


■個人的ハマリ度 ★★★(★5つが最高)
ハピネット・ピクチャーズ
きみに読む物語 スタンダード・エディション

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2005-11-10 00:36:16

お好きな恐怖を、どうぞ。

テーマ:映画
【怪談新耳袋 劇場版(映画)】

<2004年、日本>
●監督/吉田秋生、鈴木浩介 他
●出演/ 竹中直人、坂井真紀 他


テレビの人気シリーズの劇場版。
実話をベースにしたオムニバスホラーだ。
1話10分ほどの話が計8つ。
さまざまにアプローチを変えた恐怖のカタチで
楽しませてくれる。

なかにはこれってギャグ?と思えるほど、
怖いというより、笑える作品もあるが、
恐怖と笑いは紙一重と言われることを思えば、
案外、この映画は、そのあたりの怖さの本質を
ついているのかもしれない。

また、ほとんど説明らしい説明もなく、
唐突にはじまり、唐突に終わる作品もあるが、
これもまた本来、恐怖なんてものは理屈で
説明できるものではないというメッセージの
ようにも感じる。
恐怖は「考える」のでなく「感じる」もの。

個人的に気にいったのは、
竹中直人主演の、深夜のビルの夜警を襲う
恐怖を描いた「夜警の報告書」。
得体の知れない声に名前を呼び続けられる
「約束」。
眠っている女の首を、夜な夜な絞めにくる
者の正体が衝撃的な「手袋」。

ホラー映画見たいけど、本格的なものは
ちょっと重いなあ、なんて時に
お手軽にホラーテイストに
ひたるには最適な一本かも。
夜中にひとりで見ていて、トイレに行けない
なんて心配はしなくてよさそうだし。(笑)


■個人的ハマリ度 ★★★(★5つが最高)
キングレコード
怪談新耳袋 劇場版


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2005-11-04 05:17:28

ジャパンバッシングから、ジャパンナッシングへ。

テーマ:
【小泉純一郎と日本の病理(本)】 

●著者 :藤原肇
●出版社:光文社(2005.10 発行)
●価格 :¥1,000


横組な上に、日本語の中に英単語も混ざった文章、
ペーパーバックス的なシンプルな製本、
過剰なつくりが目立つ昨今の出版物の中にあって、
かえって新鮮な印象を受ける本だ。

中身は、歴史的な衆院選の大勝を受け、まさに
今ピークにある、小泉純一郎という男が
何者なのか、これまで表には出てくることの
なかった驚きの事実をちりばめながら、
日本の明日に警鐘を鳴らすというものだ。

祖父から父、そして純一郎へと受け継がれる
小泉家の血脈。郵政民営化にかける決意の陰には
小泉家三代に渡る夢があった。
純一郎がロンドン大学へ留学した真の理由とは?
大手マスコミは決して報じない女性関係に親子関係。
陰の総理の異名をとる、秘書である実姉の存在。
田中真紀子更迭の真相。
酔っ払いが外交していると言われる、その実像とは?
など、かなり刺激的な内容が揃っている。

まあどんなものでも、突出し過ぎると、それに反する
力が出てくるのは世の常。ここに書かれていることが
100%事実とはもちろん言えないだろうが、
物事を多面的に見るための、ひとつのものさしとしては
非常に興味深いものであることは間違いない。

個人的にはいちばん印象に残ったフレーズは
「ジャパンナッシング」。
かつてバッシングの対象だった日本は、
もはやたたく意味もなく、世界から何の関心も
持たれない、からっぽな状態なのだと作者は語る。
そしてその空洞状態をさらに広げていこうと
しているのが、今の小泉政権なのだと。
経済、憲法、軍備、さまざまな面において、
重大な転換点にある日本のこれからを考察するには
格好の一冊だろう。


■個人的ハマリ度  ★★★★(★5つが最高)
藤原 肇
小泉純一郎と日本の病理 Koizumi's Zombie Politics

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2005-11-02 04:32:04

くもった心を照らす、赤い実。

テーマ:映画
【蛇イチゴ(映画)】

<2003年、日本>
●監督/西川美和
●出演/宮迫博之、つみきみほ 他


「誰も知らない」の是枝監督がプロデュースした
西川監督のデビュー作。
派手さはないが、しっかりと組み立てられた
ストーリーと、リアリティあふれる台詞で
最期まで退屈せずに楽しめた。

小学校教師の倫子の家は、父と母、それに痴呆症
の祖父の4人暮らし。同僚の教師と結婚も間近の
倫子は、平凡ながらもそれなりに幸せな暮らしを
送っていたが、ある日、祖父がなくなる。
そしてその葬儀で、父が実はリストラで会社を
首になった上に、多額の借金をつくっていたこと
を知る。その上、長く行方不明だった兄も現れて…

何も問題がなさそうに見えた家族が、ある事を
きっかけに、隠し持っていた本音をさらけだし、
次第に家庭が崩壊していくさまが、
ユーモアと生々しい会話で描かれる。
このあたりは、誰もが「あーわかるなあ」と
うなずきたくなる。
誰にも共通する、生活に根ざした視点が
活きているのだ。
それに、キャラひとりひとりが、
役者の好演もあって、実に魅力的。
詐欺師の兄を演じた宮迫の、ひょうひょうとした
立ちふるまいも、よくマッチしている。
つみきみほも久しぶりに見たが、
兄に対する、信じたいけど、信じられないという
微妙な心理を、うまく演じている。

タイトルにある「蛇イチゴ」が、兄と妹をつなぐ
キーになっているのだが、ラストにその答えとして
出てくる蛇イチゴの使い方も、なかなかしゃれていて、
あと味も非常にさわやかだ。
テーマはけっこうヘビーなのだが、
見た後は、心がふっと軽くなる佳作。


■個人的ハマリ度 ★★★★(★5つが最高)
バンダイビジュアル
蛇イチゴ


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