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六時間目の学活。
アンケート用紙の空白をさらさらと埋めていく。
血液型や誕生日などあたりさわりのないところをさっさと書き、内容は細かな物になっていく。
好きな食べ物、趣味、将来の夢。
埋めていくうちに手が止まった。
最後の質問、最後の問い。
___一番大切な物はなんですか?
(・・・・・・・・・・・。)
その問いを睨み続けているうちに_
___キーンコーンカーンコーン
授業が終わった。
「え、一君まだ終わってねえの?」
もうみんな帰りの支度を終えてそれぞれ帰る時間になってしまった。
ホームルームの時間も考えていたのに相変わらずそこだけ空白なまま。
「これがなかなか思いつかなくてな・・・・。」
「一番大切な物、ってやつか。
そこ空けたままでよくね?」
「・・・・・・・・・。」
そういうわけにはいかない。
これは生徒会を通してのアンケートで、大きくとらえればここで空白を開けることで生徒会の手間になるかもしれないのだ。
「平助はなんと書いた。」
「抽選で当たった限定のプラモデル。
・・・・まあ単純に考えればいいんだって!」
そうは言われても一に物欲はなく、大切なものというのが浮かばない。
(家にある壺は大切な物だと聞いていたが・・・俺ではなくおじいさんの大切な物だからな。)
「あれ、一まだ手こずってるの?」
まだ机に座っているのに気づいた千姫が声をかけてくる。
・・・・いつの間にか呼び方が呼び捨てになっている。
ひょいっと平助と同じようにのぞき込み、髪が揺れて当たる。
千姫はごめんといいながら下がった。
「一番大切な物・・・・真面目に考えちゃってるのね。」
「適当に書けば?」
千姫と一緒に帰る支度をしていた杞穂も言う。
「あ、ちなみに二人は何書いたんだ?千鶴も。」
「もちろん友達よ!いい答えでしょ?」
「わ、ちょっと千ちゃん!」
がしっと腕にしがみついた千姫に千鶴が戸惑って声をかける。
杞穂が用心しながら少し下がるのが見えた。
「で千鶴は?」
「え?か、家族って書いたよ。」
__薫が聞いたら喜びそうな答えだ。
「富木はなんと書いた?」
「特になし。」
・・・・もしかしたら一番多い答えかもしれない。
「大切なものなんてパッと浮かばなかったら特にないってことでしょ。」
「まあそうだけどね。」
__ということは一には大切な物は特にない、ということなのだろうか。
いや、おぼろげにいろいろ浮かぶけれどもどれが一番か決められないだけ。
「斎藤、まだ書けないなら明日でいいぞー!」
まだプリントを出していない一に担任が見かねて声をかけた。
ぺこりと頭を下げてプリントをしまう。
とにかくここで悩んでも仕方がない。
優柔不断とも言えるけれどもとりあえず家で悩むことにしよう。
___一番大切なもの。
歩きながら考えても何も浮かばない。
四人の答えた物は少しずつ違う。
絆、繋がり、物、選ばない。
そもそもこの問題には『今』大切なものなのか『ずっと』大切にしているものなのかが書いていない。
自由にとって欲しいということなのか、気軽に考えてくれということなのか。
(もっと細かく書いてくれるといいのだが。
物でも関係でも取れるしな。
それに一番、とつけられるとなかなか浮かばないしな。)
答えが出ないまま、ただただ悩むしかない。
____一番大切な物、とは。
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あとがき
一番大切な物はとかそういう問いあったりしますけど、そんなのころころ変わっちゃうからね。
ころころ変わるということは一番じゃないわけで、つまりない!
な私です。
時間が大切、とは思うのですが、そんなのアンケート用紙に書けない!(><;)
そもそもあれってちゃんと読まれてるのかな?
・・・・私たぶんじっくり読みますけど←
友達とか好きな人のとかって気になるし、知ってる人のなら面白いですからね。
「ちなみに土方先輩はミュージシャンになる夢でしょ?」
「んなわけあるか!」
どこからそんなネタが・・・・・。
「小学生の時の作文から引用。他にも色々夢があって_聞きたい?」
もちろん。
「聞かなくていい!大体俺の作文なんてどこで手に入れた!」
「やだなぁ、僕の人脈侮らないでくださいよ。
本人が忘れている黒歴史までばっちりなんですから。」
・・・・・・敵に回したくない人だ。
「大丈夫、何もしなければ何もしないから。」
「俺がいったい何をした。」
一番大切なものがはっきりとわかっている人は強いと思いますマル