2011年10月31日

サウダーヂ(ネタバレ)

テーマ:新作映画(2011)
サウダーヂ※シネマハスラーへのリンクを追加しました(12/16)

三角絞めでつかまえて-サウダーヂ

2011/日本 上映時間167分
監督・脚本・編集:富田克也
エグゼクティブプロデューサー:笹本貴之
プロデューサー:伊達浩太朗、富田智美
脚本:相澤虎之助
撮影・編集:高野貴子
録音:山崎巌
助監督:河上健太郎
出演:鷹野毅、伊藤仁、田我流、尾崎愛、ディーチャイ・パウイーナ、工藤千枝、デニス・オリヴェイラ・浜津、村田進二、宮台真司
(あらすじ)
山梨県甲府。日系ブラジル人やタイ人をはじめとするさまざまな外国人労働者たちが働く土木建築業。ヒップホップグループ、“アーミービレッジ”のメンバーである猛(田我流)は、建設現場で多くの移民たちと共に働き始めるが、その中には土木業ひとすじの精司(鷹野毅)やタイ帰りの保坂(伊藤仁)もいた。(以上、シネマトゥデイより)

予告編はこんな感じ↓




もう1つ貼っておきますね↓




85点


※今回の記事は、かなり読みにくいので、読まない方が良いかもしれません。
※今回の記事は、“知った風な文章”も書かれているので、そういうのが苦手な人は読まない方が良いし、読んだ人は鼻で笑わないでぇ!ヽ(´Д`;)ノ


宇多丸師匠がオススメしていて、結構気になってたので、ユーロスペースで観てきました。「うわぁ… (´Д`;)」って心境になりましたよ…。


ユーロスペースに来たのは結構久しぶりなような。
三角絞めでつかまえて-サウダーヂポスター


正直、「SR サイタマノラッパー」のような“HIPHOPに情熱を傾ける若者たちを描いたインディーズ映画”だと思ってたんですよ。宇多丸師匠が言うところの「負け犬たちの“ONCE AGAIN”映画」というかさ。僕的に想像したのは、「サイタマノラッパー」の「地方で鬱屈する若者たちが愉快に四苦八苦する」要素に“ブラジル人との友情”が加わった感じ(「最初は反目してたけど、ぶつかり合っているうちに~」的な?)。ブラジルといえば、何と言ってもブラジリアン柔術とカポエイラが有名ということで、「多少の格闘アクションも期待できるのでは?」「僕は柔術描写にはうるさい男ですゾ (・∀・)ニヤニヤ」なんて呑気に思ってたりして。

で、実際に観てみたら全然違って、久しぶりに“知恵熱が出る映画”だったというね… ('A`)(冒頭、保坂が「タイに行ってた」と言った時は「ムエタイvsブラジリアン柔術フラグだ!ヘ(゚∀゚*)ノ」と喜んだんですが…) よくよく振り返ってみれば、宇多丸師匠も「『サイタマノラッパー』とは違うけど…」みたいなことを言ってたような? いや、それにしても、ここまで“厳しい現実”をバシバシ突きつけてくる映画だとは思わなくて。僕的には、予想外の角度から強烈なボディブローを食らって、反吐を撒き散らしながら悶絶しているようなキツさでしたよ。非常にイヤな文章を書くと、「社会の底辺にいる人たちが自分たちなりにあがくけど、現状は変わらない…というか、むしろ悪化していく」という意外と救いのない話なんですね。しかも、“できれば目を背けたい社会問題”を描きまくった上で、具体的な解決描写も見せずにこちらにチェストパスして終わるので、非常に考えさせられるというか、頭が熱を帯びてくるというか…。


HIPHOPグループ・アーミービレッジの方々(中央がUFO-Kこと猛)。彼らが活躍する話だと思ってました。
$三角絞めでつかまえて-UFO-K


なんて言うんだろう、僕のスベスベな脳から必死に絞り出した結論としては、2つの問題が描かれていると思うんですよ。一つ目は“厳しい地方の現実”の問題。基本的には、山梨には若者たちの働く場所が少なくて、呼ばれて出稼ぎに来た外国人たちの働く場所もさらになくなって。自分たちの暮らす場所=立ち位置がグラグラしちゃってるから、みんなの心の余裕もなくなっていくという“地方の現状”を描いているんですけど、根本的にはすべて“今の日本の問題”なワケで。「約束された未来がない中で、どう良く生きれば良いのか?」とか、「そりゃあ、選ばなきゃ仕事はあるけど、ちゃんと生活できるレベルなのか? そして、それはいつまで続けられるのか」とかさ、未来予想図の描きようがないという。

「そんなのテメエの人生のツケが返ってきてるんだから自己責任だろ! (`Δ´)」って切り捨てるのは乱暴というか、個人ではどうしようもないレベルになっているワケで、この映画セレブ以外の一般人なら誰にでも起こりうる話だと思うんですよ。僕だって煮詰まってしまったら、精司のようにタイに逃避したくなるのかもしれないし、猛のように仮想敵に激しい憎悪を抱くのかもしれないし、保坂やまひる(尾崎愛)のように薬物に走ったりするのかもしれないし、変な水の販売に手を出すのかもしれない…という可能性が「1ミリもない」とは言い切れないじゃないですか(まぁ、さすがに薬物には手を出さないと思いますけど)。

クライマックス、愛人のタイパブ嬢のミャオ(ディーチャイ・パウイーナ)にフラれた精司が見る“輝いている商店街=郷愁(サウダーヂ)の幻想”はさ、良かった過去であるとともに、本当は“約束されていたハズの未来”でもあるんですよね(たぶん)。だから、スゲー切ない。地方に限らず、これからの日本はあの商店街のように失われていくモノの方が多い気がするだけに、あのシーンは非常に胸に迫りましたよ…。


終盤、精司が商店街を歩くシーンでは、この曲が流れてました↓




で、もう1つはコミュニケーションの問題。この映画の登場人物たちは、人種とか関係なく、お互いにちゃんとコミュニケーションがとれてないんですよね。猛とまひるはもちろんのこと(まひるの自覚してない失礼な態度にはイライラ!)、精司はミャオと一緒にタイで暮らしたがってたけど、納豆を無理矢理食べさせようとする上にパクチーをバカにしたり、彼女が日本国籍を取るのを反対したりと、驚くほどに自分の都合しか考えてない。奥さんの恵子(工藤千枝)だって、一見、精司を愛してるように見えるけど、精司が何にイラついているのかは考えようともしないし。分かり合ってたように見えた保坂と精司でさえ、結局、保坂の方は心を許してなかったみたいだし…。


仲良く水パイプを吸引しながら語り合う2人。ここの酔っぱらいの会話風の演出は面白かったです。
三角絞めでつかまえて-分かり合う2人


そうなると、そりゃあ、外国人とコミュニケーションをとるのはさらにハードルが高いように思えるけど、まひるは簡単にそのハードルを越えてたりするし(薬物の力を借りてますが)、カポエイラ道場も機能してたりするのがまた面白かったり。最後、「勝手に憎悪を燃やした猛はブラジル人のデニス(デニス・オリヴェイラ・浜津)を刺す→仲間たちのところに行って自首→パトカーで連行される際、仲間に手錠を見せて笑顔」って感じで終わってましたけど、僕には暴走して誰ともコミュニケーションがとれなくなってしまった男の狂気の姿にしか見えなくて、引きまくってた仲間たちに彼の笑顔は届かなかったと思うんですが…どうなんでしょうか。

とりあえず褒めておきたいのが、劇中の登場人物の存在感やその描写の数々が実にリアルだったということ。劇中でそう言ってるので、僕もそのまま書きますけど、主人公・精司の“土方”描写が恐ろしくリアル。昔、現場でバイトしてたことを思い出して、マジで胃が痛くなりました。精司役の鷹野毅さんは実際に土木建築業に携わっていて、その描写にはかなりこだわりがあったみたいですが、非常に頷ける感じ。演技のためにヘルメットはあえて被らなかったみたいですけど、それすらも現場の雑なムードを醸し出すのに役立ってた気がします。

もう1人の主役である猛の鬱屈した感情も非常に実在感を感じました。僕は警察を退職して少し経ってから、家庭の事情で1年ほどボーリングの現場で働いてたことがあるんですが、その時の心境がモロにあんな感じでしたよ。パチンコと競馬と風俗の話しかしないオッサンたちのことを、ごめんなさい、心の底から軽蔑してたし、タイパブに連れられて「なんでこんな無駄なことに金を使わなくちゃいけないのか?」とか「っていうか、割り勘かよ!」とか、イチイチ頷ける感じ(今、38歳の僕はそういうパブも嫌いじゃありませんがね…フフフ)。まぁ、ビールを飲んだ時に運転代行を頼んでた分、ビールを飲みながら運転してた僕の親方の方が酷いと思ったり。

その他、保坂と精司の会話全般や、タイに逃避しようとする精司の切羽詰まった感とか、猛が“間違った右方向”に暴走していく様子とか、ブラジリアンコミュニティの描写とか、奥さん・恵子のアレな感じとか、デリヘル&日輪水業者(村田進二)のアレな感じとか、まひるの身勝手かつ失礼なメンヘラ具合とか、美心会メンバーの意地の悪さ&ポッチャリ具合とか、ミャオのたくましさ&脆さとか、議員・赤尾(宮台真司)の胡散臭さとかもね、実際にありそうで非常に良かったです。あと、猛が商店街を歩きながらラップするシーンはグッと来たし、「山王団地=サウダーヂ」のくだりも面白いなぁと感心しました(意味するところが同じなのが素敵)。


美心会の3人は、意地の悪さとちょっと肉厚な感じが魅力。
三角絞めでつかまえて-美心会

ミャオがアグラをかいてギターを弾くシーンは、少し萌えました (ノ∀`) テヘ
三角絞めでつかまえて-アグラ姿


一応、不満点を書いておくと、猛の弟が用意する三種の神器のエピソードや、猛がライブで暴走して2ちゃんねらーをディスったりするシーンは、なんか非現実的なムードがして、ちょっと恥ずかしかったです。それと、167分はさすがに長く感じちゃったかなぁ(考えさせられる要素が多すぎて、僕の脳では対応しきれない)。

ってことで、何はともあれ、僕からするとせっかく積極的に目を逸らしていた厳しい現実を突き付けられてゲッソリさせられた作品でした…。ただね、「どんな立場の人だろうと、外国人だろうと、みんな同じ人間」という当たり前のことがちゃんと描かれている分、“希望”もキッチリ提示されている気がするし、とにかく誠実に作られたタメになる映画だと思うので、みなさんもぜひ観に行って、僕のように知恵熱を出してくださいな~。

この宇多丸師匠の批評を聴くと非常に映画が分かりやすくなるので、ぜひ聴いて!




“鬱屈したラッパーが主人公”繋がりで貼っておきます。みひろさんが素敵。
三角絞めでつかまえて-サイタマノラッパー
SR サイタマノラッパー [DVD]
いいね!した人  |  リブログ(0)

カミヤマさんの読者になろう

ブログの更新情報が受け取れて、アクセスが簡単になります