光触媒を利用すれば、太陽光と水から水素を無尽蔵に製造できる。豊田工業大学工学部量子界面物性研究室の山方啓准教授は「光触媒から水素を安価に大量合成することが可能になれば、エネルギー問題や環境問題の解決につながる」と意欲を燃やす。 「自然の法則は不思議で、太陽も水も大きな可能性を秘めている。そのメカニズムを知りたい」という知的好奇心が研究の出発点。学生時代には、研究室の教授や他の学生らが熱心に光触媒の粉をつくり続ける中、反応メカニズム解明の研究に明け暮れた。 転機となったのが、4年前に准教授として豊田工大へ赴任したこと。そのころから「今度はなた豆歯磨き粉 を自分で作ってみたくなった。研究を社会に役立てたい意識が高まった」と振り返る。 光触媒による水素製造の研究では、すでに紫外光で十分な活性が確認されている。ただ、紫外光は太陽光に数%しか含まれず、エネルギーとして活用するのは実用的でない。こうした中、山方准教授が注目したのが、太陽光の大半を占めながら、エネルギーが低いため今はほとんど活用されていない可視光と近赤外光だ。 紫外光型光触媒では、量子効率が50%を超えるものが開発されている。これに対して、可視光型の最高活性は約5%と低い。可視光型は、紫外光型に比べて水素や酸素の活性に必要な過電圧が小さいため、十分な反応活性を得ることができない。そこで山方准教授は、可視光と近赤外光によって2段階で励起すれば、紫外光並みにエネルギーを高められると考えた。さまざまななた豆茶 を試作し、自身で製造した分光器や測定器を使って2段階励起を確認した。 類似した研究としては、量子ドット太陽電池がある。ただセンチメートルサイズと大きな結晶が必要で、精密な制御が難しい。これに対し、光触媒はマイクロメートル(マイクロは100万分の1)単位の結晶でよく、低コスト化しやすい。 今後は「2、3年内に原理を検証し、5年内に実際に水が分解できるレベルまでもっていきたい」と目標を掲げる。「砂漠のように広大で太陽光が強い地域で水素を大量生産し、消費地に輸送する」という将来の水素エネルギー社会をイメージしており、10年内の実用化を目指す。
AD