便利すぎる時代?

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今の世の中は、携帯電話やパソコンがあって、じつに便利である。固定電話なんてもう要らない。あれは不要だから棄てようと言うのだが、ツレはバックアップにもなり、留守電にしておけば、お留守番を家においているようなものだから、便利だという。田舎なんかに住んでおれば、滅多に電話なんか、かけてくる奴がいないと思うが、よくあるのはセールスである。「リン・リリーン」と鳴って、電話口に出てみると、
「樫さまのお宅ですか、ちょっとお時間よろしいですか?」
気のいいボクは、セールスする人も、つれなくされると可哀想だろうと思って切らないでいると、
「本日は、樫さまに、たいへん耳寄りなお知らせがあります・・・」
言ってやった、
「申し訳ないが、家内は今留守で、しばらく帰ってきません・・・」と。

勧誘電話


いつもそんな電話ばかりではない。
「おお、平吾さんか、留守じゃなかったんかぁ?俺ちへ一杯飲みに来いや。嬶を車で迎えにやろうか。な~ん土産なんか持って来んでエエヨ!」

まれに、そんな電話がある、だから出ないわけにはいかないのである。


ところが、暮れに耳寄りな情報があるとの電話勧誘があった。なんでも、契約内容をそのままに、光XX事業者のインターネット回線に移行するだけで、料金がお得だという。特別な工事もなんにも要らないと。紙一枚に必要事項を書いて、ポストに入れるだけだと。月千円安くなるという。

これで、後々えらく不自由した。その前に20世紀に別れを告げ、新しい世紀に入った年の話をしよう。

飲み会


まだ上の兄二人が生きているころで、15年くらい前だった。東京の母の法事に家族が集まった席だった、いちばん年長の兄が言う、
「世の中、便利になったもんや。家のテレビで、映画は観られるし、家庭に立派な自動車もある時代や。携帯電話なんかいらんよ、ありゃムダじゃ。平吾、お前はコンピュータのビジネスをやっておるらしいのー。これ以上便利な時代が、まだやって来るんかい?便利すぎて、これくらいで十分と思うが・・」


だから、ボクは言ったもんだ、
「皆さんの家には、水道もガスもきているし、もちろん電話も引かれている。東京駅に出れば、昔は1日かかりだった旅行も、新幹線で日帰りでできる。でも、親しい人に、案内をするのに、あいかわらずハガキか手紙を書く。これからは、地球の裏側の知人とも、瞬時にインターネットを介して、やり取りができる。そんな時代が、すぐそこに来ておる!水道をひねれば、水が出るように、スイッチをオンにすれば、電話も手紙もやりとりできる時代が・・」
「・・・・」


トラクター


ボクは、まだ青臭かったから、口角泡を飛ばして語った、

「そう生活インフラが変わるんや。インフレじゃないし、ボウフラは、ハエの子か。トラクターは、農機具よ。そうだ、新しいインフラストラクチャーがやがて出来上がると、世界は一変する。長生きせんといかんよ。」
兄たちも義姉たちも、狐につままれたようにしていた。その兄たちは、今やこの世を去って誰もいない。


ところがである、今、そのボウフラのひとつに欠陥があった。料金がお得であると言った男の言にウソはなかったが、メールが使えなくなった。プロバイダーが変われば、メールアドレスが変わる。ちゃんと手続きをしておくべきだったのだ。どおりで暮から、広告のメールも来ないし、助かったと思ったが不自由このうえない。

すると数日前から、さかんに携帯に電話が入り始めた。
「樫よ、元気にしておるんか?今年から、年賀状を止めてメールにしたが、届いていないようだな」
都会にいる女友達からは、
「平ちゃん、私の声を忘れたの?この薄情者、メールしたけど、返事がないジョー!」と。
静かでいいのだが、東京あたりの悪友から、メールが途絶えると寂しいものがある。そろそろ新アドレスを連絡しなくちゃならない。

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