MY HOUSE(ネタバレ) | 三角絞めでつかまえて2

MY HOUSE(ネタバレ)

MY HOUSE

三角絞めでつかまえて-MY HOUSE

2011/日本 上映時間93分
監督・企画・脚本協力:堤幸彦
原作:坂口恭平
脚本:佃典彦
エグゼクティブプロデューサー:大月俊倫
プロデューサー:前田浩子、神康幸
出演:いとうたかお、石田えり、村田勘、佃典彦、多田木亮佑、板尾創路、木村多江
(あらすじ)
鈴本さん(いとうたかお)と相棒のスミちゃん(石田えり)は、都会の公園の一角に組み立て式の家を建てて暮らしている。鈴本さんは自転車で収拾して回ったアルミ缶を現金に換え、生活に必要なものはすべて廃品で賄っていた。一方、成績優秀な中学生ショータ(村田勘)は、ほぼ0円で日々を過ごす彼らとは正反対の毎日を送っており……。(以上、映画.comより)

予告編はこんな感じ↓




50点


試写会に応募したら、久しぶりに当たりましてね!(ドヤ顔で) 「女ドラゴンと怒りの未亡人軍団」のツッコミ試写会には行きましたけど、あれはなんだかんだ言ってお金を払ってるから、純粋にタダで映画を観られたのは「忍たま乱太郎」以来でしょうか。しかも見終わった後には堤幸彦監督と原作者・坂口恭平さんによるティーチインがあることで(いつもイートインかと思ってドキッとしちゃう…ってことは内緒ダヨ!(o^-')b )、オトク感が倍増! 意気揚々と早稲田大学の小野記念講堂に行って来ました。感想は、嫌いじゃない感じではありましたよ。


久しぶりに届いた試写状! うれしいね~。
三角絞めでつかまえて-MY HOUSE試写状

場所はなんと早稲田大学の小野記念講堂宇多丸師匠の母校ですな。
三角絞めでつかまえて-場所は早稲田ダヨ

初めて来ました~。早稲田大学の空気を吸っただけで高く飛べたりしないかなぁ…(ダメ人間の発想)。
三角絞めでつかまえて-着きました

ちなみに公開後、新宿バルト9にはこんな展示がありましたよ。
三角絞めでつかまえて-バルト9の展示


なんて言うんですかね、「堤幸彦が本当に撮りたかった」ってキャッチコピーは、実際にそうらしくて。こういうド直球な映画を作ろうとする姿勢とか、僕は非常に好感が持てましたよ。実際、堤監督はボランティア活動とかにも精を出されているみたいだし、たぶん良い人なんだろうな~って。最初に書いておきますけど、映画が終わった後のティーチインは、堤幸彦監督と坂口恭平さんの人柄が伝わってきて、なかなか楽しかったです。


ティーチインの動画を貼っておきますね↓ ただ、この動画の作り方は好きじゃなかったり…。




映画は、最初にホームレスの鈴本さんがパートナーの女性と黙々と簡易住宅を組み立てるシーンから始まるんですけど、それが結構面白くて。その後も、台詞は少なくて、BGMも流れない中で、説明描写を抑えた演出で話が展開されて行きましてね。前に観た「20世紀少年」シリーズとか、「BECK」よりは全然良い映画だと思いました。

ホームレスのパートは、いとうたかおさんが演じる鈴本さんが良い味を出してて好きでしたよ。各キャラクター設定がベタすぎだとは思ったけど(特に奔放だけど内気な“病んだ女性キャラ”。過去に何かあったんでしょうけど…)、鈴本さんがせっせと集めた缶を盗むクズなホームレスとかがちゃんといたりするのは良かったりして。全体的にはそれなりに好きだったりします。

一応、最後の展開を備忘録として書いておくと、抑圧された秀才中学生とその友人がホームレスの女性をバットで撲殺しちゃって、相棒を失った鈴本さんは超ゲンナリするものの、「日々を中断するのは悪意に対する敗北かも」と思い直して(たぶん)、また缶を集め始めて終わってました。この不条理に屈しないで日々を続けるというオチ自体はね、結構グッと来ましたよ。

ただ、かなり合わないところもありまして。“缶を中心とした社会の食物連鎖を描いてます”的な流れは嫌いじゃないんですけどね、「ホームレスたちが工夫しながら楽しくマイペースに暮らしていたら、『弱い者たちが夕暮れ、さらに弱い者を叩く』ライクに、ストレスを溜めた秀才中学生たちに襲われて死にましたら~ん♪ヘ(゚∀゚*)ノ ワッショイ」なんて話は、随分昔に平松伸二先生の漫画で何度も読んだ気がするというか、ごめんなさい、僕はもうお腹いっぱい。正直、今の時代に作るのなら“その先”が観たかったです。

大体、ホームレスと対比される家庭のステレオタイプな“病んでます感”が超面倒くさいんですよ…。木村多江さん演じる奧さんの病的なキレイ好き描写とか、「あえてやった」んでしょうけど、100回くらいは似たようなシーンを観たことがある印象。あと、良家の秀才中学生たちがホームレスを襲撃するってのも、そりゃあ、そういう“普段は真面目な子が爆発しました”的なこともありますけど、現実的にはもっと凶悪な襲撃者の方が多いじゃないですか。ちょっと取って付けた感じがしちゃうというか…。そもそもこの映画に出てきた家庭の問題って、悪いけど「両親がちゃんと話し合えばいいんじゃないですカネー (・ε・) ムリナラリコン」程度にしか思えなくて、全然乗れなかったんですよね。


あんな秀才タイプよりも、例えばこういう中学生とか…(「ブラック・エンジェルズ」より)。
三角絞めでつかまえて-平松先生が描く未成年

この手の乱暴な人たちの方がホームレスを襲うと思うんですがー(「北斗の拳」より)。
三角絞めでつかまえて-汚物は消毒だ~


一番ゲッソリしたのが中学生の父親。「勉強に集中させるために、子どもが可愛がってたペットの亀を殺す」ってのは、今どき「ナシ」だと思うんですよ。もちろん、僕が無知なだけで、いわゆる教育熱心な上流家庭では「んもう、昨日、ウチの主人ったら、子どもが大切に飼ってる亀を殺しちゃって、子どもが落ち込んじゃって… 川・ω・)」「あら、ウチもそうなのよ~。この前、主人が子どもの亀を… (・ω・し」なんて状況が日常茶飯事なのかもしれませんけど…。いくら亀とはいえ、ペット殺しますかね?

例えば、まだ「子どもが大切にしていた物を親が捨てる」とかなら分かるんですけど、生き物殺すかなぁって。あれじゃあ、単なる“作られた悪”にしか見えないというか。この手の話って、ある程度はリアルに感じさせるからこそ、「ああ、こういうボタンの掛け違い的なことから、子どものストレスが溜まって暴発しちゃったんだな… (´・ω・`)」なんて、悲劇がスムースに飲み込める&切なくなると思うんですが…。僕は父親の人物造形を含めて、あの一連の“裕福だけど病んだ家庭描写”に丁寧さをまったく感じなくて、映画がちょっと浅く見えちゃいました。


僕的には「六三四の剣」の審判のような心境になったり。
三角絞めでつかまえて-浅い!1


というかね、実際のところ、鈴本さんのモデルとなったカリスマホームレスの鈴木さんのドキュメンタリーを撮れば良かったような気がしないでもなかった次第。ハッキリ言って、僕は今の物欲にまみれた愉快な生活を心底愛しているので、この映画のホームレスライフには1ミリも憧れなかったけど(虫とかスゲー入って来そうだし…)、もし、ああいう状況になっても前向きに頑張ろうと思ったりはしました。まぁ、悠々自適に人生を楽しんでいるホームレスたちの描写は好きだったし、堤監督の志自体は好感が持てるので、興味がある人は劇場に足を運んでも良いと思いますが…。テーマはちょっと違うけど(でも通底するところはある)、今だったら「隣る人」を観た方がタメになるかもネ (・∀・) オススメダヨ!




堤幸彦監督作。スゲー高価になってますが(6/13現在)、かなり興味あります。
三角絞めでつかまえて-ホームレス
ホームレス [VHS]


坂口恭平さんによるルポ。これは読んでみようと思いました。
三角絞めでつかまえて-TOKYO 0円生活
TOKYO 0円ハウス 0円生活 (河出文庫)


なんとなく貼ってみました。未見だけど、たぶん一生観ないと思う。
三角絞めでつかまえて-ホームレス中学生
ホームレス中学生 スタンダード・エディション [DVD]


なんとなく思い出した漫画。福本伸行先生の作品の中で一番好きです。
三角絞めでつかまえて-最強伝説黒沢
最強伝説黒沢 1 (ビッグコミックス)