バレンタインデーって、女性から男性へ愛の贈り物として、チョコレートを贈ることだという。妙に格好をつけて身の程知らずに構えたりするものらしい。なんで、大の男がお菓子をもらうために、身構えなきゃならないのか、罪なイベントである。だいたい女性から男性へというのが殺し文句である。
 
近所に住む子まで、この時期になると言うのである、
「わたし苦労するがよ、平ちゃんだけなら、そのあたりの安いチョコレートで済ませるけどよ、寺の権現はんにまで、用意するなると大変ながよ。デブのあんたには、気を遣ってビッターチョコやっそ。心して食べてよ」
 
 
いやはや大変である。ツレまで、先週からそわそわしている、4つも5つも買っているからこっちも気になる。ボクの分とE子の亭主の安さんの分は分かるが、残りは誰に渡すのだろうか。中のひとつは入念なパッキングをしていた。浮き浮きしてやっていると気になるものである。訊くわけにはいかない、沽券にかかわるからである。

まさかと思うが、なにしろ去年のことだった、古希の会とかで同級会があって、翌朝の一番電車で帰京した昔の男友だちが言ったという、
「ところで、H子さん、いま幸せですか?」と。

なんでも、その彼は3年前に長年連れ添った奥方を亡くしたらしい。そいつは東京というけど、ダ埼玉の春日部あたりに住んでいる。大宮で乗り換えて、東武アーバンパークラインで30分とかからないと。この間、ツレは春に、息子の家に行くのを楽しみにしていると言うが・・。息子の家から大宮へは一本である。まさか、男友達のところに行くとまでは考えていないと思うが。ツレに、こっちの腹まで読まれては、適わない。
 
 
 
バレンタインチョコは貰うだけには留まらない。何故って、ホワイトデーと言うのがあって、その日まで関係を引っ張るからである。ところでE子は、毎年のように、バレンタインチョコをくれるけど、亭主の安さんは妬かないだろうか。あいつはいつも言っている、
「わたし、そろそろ失礼するちゃ、亭主が妬くがよ、『お前、あのデブの平吾のどこが好いがや。あのデカい腹に惚れたのか』ってよ。可笑しいっちゃね~、自分だって、街の宵待ち草のママからゴディバのチョコレート貰っているくせに。そ~いのって、平ちゃん貰ったことなかろうげぇ?」

 
冗談は止して欲しい。こう見えてもバブルのころは大もてだった。なにしろ、中には太るといけないと高価なネクタイをプレゼントしてくれた人もいた。
 
 
チョコなんぞ、デスクの周りに仕舞いきれず、駅のロッカーにまで保管したもの。ただ、お返しには苦労した。それについては、『プレゼント考http://goo.gl/lBN63a に記した。バブルのころだから、チョコレートばかりでなくネクタイをと書いたが、あれは首ったけという意味だったと、後で知った。金の切れ目が縁の切れ目か、もう遠い昔のことである。