サカミチホサカ

マンガ原作とかそこら辺のお仕事をちまちまやってる保坂歩ことホサカが、はんなりと綴ります。


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物凄く今さらですが、ブログの方にもtwitterのプラグインを貼りました。
サイドバーの左側に表示されていると思います。

告知や雑感などの9割はtwitterでつぶやいておりますので、何かありましたらそちらをご覧いただけたら幸いです。

実のある話なんぞ、よっぽどのことが無い限り呟かないと思いますが……

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サカミチホサカ

もう先々週のことなのですが、宮城県蔵王にあるキツネ村という所に行ってきました。

ただでさえ寒い日に山の上にある施設なもので、豪雪で車がなかなか入れなかったり四苦八苦。
けれども狐は元気そのもので、園内を走り回っていました。

ちなみにこの狐達、放し飼いなので近づくことは出来るのですがさすがに触れません。
モッフモフになりたかったのですが、写真を撮りまくることで我慢。
ツイッターに貼りまくってやりましたよ。

5月くらいに子狐が生まれたら触れるかも、ということなのでまた友人誘って行ってやろうと画策しております。




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↑の読書メーターでも、「読みたい本」登録がもう出来るんですね。

噂屋8巻、まだ発売まで日にちはありますが、どうぞよろしく。

前回ブログのショートショートは反響1つぐらいで微妙に凹んでしまったので、これっきりにしようか悩むところ。

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えーと。バレンタインデーですね。

貰う予定は残念ながら義理すら無いですが(畜生)、逆チョコ代わりにショートショートをのっけときます。

とはいっても、完全新作ではありません。
数年前、噂屋関連の小冊子に書き下ろしたものの、自主的にボツにしたものに、少しだけ手を入れたものです。

しかもバレンタインデーの話ですらなく、ホワイトデーの話です。ズレててごめんなさい。

ちなみにボツにした理由は、蓮見ナツメさんの書き下ろし漫画と内容丸被りだったからです。
というわけで『噂屋』的には、蓮見さんが書いたホワイトデー話が正史(?)です。

こちらは翌年のホワイトデーの出来事、みたいなイメージで、あくまで外伝として読んでいただければ幸いです。

それでは、どうぞ。









  ※        ※        ※ 



 今年も、ホワイトデーが近づいてきました。

 春の訪れまでは後少し。

 触れれば溶けるパウダースノーが、空を舞ってはケヤキの葉を濡らす――冬の残滓を肌に感じる、そんな平日の昼下がり。

 このシーズンはクリスマスやバレンタインデーに次いでお菓子がたくさん売れる、ケーキ屋にとってはかき入れ時です。

 私は両親が経営する商店街片隅のケーキ屋で、店員として働く、色気の無い二十歳の女です。

 高校を卒業してからは、恋人の一人も出来たことがありません。

 並んだケーキの出来映えも、この店構えも気に入っているので、しばらくは自分の恋に悩むのは後回しでいいかな、と思っています。
 
 来客者も少なくなった閉店直前の夕方に、入り口のベルがからころと、慎ましい音を鳴らしました。


「えーと……ホワイトデーのお返しって、どういうのがいいんでしょうか?」


 所在無げに尋ねてきたのは、よく言えば可愛らしく中性的な外見ですが、妙に存在感が薄い――一言で言うと〝フツー〟の、高校生らしき男の子でした。

 口ぶりから察するに、彼は女性にプレゼントを贈るのには慣れていないようでした。


「そうですねぇ。定番はクッキーとかでしょうか。最近はマカロンなども喜ばれます。けれどもお返しの品に、こだわりすぎることはないんですよ。お客様の感謝や愛情が篭もってさえいれば、きっと喜んでいただけます」


「あ、いや……愛情ってゆーか。義理チョコへのお返しなんですけど、去年は貰うときに怒らせちゃって。今年のお返しは、ちゃんとしてあげたいなって」


 彼はもごもごと口ごもりながら、落ち着きの無い仕種で、私から目を逸らします。

 ――何かを隠している。

 ケーキ屋店員の直感でした。

 訳ありのプレゼント、というオーダーは決して珍しいものではありません。

 そして訳がある方が――ほんの少し捻れた理由がある方が、相手にとっても自分にとっても、記憶に残るプレゼントに成り得るのです。勝手な持論ですが。


「お返しをしたいお相手は、どのような方なんですか?」


「頭が良くて、口が回って、収入もあって、気が強くて、力も強くて、スタイル良くて、周りからの人気もある、美人の女子高生です」


 ……人として完璧すぎます。

 そんな女性が、実在するのでしょうか。

 もしやその方は、貴方の想像上の彼女なのでは――と、こちらから問い質すわけにもいきません。

 私は陳列されたお菓子やケーキを彼に見せながら、一緒に選んであげることにしました。


「その方が、どんなお菓子をお好きなのかは分かりますか?」


「飴とかチョコとか、甘いものなら何でも好きみたいですけど」


「では、チョコレートケーキなどはいかがですか? 当店では本格的なザッハトルテやフォンダン・オ・ショコラも置いています。どちらも当店のショコラティエの自信作ですから、ご満足いただけると思いますよ」


「ざ、ザッハトルテ……? へえ、ケーキ詳しくないからなー……」


 うーんうーん、と唸りながら、彼は並んだケーキやお菓子に目移りしています。

 なんとも優柔不断な性格のようですが、それだけ悩んででも喜ばせたい相手がいるというのは、微笑ましくも愛らしいものです。


「やっぱり、来須さんに付き合ってもらえば良かったかな……?」


「来須さんという方が、お相手の方の名前ですか?」


 何故か、胸が騒ぐ響きのあるお名前でした。


「ち、違います。このお店を紹介してくれた人です。甘い物なら、ここが間違いないって」


 常連客の方でしょうか。

 こんなに小さなお店を贔屓にしていただけるなんて、心からありがたく思います。

 きっと心根が優しく、人当たりも良い方なのでしょう。勝手な妄想ですが。


「肝心の相手の名前は、その……僕の口からは言えません」


 矢張り訳ありのようです。ドラマを感じます。


「では、キャラクターの絵などをケーキにデコレーションしましょうか。アニメキャラの絵で喜ぶ女性もおりますし」


「キャラクター……ですか?」


 呟いた次の瞬間、彼の表情が輝きました。

 穏やかなしじまの瞳に、自信に溢れた光が灯ります。

 彼は『キャラクター』という言葉に、並々ならぬ思い入れと誇りがあるようです。


「そうか。好きなキャラクターから直接プレゼント貰えれば、誰でも嬉しいですよね。なるほど」


「……?」


 会話に、齟齬があるような気がしました。


「そういえば司馬遼太郎の本が好きとか、幕末が好きって言ってたな。衣装は家に無いけど……急いで帰って即興で作ればいいか」


 ブツブツと彼は考え込みはじめました。

 随分渋い趣味の女子高生が相手のようです。属性が多すぎて、人物像が掴みきれません。


「じゃあえっと、それ、一つ下さい」


「え? ええ、はい」


 そして彼は何の変哲も無いチョコレートケーキを買って、とことこ歩いてご機嫌に帰っていきました。

 狐につままれたような気分でしたが、私のアドバイスが彼の『訳』を満たしたようです。

 ならばこれで――ここまでで、良いのです。

 相手の方がプレゼントを受け取ってどう感じてくれるかまでは、私達ケーキ屋は見届けることが出来ません。

 自分達のケーキに誇りを持ち、優しくてほんの少しビターなその甘さが、どなたかの強張った心をパウダースノーのように溶かして下さることを、ただただ祈る。

 お菓子の力を信じてあげる――出来ることはそれだけなのです。





 さて。
 
 それからホワイトデー商戦も滞り無く過ぎ、数週間が経ちました。

 寒さも和らいで日射しは幾分か暖かくなり、ブラン・マンジェも美味しくいただける時節です。

 店番中に雑誌の『スイーツ特集』をぱらぱらめくって読んでいた私は、モデルとして活躍しているという女子高生、登美永花さんへのインタビュー記事を目に留めました。







『――最近、美味しかったスイーツはある?』

『登美永:たくさんあるんですけど、チョコレートケーキが美味しかったです。』

『――へえ、それは自分で購入したの?』

『登美永:いえ、友達が買ってきてくれました。』

『――それはまさか恋人だったり……?』

『登美永:まさかー。でも嬉しかったですよ。例えば、坂本龍馬本人から直接プレゼント渡されたら、喜ぶしかないですよね(笑)』

『――さ、坂本龍馬?』

『登美永:ええと、そういう夢を見たんです(笑) 司馬遼太郎先生の『竜馬が行く』にはまってて――アハ、訳分かんなくてすみません。』








 ……本当に訳が分かりませんでしたが、なんだか、奇妙な温かみのある記事でした。

 登美永花さんが不思議系キャラだったとは知りませんでしたけれど、彼女がその誰かからのプレゼントを喜んでいることは、短い言葉からでも伝わってきます。

 芸能人でもある彼女が美味しいというのですから、それは当店のチョコレートケーキとは比較にならない程高価で手の掛かった、一流のショコラティエによるものなのでしょう。

 ぜひ一度、いただいてみたいものです。その味を知れば私も、ちょっと訳ありのチョコレートを必死で誰かに、プレゼントしたくなるのかもしれません。

 今の私はまだ、そのような『訳』とは縁遠いようですけども――。





                                     終わり

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