放置される相続登記②

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前回(放置される相続登記①)の続き

 

5 不動産登記法における実務上の問題

相続が発生し、その後その相続人が更に死亡し

相続が新たに発生する状態を数次相続と呼ぶが

この相続登記は、専門家においても

取り扱いが複雑となっているのが実情です。

 

不動産登記法上では、権利の得喪をその都度公示する手段として

中間省略する登記は原則認められておりません。

ところが、相続登記については

登記名義人が死亡すると相続を登記原因として

相続登記がなされるのが一般的です。

この相続登記をする前に相続人が死亡した場合は

新たな相続人が

「年月日何某相続、年月日相続」と

登記原因を書くことにより

中間省略的に相続登記が実務上認められる場合があります。

このことは、相続登記をする相続人にとって

相続登記費用と登録免許税の節税となりますが

登記名義人が死亡する度に

相続登記をした相続人の立場はどうなるのでしょうか。

 

ところが、同じ数次相続登記の場合で

死亡した相続人名義で一旦相続登記をする必要がある場合もあります。

 

相続登記をする申請人にとっても

1件で申請ができるのか

2件の相続登記を申請しなければならないのか

納める登録免許税は1件分で済むのか

2件分の2倍の登録免許税を納める必要があるかの

切実な問題ともなって参ります。

 

加えて、数次相続登記は複雑な手続きであるため

専門家に依頼しなければならず

支払う報酬もうなぎ上りで

費用面での捻出が困難として

相続登記を諦めざるを得ないと判断される場合もあります。

 

6 成年後見人制度上の問題点

平均寿命が延びると、相続をする側も高齢となります。

自ずと認知症等のリスクは高くもなり

認知症の相続人は遺産分割協議に加わることができないため

成年後見制度を利用した相続手続きを進めざるを得ません。

家庭裁判所における申立費用は少額で済むものの

申立手続きには戸籍謄本等のほか

財産目録や医師の診断書などの書類を整える必要があり

法的な理解と知識が必要となります。

専門家に依頼する報酬は

相続登記の依頼報酬程度が必要となってしまいます。

 

相続人の一人が認知症とは限らないのです。

昔は、兄弟姉妹の数が8人もいることは

決して珍しくもない時代であり

複数の相続人に成年後見人を必要とする場合も生じています。

 

遺産分割協議を成立させるためには

必要不可欠な制度でありますが

認知症の相続人について成年後見人申立手続きをした結果

成年被後見人は死亡などの解消原因が生ずるまで

後見人として存在することになります。

 

被相続人に高額な資産がある場合は

何とか相続登記に漕ぎ着ける場合もありますが

遺族年金で暮らす低所得・低賃金の相続人に取って

相続登記に必要な遺産分割協議のため

成年後見人を必要とすることは

相続登記をする相続人の負担となり

諦めざるを得ないと判断される場合もあります。

 

7 最近における相続に関する相談事例

こうなると、相続登記を放置される度に

ねずみ講式に増える相続人の数と費用面の心配が生じ

不安を感じた相続人の相談事例と言えば

 ○相続人が全員放棄すれば被相続人名義の遺産はどうなるか。

 ○相続放棄すれば固定資産税を納めなくてもよいか。

 ○被相続人名義の不動産を役場に寄付することができないか。

こんな相談に訪れる人も出現しております。

 

8 解決向けた取り組み

(1法定相続情報証明制度の創設

超高齢化社会の中で相続登記が未了のまま放置され

所有者不明の土地問題や空き家問題が一因となっているのが実情です。

 

東日本大震災からの復興に関連して

相続した不動産について

相続登記が未了のまま放置され

所有者の把握が困難となり

まちづくりのための公共事業が進まないなど

いわゆる所有者不明土地問題や

空き家問題が顕在化しております。

 

このことから相続の手続きを簡素化し

促進に繋げる具体的な方策として検討されたのが

法定相続情報証明制度」です

念のため申し上げますが

この制度を利用したとしても

相続登記をしたことにはなりませんので

くれぐれも勘違いしないでください。

詳しくは、当司法書士のブログをご覧ください。

 

2)法務局・司法書士会・土地家屋調査士会と連携による広報活動の推進

相続登記の申請手続きを促すため

官民一体となって市区市町村の「広報」誌に

掲載依頼の要請を直接出向いて実施しております。

 

9 この取り組みで放置される相続登記は解消されるか。

  相続税の対象範囲を拡大するため

  基礎控除額及び相続人一人当たりの控除額が

  引き下げられたことから

  相続税の対象者は増加することになりますが

  不動産価格が下落する地方においては

  対象者は少ないのが現実です。

  全国的には相続税の増収となりますので

  登記における登録免許税の引き下げを

  検討する時期に来ているのではないでしょうか。

 

  10 期待する方策

  高齢者社会における司法書士の業務として

  相続登記の依頼が増加するようにも考えられますが

  現実問題として、依頼件数は増加傾向にありません。

  主な理由として、司法書士に依頼すると

  登録免許税以上の報酬が発生しているためと言われております。

  そのため、法務局の無料登記相談者の数が増加しているのが実情です。

 期待する方策として是非検討してほしいことは、以下のとおりです。

(1) 相続登記を待つまでもなく

   生前の贈与登記を推進させる方策を講ずる。

相続登記であれば税率が1000分の4ですが

贈与の登記が5倍の1000分の20となっているのが

題の1つで、相続登記と同様に生前贈与における

贈与登記の登録免許税を引き下げる。

(2) 相続税の納付期限が死亡の日から10ヶ月とされているように

   相続開始後1年以内にする相続登記については

   登録免許税の租税特別措置法の創設により

   1000分の1とする時限立法策を講ずる。

(3) 遺産分割協議の調整については

   司法書士が関与できずもっぱら弁護士の業務とされているが

   弁護士費用が登記費用を超え相続登記が懸念されるため

   不動産に関する遺産分割協議については司法書士の業として調整を認める。

(4) 遺産分割協議を成立するため

   認知症の相続人について成年後見人申立手続きではなく

   特別代理人を選任する制度に改める。

 

これらの方策によって少しでも放置される相続登記は

防げるのではないでしょうか。

 

                            司法書士 石井 隆

 

 

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