海にかかる霧(ネタバレ) | 三角絞めでつかまえて2

海にかかる霧(ネタバレ)

海にかかる霧※ムービーウォッチメンのリンクなどを追記しました(5/26)

海にかかる霧

原題:해무 海霧 Haemoo
2014/韓国 上映時間111分
監督・脚本:シム・ソンボ
製作:ポン・ジュノ、チョ・ヌンヨン、キム・テワン
製作総指揮:キム・ウテク、ポン・ジュノ
撮影:ホン・ギョンピョ
出演:キム・ユンソク、パク・ユチョン、ムン・ソングン、キム・サンホ、イ・ヒジュン、ユ・スンモク、ハン・イェリ、チョン・インギ、ユン・ジェムン、チョ・ギョンスク
パンフレット:★★★(1000円/600円の通常版もあったんだけど、奮発して高いの買っちゃったら、写真多めでした)
(あらすじ)
不況にあえぐ漁村の漁船チョンジン号の船長チョルジュは、中国人の密航者を乗船させるという違法な仕事に手を出してしまう。沖合で密航船と合流し、密航者たちを乗り換えさせて陸まで運ぶという簡単な仕事のはずだったが、海上警察の捜査や悪天候に阻まれ、思いもよらない事態へと発展していく。(以上、映画.comより)

予告編はこんな感じ↓




75点


※この映画は「衝撃のエンディングが!? Σ(゚д゚;)」といった感じではないものの、基本的にはネタバレを知らないで観た方が絶対面白いので、興味がある方はこんなブログを読まない方が良いです。
※今回の記事は、微妙な下ネタが書かれているので、そういうのが苦手な人は読まない方が良いです。


4月下旬の土曜日、奥さんと娘が青森に帰省しまして。彼女たちを羽田空港まで送った後、横浜の親友夫婦と合流して、TOHOシネマズ川崎にて、「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」と勝手な二本立てにして観てきました。「イイ感じにヤな感じ!ヘ(゚∀゚*)ノ オフロダイスキ!」と思ったり。


「バードマン」の時と同じスクリーン3の同じ席で観ました。結構混んでましたよ。
スクリーン3


僕は事前に映画の情報をあまり入れないで劇場に足を運ぶタイプでして。今回、この作品を観ることにしたのは、① あのポン・ジュノ監督の傑作「ドロップキック刑事(デカ)」の脚本を書いたシム・ソンボの監督デビュー作であり(一部ウソ)、さらに② “世界一ドカジャンが似合う俳優”キム・ユンソク主演ということで、ストーリーとかは知らないけど、なかなか面白い海難サスペンスが観られるんじゃないかと。「『救命艇』とか『ライフ・オブ・パイ』的な展開になったりするのカナー (・∀・) ワクワク」なんて思っていたら、予想以上に凄惨な話だったからビックリいたしました。


「殺人の追憶」の“高低差を利用したドロップキック”のGIFを貼っておきますね。
殺人の追憶の飛び蹴り1


本編が始まる前、日本国内向けとしてキャストたちからのビデオメッセージが流れたんですよ。そんなの初めてだっただけに、不意を突かれて「えっ、なに!? Σ(゚д゚;)」と驚いたし、すっかり微妙な心持ちになりましてね…。ただ、映画がスタートすると、チョンジン号が漁をする様子を映し出していきまして。どんな乗組員たちがいるのかをサラッと見せつつ、チーム感がしっかり伝わる良いオープニングであり、文系ながらもマッチョな職場にいた経験のある僕的にはちょっとグッと来る感じ。「たぶん嵐に巻き込まれて船が大破したりして、『ここはオレに任せてお前たちは早く逃げろ!(;`Δ´)』『船長ー!(´Д`;)』的な展開があるのかもしれないな… (ノω・、)」なんてフライング涙が滲むほどだったのです(大げさな文章)。


ということで、チョンジン号の愉快でイイ顔の仲間たちを紹介するッス。
集合写真

昔はスゴ腕だったカン船長(キム・ユンソク)。船と船員を大事にする“ザ・海の男”(あれ、この場合って”ジ”の方?)。
カン船長(キム・ユンソク)

機関長ワノ(ムン・ソングン)。心優しいオッサンなんですが、それゆえに映画後半は残念なことに…。
機関長ワノ(ムン・ソングン)

船長の片腕的存在の甲板長ホヨン(キム・サンホ)。頭が柔らかかったために大変な目に…。
甲板長ホヨン(キム・サンホ)

金と女が大好きな船員ギョング(ユ・スンモク)。兄貴肌かと思いきや、結構なクズ。こんな人、身近にいました。
船員ギョング(ユ・スンモク)

気の良いボンクラ風な船員チャンウク(イ・ヒジュン)。セックスに興味津々なのです。
船員チャンウク(イ・ヒジュン)

童貞の新入り船員ドンシク(パク・ユチョン)。家族思いの良い子でございます。
新入りドンシク(パク・ユチョン)


船長が陸に上がってみれば、奥さんは浮気の現場に踏み込まれても逆ギレする有り様ですよ(間男の逃げる演出が愉快)。もうね、海に出ても不漁だわ、船はボロいわ、妻は金金うるさいわ、雇い主の奥さんからは廃船にしろとイヤミを言われるわと、すっかりやり切れないのさエブリデイ ┐(´ー`)┌ シノウカナ だがしかし、昔はこれでも港町でブイブイ言わせた男ということで、船だけは失うわけにはいかないのです。部下たちに食わせるため、ヤクザを頼って、今まで避けてきた密輸に手を出そうとしたら、なんと中国にいた朝鮮族の人たちを密入国させることになっちゃうから超大変!ヽ(´Д`;)ノイヤーン


こんな風にイヤミを言われて、カン船長のストレスは溜まる一方。
イヤミを言われました

昔はカン船長の後輩っぽかったヤクザのヨ社長。名前はわかりませんが、この人もイイ顔でした。
ヨ社長


でも、「男は度胸!なんでもためしてみるのさ」という言葉もあるし、何よりも船&船員たちのためにお金が必要だから仕方なし。無理矢理巻き込まれた船員たちも「船長が決めたなら… (´・ω・`)」と従うムードになりまして。20人ぐらいの密入国者を乗せる時に女の子ホンメ(ハン・イェリ)が海に落ちたので新米のドンシクが助けたり、海洋警察の監視船が近づいてきたので魚艙(釣った魚を入れておく倉庫で臭い!)に隠れてもらったり、密入国者の中のリーダーっぽい奴が文句を言ってきたので船長がキレて海に突き落としたりと、すったもんだがありました (´∀`) アラアラ で、そんな状況ながらも、ドンシクは助けた女の子ホンメに一目惚れ。特別に機関室に連れて行って暖を取らせたり、青唐辛子入りのラーメンを食べさせたりと特別待遇しつつも、「し、下心なんてないからな!(;`Δ´)」って感じの童貞対応をするのでした。


権利意識が高い密入国者が抗議をすると…。
抗議する密入国者

カン船長ったら、なんとブチギレて海に放り込んだりしちゃうのです、
ブチギレるカン船長

そんな中、ドンシクはホンメを機関室に連れ込んで、ドキドキするのでした~ (〃∇〃) ウフフ
ホンメを機関室へ


まぁ、僕的には「船が難破して、船員vs密入国者たちのバトルにでもなるのかしら」と思っていたんですが…。海洋警察の腐れ役人が船に乗り込んできたので、また密入国者たちを魚艙に閉じ込めていたら、船の冷蔵庫が故障してフロンガスが漏れた云々のせいで全員窒息死してたから話は一気に魔界へ突入するのです!m9`Д´) ビシッ


ということで、ここからは「映画ドラえもん のび太の魔界大冒険」の主題歌「風のマジカル」を聴きながらお読みください (´∀`) キョンキョーン!


小泉今日子 風のマジカル 投稿者 mark444444444


見終わった後にパンフを読んで知ったんですけど、この映画、2001年に韓国で起きた“テチャン号事件”がベースになっていましてね。60人の密入国者を船に乗せて、25人を魚艙に、35人を水タンクに隠したら、魚艙に入れた25人が全員死亡。その死体を海に投棄したという事件であり(生き残った35人が密入国→検挙されて事件が発覚したそうな)、正確にはそれを戯曲化したものを映画化した…という流れなんだそうで。実は「殺人の追憶」も実際の事件→戯曲化→映画化されたということで、どっちの作品とも元の演劇が観たくなりましたよ。

さて、話を元に戻しますと、ここからは「エエエエェェェェ(´Д`)ェェェェエエエエ」という展開のつるべ打ち。船&船員を守ることに固執してる船長は、スムースに隠蔽を決意すると、「魚が寄ってきて食べてくれる」という、どことなくエコっぽい処分方法を思いついて死体をバラバラに切断することを命令。みんな、さすがに葛藤を覚えながらも、やっぱり逮捕されるのはイヤなので命令に従うワケですが、機関室にいて唯一生き残ったホンメはドン引きであり、すっかりホンメLOVEなドンシクも愛と仲間意識の狭間で葛藤したりして。

ただ、良心の呵責により頭がおかしくなった機関長ワノを船長が泣く泣く始末するのを目撃し、怯えたドンシク&ホンメがセックスをすると、脱童貞というマジカルを経て少年はアポロにフォームチェンジ(何が何やらな文章)。命に代えても彼女を守る決意を固めるのです。船が濃霧に包まれる中、ホンメの存在がバレてしまい、「殺す!」「殺させない!」「ヤラせろ!」と揉めてるうちに、ホヨンのハゲ頭が突起物に刺さって死亡したり、ギョングは性にとち狂ったチャンウクに殺されたりと、地獄のようなことになりまして。ボロ船だったのでちょっと変な操作をしただけで沈没する事態に陥って、ドンシクとホンメは何とか脱出するものの、チョンウク&船長は船と一緒に沈んでしまうというね…。

で、何がグッときたって、ラストですよ。気を失った2人は砂浜に流れ着くんですけど、ふと気付くと、ホンメは1人で去って行ってしまうのです。要は「ホンメは生き残るために童貞野郎を利用しただけ」ということだったワケで(「いや、多少の思い入れはあったハズ」とか「あの時は愛したけど、現実的に無理だと思ったのでは?」という解釈もアリですがー)、この“苦さ”が超美味!ヘ(゚∀゚*)ノ オイシー その6年後、土木作業に従事するドンシクは、定食屋に立ち寄った際、2人の子どもを連れたホンメっぽい女性を見掛けまして(顔が映らないんですが、青唐辛子を入れたラーメンを注文する)。もしかしたら、1人はドンシクの子なのかもしれない。何はともあれ、こうやって彼女が幸せそうだってことは、例えあの時、利用されたのだとしても、それで良かったのかもしれないな…。って、これは僕の勝手な解釈ですけれども(汗)、そんな余韻で映画は終わってました。

この作品でスゲー好きなところは4つ。まず、密入国者がほぼ全滅するというビックリな展開が超気持ち良かったです。心底驚いたというか、今作に関してはマジで事前情報を入れなくて正解でしたよ。振り返ってみると、あんな修羅場になるから、最初にビデオメッセージとか入れてみたんでしょうな(不要だと思いますが)。余韻が残るラストも素晴らしかった。あのモヤッとする感じ、ちょっと「殺人の追憶」っぽいなぁと。ちなみにパンフのインタビューで監督は「あの女性はホンメです (`・ω・´) キリッ」と明言しちゃってるんですけど、観客に想像の余地を与えるためにも、そこは濁しても良かったんじゃないかなと思ったり。それと、ドロップキックを見舞うシーンがあったのは偉いというか。今回は製作という立場なものの、ポン・ジュノといえばジョン・ウー映画のハトのように飛び蹴りシーンを挿入してくる男。さすがはその弟子、ですな(知った風な口調で)。


女性を襲うクズにナイスなドロップキック! ドンシク、容赦せん!
ドンシクのドロップキック!


そして、チョンウクの“性”への貪欲な姿勢には脱帽しました。この人、序盤から「ヤリたい」を連呼していて、同じ男としても不快になるレベルの浅ましさなんですけど、そのためにやたらと嗅覚が発達したり、先輩船員のギョングを殺しちゃったり(ビックリしましたが、ギョングへの不満を積み重ねていく描写はあった)、死の間際にあってもホンメのことを気にしたりと、それが本当に徹底されているから、最終的には感心させられたというか。


漁船なんてかなり魚臭いだろうに、その中で女性の臭いを嗅ぎつけるって、どんだけスゴいんだと。
女を隠しやがったな!


今思いつく限りでは、最近だと「ノア 約束の舟」次男坊とか、昔の作品だと「少年と犬」のドン・ジョンソンとか、映画には“ヤリたがり”なキャラが出てくるものですが、それにしてもスゴいんですよ…。なんて言うんですかね、普通はいくら異性とセックスがしたいと思っても、それをオブラートに包みつつ、イヤらしい駆け引きをしたりするワケですけど、チョンウクは身も蓋もなく、ストレートにアグレッシ部でして。格闘技で例えるなら、何の躊躇もなく最短距離で最速の攻撃を叩き込むジャブのよう。残念ながらクズ野郎なのは間違いないので憧れたりはしませんが(苦笑)、5年目に突入した奥さんとのセックスレスを解消する大切なヒントをもらったような、そんな晩春の夜だったのでしたーー(なんだこれ)。


なんとなく宮本武蔵に左ジャブを放つ範馬刃牙の画像を貼っておきますね(「刃牙道」第4巻より)。
左ジャブ!


その他、韓国映画の常として、役者さんは相変わらずコクのある顔揃いで超好み。船員たちは100点のキャスティングじゃないでしょうか。主人公のドンシク役のパク・ユチョンだって、「童貞っぽい奴だな~ (´∀`)」なんて微笑ましく好感を抱いていたら、なんとアイドルだったから、全然違うじゃねーかと。いや、あそこまでオーラを消せるってのは大したもんですな。ホンメを演じたハン・イェリも可愛すぎないところがストライクでした(「ハナ 奇跡の46日間」で“実力はあるのにプレッシャーに負けがちな子”スンボクを演じた人!)。キム・ユンソクに関しては安定のクオリティというか、終盤は少しくどさを感じましたが、やっぱりこの人はいいなとあらためて思ったり。あと、腐れ海洋警察の人も良かったですね。


密入国者に薄々気付いて、さらなる賄賂を要求する海洋警察の人(ユン・ジェムン)。韓国映画の公務員の描き方って酷いよね(褒めてます)。
イヤな海洋警察


とは言え、個人的に乗り切れなかったところもあって。中盤の展開があまりに衝撃的すぎて、後半はそれを越えるショックがなかったから、ちょっと飽きちゃったんですよね…。大量の死体が無惨に転がるビジュアルは悪くなかったんですが、もう1歩先に踏み込んでほしかったというか。僕の好みの問題なんですけど、人体をバラバラにするなら、もう少しゴア描写もほしかったなぁ…。腕を投げる場面が一瞬映る程度だったと思うんですが、ここはかなり不満に感じた次第。

まだ「密入国者のおばさん(チョ・ギョンスク)の“女”を利用せざるを得ない切なさ」とか書きたいところはあるんですが、長くなってしまったので割愛!ヽ(`Д´)ノ 僕が韓国映画に求めるイヤな感じがイイ感じに描かれていた作品でしたよ。もう少し残酷な方が好みというか、例えば内容は全然違うものの「ビー・デビル」とか連想したりもして、地獄映画としては若干の物足りなさを感じましたけど、パク・ヨチョン目当てで観に行った方は結構ショッキングだったんじゃないかしらん。まぁ、韓国の社会情勢などを盛り込んだ良作なのは間違いないので、気になる人は観てみてくださいな。

宇多丸師匠の実にわかりやすい時評がアップされたので、ぜひ聴いて! キム・ヨンソクの分析がさすが。




メイキングDVDがありました。パク・ユチョン、人気あるんですね~。



シム・ソンボ監督が脚本を書いたポン・ジュノ監督作。見終わった後は恐ろしくイヤな気分になれますぞ。



僕的にベストなキム・ヨンソクはこの映画のターミネーターおじさんですな。僕の感想はこんな感じ



何度も貼ってますが、ポン・ジュノ監督作で一番好きなのはこれです。ペ・ドゥナと重婚したいなぁ(クズの文章)。