2016-03-02 03:27:00

中国、「景気悪化」処方箋は民族主義扇動「官営メディアが忠誠」

テーマ:ブログ


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造船大手が倒産へ
米が中国に騙された

習近平国家主席は、いまや「習皇帝」の趣である。習王朝は、中国支配に盤石の構えだ。だが、最大の弱点は景気の悪化にある。国民の不満を逸らすには、ナショナリズムを扇動して国威発揚に訴えることである。かつての日本も、太平洋戦争中は「勝つまでは欲しがりません」の標語の下、一切の不満を封じられた。今の中国は、習皇帝自らが官営メディアに出向き「忠誠」を誓わせる異常さだ。

中国経済は、ここまで追い込まれてきた。国有企業の経営不振はもはや覆い隠すことも不可能になっている。2月17日、江蘇省の舜天船舶股份有限公司(以下、舜天船舶)が破産宣告を行った。株式市場へ上場している造船所が、破産したのは今回が初めて。中国では昨年から造船会社の倒産が相次いでいる。

造船大手が倒産へ
『大紀元』(2月22日付)は、次のように報じた。

①「中国船舶工業行業協会は、国内の造船業界が直面する問題として、受注難、納期遅れ、薄利、資金調達難の4つを挙げるとともに、15年の業界全体の受注量が前年比47.9%減に落ち込んだことも発表した。専門家は、中国造船企業が抱える最も大きな問題は、業界の急成長によってもたらされた生産過剰問題だと指摘している。中国は近年、世界シェアの4割を占める有数の造船国家に発展し、ピーク時には数千社もの造船会社が軒を連ねていた」。

中国造船業の苦境は、単なる造船業界だけの問題でないところに深刻さがある。鉄鋼、石炭、セメントなどの素材産業においても事情は全く同じである。ご多分に漏れず、すべての業界が過剰設備に苦しんでいる。その裏には、過剰債務が存在する。多額の債務を抱えた企業の倒産は、不良債権を生み出す。これが、中国金融システムの負担になって行くことは言うまでもない。今回の倒産劇は、2月末のG20会議を控えて、「経済改革に取り組んでいる」という中国政府のポーズとも言える。

今後の国有企業の整理淘汰で、約300万人の失業者が出ることは不可避となっている。この問題は、私の2月8日のブログで取り上げている。大量の失業者が放り出されると、社会不安から「流言」が飛び出す危険性も大きくなる。そこで、習皇帝は、先ずは官営メディアに「忠誠」を誓わせる行動に出てきた。太平洋戦争中、東條英機首相は早朝、新聞配達少年を激励している姿が新聞でデカデカと報じられた。時の独裁権力者は、先ずはメディアを有力な「協力者」に仕立て上げるのだ。

『朝鮮日報』(2月22日付)は、「習近平主席、『メディアは党の指針に従え』」と題して次のように伝えた。

②「中国の習近平国家主席は2月19日、人民日報、中国中央テレビ(CCTV)、新華社という共産党の3大メディアを急きょ訪問した。習主席による異例の訪問に対し、メディア関係者は『絶対忠誠』を誓った。習主席は、『分野を問わず、全てのメディアは党の指針に従わなければならない』と強調した。香港紙『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』などは、今回の訪問について、ソーシャルメディアなどに押されぎみの官営メディアに警告を発したものだと分析。『習皇帝』とも呼ばれる習主席が自身と党に対するいかなる批判も容認しない姿勢を示したと伝えた」。

この記事を読んでいかなる感想をお持ちだろうか。官製メディア関係者に「絶対忠誠」を誓わせるほど、中国の経済状態が悪化していることの証明であろう。自らの権力基盤が社会不安で脅かされる危惧の念を持ち始めているに違いない。「強い皇帝」であれば、そのような「忠誠の再確認」は必要あるまい。

③「習主席を迎えた各メディアの関係者は争うように忠誠を誓った。特に習主席が新聞聯播のキャスター席に座った際、スクリーンには『我々は党の後衛、絶対忠誠。いつでもあなたの視察を受ける準備ができている』という字幕が映し出された。習主席はメディア幹部や記者らに対し、『娯楽・社会・国際ニュースも国内ニュースと同様に“正しい方向”で編集されなければならない』『官営メディアは党の意向を絶対的に表現し、党の権威を守り、その指針に従わなければならない』と訓示した。習主席は昨年11月、中国人民解放軍の機関紙、解放軍報を訪問した際にも『絶対忠誠』の宣誓を受け、その後解放軍に対する大規模な組織改革案を発表した」。

各メディアの関係者は、争うように忠誠を誓ったという。なんと情けないマスコミ人であろう。ここまで堕ちたならば、もはや自らを「マスコミ人」と言わずに、「広告宣伝マン」と改称した方が世論を惑わさずに済む。中国人は、こうやって時の権力に迎合して来たのだろう。秦の始皇帝以来、2200年も独裁政権が続いている背景には、事なかれ主義の保身の術がDNAとなって伝わっているに違いない。

『ウォール・ストリート・ジャーナル』(1月13日付)は、「中国の景気悪化、処方箋はナショナリズム」と題して次のように伝えた。

中国政府が、国民の関心を海外に逸らす古典的な手法を用い始めたと指摘している。この記事は、南シナ海でミサイル8基が設置される前の時点で書かれたものだが、これを予測させる内容になっている。中国経済は、はっきりと減速過程に入っている。今後は歳月の経過とともに悪化が必至である。これをカムフラージュするには、ナショナリズムに訴えるしかない。冒頭に取り上げたように、習氏が官製メディアへの「絶対忠誠心」を誓わせる理由は、ナショナリズムを煽り立てる上に必要な「装置」であるからだ。ここまでくれば何人(なんびと)も、中国経済楽観論を捨てざるを得まい。

④「中国の金融市場が乱高下する中、中国政府は南シナ海の海上交通路にある岩礁の上に砂を積み上げて作った巨大な滑走路の運用を開始した。偶然にしろ、意図的にしろ、ファイアリークロス礁に3機のチャーター機が着陸したことは時宜を得たものだった。今回は戦闘機ではなかったが、欧米の安全保障専門家は中国が近くそこに戦闘機を派遣すると考えている。これは、中国の景気悪化を心配する人々の目を少なくとも一瞬はそらすことができた。滑走路に停止しているチャーター機の写真はインターネット上で拡散し、中国のネット利用者は、戦略上重要な領土を拡大するという愛国的な喜びに浸った」。

戦時中の日本が、「戦意高揚」を計るべく諸々の標語をつくった。「討ちてし止まん」(敵を討つまで止めない)、「銃後の守り」、「鬼畜米英」などだ。中国もしだいにこういう世論統一へと動いて行くのだろう。それが、「ナショナリズム」という得体の知れない俗物の中味である。中国国民は、共産党の「無謬論」という、あり得ない「嘘」に踊らされて行くのだろうが、その終着点はどこか。「勝利」はあり得ない。「敗北」のレベルはどの程度なのか。現状では、誰もそれを占える者はいない。そこに、不気味さを感じるのである。

⑤「多くの専門家が考えているように、中国経済が痛みを伴う緩やかな減速に向かうにつれて、ナショナリズムをあおるようなやり方でそこから注意をそらそうとする動きが増えると予想される。すべてが今回のように愛らしく見せかけたり、平穏無事に終わったりすることはないだろう。アジアのストラテジストらは、雇用喪失と労働争議の拡大を受けて中国指導部が海外で新たな冒険を始め、米国への攻勢を強めるとともに、中国の領土拡張の野望に不安を抱く周辺諸国を威嚇することを懸念している」。

中国は、南シナ海に軍事拠点を築いて、米国を筆頭にして日本などを威嚇する戦略を練っているであろう。それが、成功する確率は決して高くない。周辺国も一斉に軍備増強に走るし、潜水艦艦隊の編成によって中国の海軍力は無力化されるリスクが大だ。例えば、豪州は、12隻の次期鋭潜水艦を建艦する計画を立てた。多勢に無勢である。周辺国すべてを敵に回して勝てると見ているとしたら、完全な見誤りであろう。「孫子の兵法」を駆使しても、万に一つも勝機はない。愚かなことを考えているものだ。

⑥「中国は景気が減速している中でも、軍事力の増強を続けている。強いナショナリズムによって国民の不満の矛先を変えるのは中国指導部にとって実証済みの戦略だ。これは1989年の天安門事件の後に瀕死状態となった中国共産党を救った。現在、抱えている経済問題はそれほど脅威ではないものの、過去最大規模の資本流出に続く株価急落は、いずれ党の権威をむしばむ恐れがある。多くのエコノミストは、中国経済は6.5%と見込まれている今年の成長率目標を達成できない可能性が高いとみている。そうなれば、中国指導部の立場は弱くなるだろう。習近平国家主席は、中国を『豊かで強い』国にすることで権力を確立している。これまでのように富が行き渡らなれば、力を誇示する方向に傾くかもしれない」。

中国共産党は、高い経済成長率でその正統性を保ってきた。だが、いつまでも6%台の成長率を維持はできない。2年後には、5%台へ低下するだろう。今後は、年率0.5%ポイント幅での低下になる公算が大である。膨大な債務の処理負担と労働力低減が、経済成長率を引き下げる。日本経済の「失われた20年」の再現と見て間違いはなかろう。習近平氏は、中国を「豊かで強い」国に仕立てる方針だが不可能である。軍事力は「強く」なっても、国民生活は「豊か」にならい。このギャップが、国民の不満増大をもたらす。新たな危機の到来である。

⑦「歴史を見れば、中国の街中で国営メディアがあおる反日デモが、いかに早く反政府デモに変わり得るか分かる。経済が混乱し、社会の貧富の極端な二極化が進んでいる中で新たなデモが起きれば、都市部の反体制派が活気づくことは間違いない」。

一国の所得格差拡大は、経済成長率の低下につながる。これが、最新の世界における研究成果である。中国は、典型的な所得格差拡大国家である。先に、私が指摘したように、中国の経済成長率は、0.5%ポイント幅で低下する。その有力な動因の一つに、所得格差の拡大が加わる。所得再分配政策は、既得権益集団の「太子党」などに阻まれて実行不可能である。太子党を基盤にする習政権は、太子党の既得権益を守る故に政権基盤を弱体化させる。皮肉にも、毛沢東「矛盾論」の現代版である。

米が中国に騙された
『ウォール・ストリート・ジャーナル』(2月18日付)は、「中国、ミサイル配備は『約束違反』、米が批判」と題する記事を掲載した。

この記事は、習近平氏が訪米の際、米国に南シナ海を軍事化しないという約束を破った事実を取り上げている。オバマ大統領を「甘く」見た結果であろう。中国は、外国と交わした約束を往々にして破る例が多い。日本とは、東シナ海でのガス田共同開発契約の調印を棚上げして、勝手に中国単独で開発している。人民解放軍が国有企業と組んだ「仕業」である。こういう油断ならない国が中国である。口先では、大変に立派なことを言うものの、誠実味が一片もない国である。

⑧「南シナ海の領有権争いの対象になっている島で、中国の地対空ミサイル配備が判明したことで、米国と中国との緊張が高まっている。ケリー米国務長官は、戦略的に重要なこの域を『軍事化』しないとの約束を中国の習近平国家主席が反故(ほご)にしたとの見方を示唆した。ケリー長官は、『習主席はワシントンを訪問した時、オバマ大統領と一緒にローズガーデン(ホワイトハウスの庭)に立ち、中国は南シナ海での軍事力強化をするつもりはないと述べていた。しかし軍事化を示す事象が次から次へ毎日のように起きている。非常に懸念している』と語った。習氏の昨年9月の米国公式訪問後、米中間に漂っていた温かいムードは、今回のミサイル配備に伴う緊張により、完全に消えてしまったようだ」。

オバマ氏は、習氏に一杯食わされたのだ。「社会派」と言われるオバマ氏は、元首同士の約束だから、まさか破られるとは思っても見なかったのだろう。米大統領職とは、ただの「善人」だけでは務まらない典型例がこれだ。そうは言っても現在、共和党の大統領候補者の一人トランプ氏のように、粗略な振る舞いも困る。決然として、立つべき時には立たなければ米大統領の意味はない。同盟国の国益は、米大統領の決断に依存している部分が多いのだ。米大統領職は、同盟国の国益とも密接にからんでいる。ただ、争いごとを好まない。そういう「紳士」には、務まらない重責を担っている

⑨「米中いずれも譲歩する公算はほとんどない、とアナリストらは言う。中国の共産党指導部は、国家の防衛能力を根拠に自らの政治的正統性を主張してきた。一方、オバマ大統領は、カリフォルニア州に集まった東南アジア諸国の首脳に対し、南シナ海での中国の積極進出に対抗する諸国の取り組みを支援すると約束したばかりだ。米中双方とも公然と衝突しようとは全く思っていない。だが、その一方でそれぞれ自らの陣容を強化しており、そのことが外交的解決のための選択肢を狭め、危険な衝突が発生する可能性を高めているのも事実だ」。

オバマ氏は、中国が南シナ海で埋め立てを始めた時点で、米艦船を現地に派遣して牽制すべきであった。いまや、ミサイル基地をつくらせてしまった後で、「約束違反」と言っても後の祭りである。歯がゆいほど動きが「鈍い」のだ。この行動の鈍さの裏で、米国はなにを狙っていたのだろうか。

一つ考えられる理由は、米国が戦前の日本を追い詰めた時の手法再現である。日本軍が満州へ駐留して「満州国」をつくらせたあと、日本を経済封鎖(ABCDライン)に追い込んで結局は、日本に開戦させ自滅へ導いた手法である。これでは、余りにも人的犠牲が大きすぎる。とすれば、中国を徐々に経済封鎖へ追い込み、時間をかけて自滅を狙うのだろうか。TPP(環太平洋経済連携協定)では、参加条件から見て中国の加盟が不可能である。米国は、すでに中国の国力に「?」をつけている。GDPで米国を追い越せないと確信しているのだ。前記のシナリオ通りとすれば、中国は米国の「深慮遠謀」にはまり込んだと言える。

⑩「オーストラリア国立大学のローリ-・メドカフ教授(アジア太平洋安全保障問題)は「戦略的に出しているシグナルが、『しっぺ返しゲーム(ゲーム理論の一つで、相手が裏切ったらこちらも裏切るという戦略)』によって状況を悪化させるリスクは注視していく必要がある。とりわけ誤算の危険がある」と述べた」。

米中が、互いに「しっぺ返しゲーム」によって状況が悪化するリスクもある。だが、米中の軍事力の格差と、米国の同盟国側軍事力まで加えれば、さらに米中の軍事力は開く。中国が、「孫子の兵法」から見て負け戦を仕掛けてくることはない。負け戦覚悟で開戦すれば、中国共産党政権が瓦解する危険性を勘案するに違いない。逆に、勝ち戦と読めば奇襲攻撃を仕掛けてくる公算大だ。これを防ぐ意味でも、同盟国は協力しなければなるまい。中国は一筋縄でいかない相手だ。

(2016年3月2日)




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1 ■21世紀型の原理原則はいつ確立されるのか?

「サイロエフェクト」という本によれば、古い組織、あるいは超巨大な組織は全てサイロ(たこつぼ?)現象により見えているものも見えず、独断専行状態に落入り破綻するとあるが、今世界中がそういう状態にあると思う。日本も明治維新から100年以上経過し、新しい原理原則を確立しないと破綻しそうだ。中国は習近平主席が21世紀型のスーパーマンであれば効率よく改革が行われ,世界で最もはやくトップに立つことが出来るであろうが、2000年前とは違い複雑怪奇、とても一刀両断的解決策は見つかりそうにない。上記の本では、インサイダー&アウトサイダー的(文化人類学的)視点を持って更に他部門、他組織と連携しないと解決不能とある。

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