2016-03-16 04:24:46

中国、「企業整理」リストラで1000億元「問われる本気度」

テーマ:ブログ


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6.5%成長論の真贋度
ゾンビ企業の増殖過程

万年強気を通してきた中国政府が、ようやく限界を悟ったようである。気付いたら、膨大な過剰設備と過剰債務の重圧に、中国経済が呑み込まれ危機の淵に立っているからだ。これまでは、随分と「大言壮語」(ほら吹き)をしてきたものだ。米国経済を追い抜くなどと豪語してきた。今になってみれば、国民に対してさぞや気恥ずかしいであろう。

中国の李克強首相は3月5日、開幕した全国人民代表大会(全人代、国会に相当)の政府活動報告で、16年の経済成長率目標を実質値で6.5~7%にすると発表した。昨年の目標である7%前後から引き下げた。現在の中国経済にとって重要なことは、実質成長率ではない。名目成長率こそ死活的な問題である。今年の名目成長率は、ドル建てで4%割れ、人民元建てで6%割れが確実である。この低成長率で、どうやって莫大な企業債務を返済できるのか。過去10%台の名目成長率時代に借り入れた債務を今後、6%割れの厳冬期において返済しなければならない。中国経済は、まさに「巌頭に立つ」のだ。

6.5%成長論の真贋度
『ブルームバーグ』(3月5日付)は、次のように伝えた。

①「李首相は3月5日の政府活動報告で、国民1人当たりの所得を2010年比で倍増させるため、今後5年間は年平均で少なくとも6.5%の経済成長が必要だと強調した。同首相は、『われわれは現状を直視し、経済への下押し圧力に耐えるため的を絞った措置を講じるだろう』と説明する一方、『われわれは長期的な発展目標を考慮し、一部の政策手段を将来的に用いるための選択肢として残し、われわれの動きを戦略化し、力を結集しなければならない』と述べた」。

「釣瓶落とし」と言える中国経済の潜在成長力低下のなかで、今後5年間に年率6.5%以上の実質成長率を維持することは不可能である。世界の良心的なエコノミストは、一様に否定しているほど無謀な計画である。昨年、習近平氏が言ってしまったことだけに、今さら取り消しもできなくなっているのだろう。その理由は日々、積み上がっている過剰債務を整理する明確な手立てが示されないのだ。具体的には、国有企業の過剰債務=過剰設備の廃棄であるが、地方政府の抵抗もあって進まないのだ。

李首相は、「長期的な発展目標を考慮し、一部の政策手段を将来的に用いるための選択肢として残す」とも言っている。内容は不明だが、最後は財政支出で過剰債務を整理するという腹積もりを示唆したのだろうか。だが、本格化する高齢化社会到来による社会保障費増加を考えれば、国有企業の不始末を財政資金で賄うなど、口が裂けても言えない話しだ。ここは、不動産バブルで儲けた富裕層から特別課税で徴収、過剰債務の穴埋めに回すべきだろう。そうしない限り、国有企業の過剰債務は処理方法が見つからないのだ。

②「共産党指導部は、非生産的な国有資産の処理を加速する方針を掲げた。具体策は乏しかった。李首相は、政府が合併や再編を通じて非効率で非生産的な国有企業であるゾンビ企業に対処する一方、こうした過程で削減された従業員らに対して1000億元(約1兆7500億円)を投じる考えを表明した。金融面では、指導部が金利と人民元相場の自由化を進める方針も表明。中国は人民銀行(中央銀行)でフォワードガイダンス(注:事前説明)のコミュニケーションを高める計画で、政策が透明性を欠いているとの批判を意識した可能性がある」。

政府は、国有企業の過剰設備の廃棄処分について言及している。だが、具体策はない。前のパラグラフで指摘したように、不動産バブルで儲け、今なお転売目的で複数個の住宅を所有す富裕層に対して、特別課税を掛けて財源をつくるべきである。戦後日本でも、財政破綻の際、富裕層に対して特別財産税を徴収した経緯がある。中国でもそれを実行する必要があろう。

過剰設備処理に伴う従業員リストラ費用として、中央政府が1000億元(約1兆7500億円)を支出する計画だ。政府発表では、鉄鋼や石炭の産業で180万人のリストラを行う。1000億元がまるまる退職金になるわけでもあるまい。過剰債務処理にも使われるであろう。本格的な過剰設備の廃棄という「改革」には、ほど遠いと言わざるを得ない。最終的には600万人のリストラが必要とされている。中国経済にとっては、容易ならざる事態と言える。

金融面では、金利と人民元相場の自由化を進める方針も表明した。今年の10月にはIMFのSDRに昇格する。中国にとっては「慶事」だ。本心を言えば、このメリットだけを先取りし、資本規制の緩和や自由変動相場制への義務履行を避けたいに違いない。その場合、「SDR食い逃げ」の汚名を浴びるはずだ。早期の資本規制撤廃と自由変動相場制へ移行すれば、かなりの外貨流出が起こる。外貨準備高が急減して2兆ドル近辺になると、「人民元売り」が極点に達しよう。この「通貨危機」を計算に入れているだろうか。

中国政府は、李首相の発言とは裏腹に現在、必死で外貨流出を止めるべく、金融機関を取り締まっている。次の記事がそれを証明している。

「中国政府当局は、前例のない資金の国外流出に歯止めをかけるとともに、人民元離れを進める個人を取り締まり、事業目的で元をドルに交換する必要のある企業を窮地に追いやっている。中国の外国為替当局はここ数カ月、個人の海外ファンド購入を監視するシステムを新たに導入し、銀行に対して外貨取引を制限するよう要請している。国内および外資系金融機関の幹部によると、当局は銀行関係者を呼び出して指導を行ったり、外貨取引が急増した場合は質問したりしている。ひいては銀行も、海外へ投資する中国の起業家から海外へ支払いを行う会社に至るまで、さまざまな企業の外貨取引の監視を強化している」(『ウォール・ストリート・ジャーナル』3月9日付)。

前記の記事を読めば、李首相の全人代演説は、真っ赤な嘘になるのだ。一国首相の国会演説が嘘で固められているとなると、信用失墜は避けられない。ここまで、中国経済は追い詰められたという動かし難い証拠になる。私が折に触れ、中国を「泥船経済」と呼ぶ理由もここにある。

③「財政省は予算案で、16年の財政赤字が国内総生産(GDP)比で3%と、15年の同2.3%から拡大するとの見通しを示した。マネーサプライは13%増と、昨年の12%増から加速する見込み。政府は住宅ローン融資の拡大を求めることなどで不動産市場を活性化する政策を進める方針だ」。

16年の財政赤字は、対GDP比3%に拡大する。15年が2.3%であったから財政赤字が増える。国有企業のリストラ費用が嵩む結果であろう。マネーサプライ(M2)は、13%増を見込んでいる。15年末も前年比13.3%増であった。今年の年末で見てほぼ15年と同程度の増加率となろう。

15年末のマネーサプライ(M2)残高は、139兆2300億元である。これが13%増になるとすれば、18兆1000億元が増える計算である。今年の名目経済成長率を6%割れと見れば、これの2倍もの通貨供給になるからだ。これは、「桁外れの金融緩和」と言える。このM2はどこへ吸収されるだろうか。企業は過剰債務の「追い貸し」に使う危険性が高い。国有企業の不始末(過剰債務処理)は、広義の財政負担で帳消しにする以外方法はない。今年の財政赤字増加は、対GDP比で0.7%ポイント程度では、過剰債務処理など不可能である。

マッキンゼー国際研究所の推計では、昨年4~6月期現在、企業(金融を除く)部門の債務比率は125%である。仮に、今年の財政赤字増加分(対GDP比0.75%)をまるまる過剰債務処理につぎ込んだとしても、焼け石に水である。要するに、今年の財政赤字の増加程度では追いつけないのだ。これを見ただけでも、中国の過剰債務問題は解決が不可能なところへ追い込まれている。

ゾンビ企業の増殖過程
『ウォール・ストリート・ジャーナル』(3月4日付)は、「中国政府、試されるゾンビ企業退治の本気度」と題して、次のように報じた。

この記事では、20年前の国有企業の整理や民営化で2000万~3500万人の大規模なリストラを行った。それに比べると、今回のリストラは当面180万人程度とされている。最終的には600万人へ膨らむ。それでも今回のリストラが困難視されている理由は、リストラ後の転職先の困難、地方政府の抵抗、社会不安など前回の大リストラ時になかった困難が発生している。なかでも最大の困難は、不動産バブルで過剰債務にまみれてしまい、その処理が極めて困難になっていることだ。私は事実上、処理が困難と判断している。

④「中国指導部は20年前に、経済を再活性化させ、債務や過剰生産能力、利益減少に苦しむ国有企業を改革するには、再編や民営化、大量人員整理が必要であると決断した。その結果、1990年代後半に推定で2000万~3500万人が失業した。中国は現在再び同じ困難に見舞われており、3月5日開幕する全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で採択される予定の『第13次5カ年計画』(2016~20年)には、肥大化した国有企業の改革が盛り込まれる見通しだ。ただ政府は今回、これら『ゾンビ』工場の整理に当たっては、20年前よりも控えめなアプローチを取ろうとしている。中国は急激な成長鈍化に直面し、同国指導部や世界の市場は動揺しており、社会不安が起きる恐れが生まれているからだ」。

20年前の大リストラ時代は、純粋に中国経済の近代化には避けて通れないという認識が強かった。「眠れる獅子」と揶揄されてきた中国が、正当な評価を受けるには合理化に着手するというコンセンサスが出来上がっていたはずだ。国威発揚と結びついて、犠牲を甘受するという雰囲気があった。

現在は、所得格差が大きく開き貧富の差が広がりすぎている。リストラの被害者は、貧しい労働者階級である。社会全体が、リストラへの抵抗感を共有し始めている。不動産バブルで積み上がった過剰設備の処理負担が、一方的に無垢の労働者へ押しつけられている。その矛盾を鋭く衝く意見が出てきても不思議はない。この不満を取り除くには、富裕層への特別課税も不可避であろう。社会全体が過剰設備処理の痛みを分け合うことが必要になるはずだ。それが、「社会主義市場経済」の建前に沿っていると思われる。

⑤「中国政府は、今後5年間に鉄鋼・石炭業界で180万人を削減する計画を打ち出しており、その社会的な痛みを緩和するため、失業手当や職業訓練、配置転換向け『リストラ基金』に新たに1000億元(153億ドル)を充当する方針だ。しかしエコノミストの間では、それだけの人員削減で十分かどうかに疑問の声が上がっている。例えば、計画では2020年までに鉄鋼業界の生産能力を最大1億5000万トン削減する目標となっているが、中国鉄鋼協会によれば、鉄鋼の年間余剰生産量は現在約4億トンに達している。一部産業では余剰生産能力は最大35%に上ると推定している」。

中国は、手に負えないほどの過剰設備を作り出した。その責任はどこにあるのか。私は、「社会主義市場経済」というヌエ的な経済システムにあると思う。不思議なことに、こういう責任追及の議論が一切ないのだ。純粋な市場経済であれば、ここまで過剰な設備を作るはずがない。その意味でも、中国のバブル経済の破綻は空前絶後の規模に達していると判断する。日本の平成バブル崩壊の比ではない。中国のバブル崩壊を軽く見ていると、大変な見誤りが生じるに違いない。

⑥「格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは今週、金融や経済改革をめぐる懸念を理由に、中国の格付け見通しを『安定的』から『ネガティブ』に引き下げるとともに、25の金融機関と38の国有企業・子会社の格付け見通しも引き下げた」。

格付け会社ムーディーズは、中国の25の金融機関と38の国有企業・子会社の格付け見通しを引き下げた。これは当然の措置である。すでに、国家としての中国の格付けが、「安定的」から「ネガティブ」へ引き下げられたのは、余りにも遅すぎる決定と見る。中国政府の抱える債務の対GDP比は、昨年4~6月期で55%(マッキンゼー国際研究所調査)にもなっている。今後の国有企業の抱える債務増加を勘案すれば、一段と悪化するであろう。

⑦「15万社に上る国有企業の再編が1990年代後半に比べ遅れているのにはいくつかの理由がある。一つは、産業の専門化が進み労働者は新たな仕事を見つけるのが難しくなっていることがある。また、中国が世界貿易機関(WTO)に加盟し産業化が急速に進展した2000年前後に比べると、転職先は限られている。さらに、業界再編に対する抵抗もある。中国では、中央政府が改革を発表しても、雇用促進や税収増の方に関心を持つ地方政府がそれを妨害してきた歴史がある」。

15万社にも上がる国有企業は、あらかた経営不振である。リストラをすれば、労働者の失業が問題になる。20年前の大リストラでは未だ、職業が細分化されていなかったので転職は容易であった。現在、単純労働の比率が下がり一定の熟練度を必要としている。中国では、社内教育システムが存在しない。新設機械を導入しても、本格稼働する前の技術習得期間という概念がない。機械操作に不慣れなまま、本格操業に入るミスを重ねている。社員教育をしない理屈もこれと同じである。社会全体が、教育という理念に欠けるので、人間は使いっぱなし。機械も使いっぱなし、である。無駄を省き有効に使う習慣がないだけに、大規模な失業が発生すると、収拾がつかなくなるに違いない。再雇用訓練システムが存在しない社会だ。中国は、本当に「処置なし」のGDP世界2位の国家である。


(2016年3月16日)



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