2011年02月28日

アンチクライスト(ネタバレ)

テーマ:新作映画(2011)
アンチクライスト

三角絞めでつかまえて-アンチクライスト

原題:ANTICHRIST
2009/デンマーク、ドイツ、フランス、スウェーデン、イタリア、ポーランド 上映時間104分
監督・脚本:ラース・フォン・トリアー
出演:シャルロット・ゲンズブール、ウィレム・デフォー、ストルム・アヘシェ・サルストロ
(あらすじ)
愛し合っている最中に息子(ストルム・アヘシェ・サルストロ)を事故で失った妻(シャルロット・ゲンズブール)は罪悪感から精神を病んでしまい、セラピストの夫(ウィレム・デフォー)は妻を何とかしようと森の中にあるエデンと呼ぶ山小屋に連れて行って治療を試みるが、事態はますます悪化していき……。(以上、シネマトゥデイより)

予告編はこんな感じ↓




95点


※今回の記事の文章や画像は、あまりにも性的だったり暴力的だったりするので、そういうのが苦手な人は読まない方が良いです。
※今回の記事には、R-18的なグロい画像や動画へのリンクなども貼られているので、18歳未満の方は読まないでくださいね。


基本的には半裸の男同士が殴り合うようなB級格闘アクション映画が大好きな僕ですが、ラース・フォン・トリアー監督の作品は初期作以外は結構観ているんですよ(シネフィルを気取りながら)。なんていうんだろう、僕にとって「大嫌い、大嫌い、大嫌い、大好き!」的な映画を撮る人というかね。初めて観たのは「キングダム」で「なんじゃこりゃ!? Σ(゚д゚;)」と思って、その後は作品を観るたびに激怒させられたり、号泣させられたりと、いつも心を動かされまくっていて、本当にスゲーなぁと思うワケですよ。特に「ダンサー・イン・ザ・ダーク」は僕の人生で最も“映画内に入って登場人物をブチのめしたくなった作品”であり、もし舞台挨拶でデヴィッド・モースが来場していたら腕の一本は折っていたかもしれませぬ…(デヴィッド・モース的には迷惑すぎる話というか、悪役って大変だネ (・∀・) )。


ちなみに「ダンサー・イン・ザ・ダーク」はこんな感じの映画です↓




しかも、今回の「アンチクライスト」は僕が尊敬する宇多丸師匠や高橋ヨシキさんや柳下毅一郎さんが大絶賛されていたということで、もう期待度MAX状態でヒューマントラストシネマ有楽町に行ってきたんですが…。とにかく息苦しくて不穏な気持ちになりましたよ (´・ω・`) 感想については、「柳下毅一郎さんのこのコラムとかトークショーの記事とかを読めばいいんじゃね?」って感じなんですが、とりあえずサクッと自分なりの感想を残しておきます。

この「アンチクライスト」は、<プロローグ><悲嘆(GRIEF)><苦痛(PAIN)><絶望(DESPAIR)><3人の乞食><エピローグ>の全6章で構成されてまして。まず、<プロローグ>なんですが、「私を泣かせてください」という有名な歌を流しながら、ハイスピードカメラで撮影したモノクロ映像を合わせて、“性交中に子どもを失う顛末”を実に幻想的に見せてました。予告編を観てはいたものの、早速、ちょっとイヤな気持ちになりましたね。僕は全然気付かなかったんですけど、窓辺の兵隊人形には「悲嘆」「苦痛」「絶望」の文字が刻まれてて、その先の出来事を暗示してたみたい。


有名な曲ですが、初めてタイトルを知りました↓




で、<悲嘆><苦痛><絶望><3人の乞食>と、章を追うごとに見事に状況が悪化していくというか。セラピストの旦那は子どもが死んで悲嘆に暮れる奥さんを見て、「病院なんぞに任せておけるか!」「オレが治す! (`・ω・´)キリッ」と決意して、「恐怖を克服しよう」ということで、彼女が怖れる“森”にある山小屋「エデン」に2人で向かうんですが…。森に入ると、早速、“悲嘆”の象徴である鹿が登場しまして、それが“子どもを産みかけ”というビジュアル的に実にイヤな感じだったりして、「エデン」には最初から不穏な感じが漂いまくっているワケです。


「あら、可愛い鹿さんね (´∀`)」なんて思ったら、横を向くとこんな状態で心からゲンナリ。
三角絞めでつかまえて-悲嘆の鹿


せっかく治療をして奥さんが少し癒えたっぽい感じになっても、なぜか目の前の木から鳥のヒナが落ちてきて、それに蟻がたかったりして、猛禽類がそのヒナを残酷に食べたりと、基本的に森で起きることはイヤなことばかり。だから、彼女も全然治らない…どころか、イカレ具合がさらにエスカレート。突然、下半身裸で襲ってきて、旦那が抱いてくれないと見るや小屋を飛び出して、大自然の中で激しく自らを慰めるんですよ。旦那が彼女を追って行くとセックスが始まって、背景の木には人間の手が伸びてきて…と、僕自身もどう書いて良いのか分からないカオスな状態になってきまして。


幻想的かつ禍々しいセックスシーン。
三角絞めでつかまえて-木の幹でセックス!


さらには奥さんの幼児虐待疑惑なども出てきて、旦那さんも「どうしようかしら…」と思っていたところ、突然、「アタシを捨てる気か!」と奥さんが急襲! 股間を一撃して旦那を昏倒させると、足に穴を開けて大きい砥石とドッキングさせるという、ちょっと「ミザリー」っぽい展開になりまして。あーだこーだの挙げ句、何とか砥石を外した旦那は奥さんを絞殺してしまうんですね…。

旦那が奥さんの死体を焼いた後、<エピローグ>になりまして。「私を泣かせてください」がまた流れて、“悲嘆”の鹿と、“苦痛”のキツネ、“絶望”のカラスの“3人の乞食”が見守る中、下山しようとすると、顔にボカシが入った大量の女性たちが山にやってきて、映画は終了してました。

もうね、ストーリーの容赦の無さも恐ろしいんですけど、とにかく“性と暴力描写”が凄まじかったですね。「奥さんが旦那の股間を一撃した後、強引に発射させると血が飛び出るシーン」もマジで引きましたけど、「奥さんが自らのアレをハサミで切除するシーン」にはさすがに目を逸らしたくなりましたよ…。


だから、海外ではこんなポスターがあったりするワケですな。
三角絞めでつかまえて-海外版ポスター

“切除”した後の奥さんと乞食三兄弟。ちょっと余分三兄弟を思い出したり。
三角絞めでつかまえて-乞食三兄弟


奥さんは「赤ん坊が窓から落ちる直前、そのことに気付いたのに、肉欲の虜になって性行為を続けてしまった」ということの後ろめたさから(ただ、あのシーン自体は罪悪感が生み出したウソの記憶だと思う)、その“女性の性欲”を象徴する部分を切り取ってしまうんですが、もう衝撃的かつ不快としか言いようがないシーンというか。僕の隣には女性が座ってたんですが、「ヒッ!」って悲鳴を上げてましたよ。

この映画、僕ごときの人間には本当にショッキングかつ難解だったんですが、自分なりに解釈すると、「思い上がるなよ」という自然=本質=悪魔からのメッセージだと思いました。“本質”を人間が制御できるなんて思うことがおこがましいと。旦那はセラピストとしての自分を過信してしまい、結局は殺すことでしか彼女を救えなかったワケで。最後に“3人の乞食”が彼を見送ったのは「自然、舐めんな」ってことだと。そして、男性社会的な思い上がりが崩壊して、旦那の心が罪悪感に満ちていたからこそ、大量の女性たちの幻影を観た…という考えは間違ってますかね?


なんか、「ブラック・ジャック」のこのシーンを思い出しましたよ。
三角絞めでつかまえて-おこがましい…


この映画の何がスゴイって、奥さん役のシャルロット・ゲンズブールの演技がとにかく恐ろしかった。子どもが死んで悲嘆に暮れる演技が真に迫っていて実に可哀想なんですが、狂気に至るあたりもまたリアルすぎて、正直、かなりゲンナリさせられました。ウィレム・デフォーもあの顔面力が素晴らしかったですな。

ちなみに、ポスターでは「ANTICHRIST」の「T」が「♀」になってたり、劇中で奥さん自身が「女性=悪魔」的な発言をしたりするので、「女性嫌悪者の映画だ!」と感じる人もいるかもしれませんが、僕としては「女性の方が生命を作り出せる=より自然に近い存在」だから、こういう感じの作品になったような…っていうかね、すみません、いろいろ考えすぎて知恵熱が出てきました… (´д`lll)

というワケで、例によってグダグダになっちゃいましたけど、とにかくショッキングすぎる映画だったので、僕にとっては重要な1本になりましたが、当然ながら万人にはオススメできませんな(たぶん、ウチの奥さんが観たらショック死する)。カンヌ国際映画祭で上映された時は観客のうち少なくとも4人が気絶しているそうですが、見終わった後だと、それもあながちオーバーな表現じゃないなぁと。残酷な表現や話に耐性がない人は気をつけた方が良いし、耐性がある人も体調が良い時に劇場に行った方が良いと思います。




ラース・フォン・トリアー監督作。見終わった後、母親に「元気?」って電話しました。
三角絞めでつかまえて-ダンサーインザダーク
ダンサー・イン・ザ・ダーク [DVD]








※蛇足

あと、最後にボカシについて書いときます。一応、YouTubeで検索して、すべてのシーンのボカシがない状態を確認してみました(“切除”シーンに関してはこのメイキングで観られます。要覚悟!)。「確かに日本では無理だな…」とか「ボカシなしだとかなりキツイ」とか「日本公開版もボカシを入れつつも結構頑張ったのでは」などと思いつつも、やっぱり劇場で本来のバージョンが観たかったなぁと思ったり…。難しい話ですな。