ヒア アフター(ネタバレ) | 三角絞めでつかまえて2

ヒア アフター(ネタバレ)

ヒア アフター※シネマハスラーへのリンクなどを追加しました(3/26)

三角絞めでつかまえて-ヒアアフター

原題:HEREAFTER
2010/アメリカ 上映時間129分
監督・製作・音楽:クリント・イーストウッド
製作総指揮:スティーヴン・スピルバーグ
脚本:ピーター・モーガン
出演:マット・デイモン、セシル・ドゥ・フランス、ブライス・ダラス・ハワード、ジョージ・マクラレン、フランキー・マクラレン
(あらすじ)
霊能力者としての才能にふたをして生きているアメリカ人のジョージ(マット・デイモン)、津波での臨死体験で不思議な光景を見たフランス人のマリー(セシル・ドゥ・フランス)、亡くなった双子の兄と再会したいイギリスの少年マーカス。ある日のロンドンで、死に取りつかれた3人の人生が交錯する。(以上、シネマトゥデイより)

予告編はこんな感じ↓




82点


※今回の記事は、「時計じかけのオレンジ」の最後のシーンの画像が貼られていたりするので、要注意です。

僕が尊敬する映画評論家の町山智浩さんが「映画秘宝 2011年 03月号」で、なんとこの映画を「トホホ映画」の1位に選んでまして。コメントを引用すると「冒頭のスマトラ沖海底地震の大津波の地獄絵図がド迫力で、霊媒のマット・デイモンが霊能力のためにフラれるシーンとか、本当にいい映画なんだけど、さあここから佳境に入るぞ!ってとこで映画が終わっちゃうんだ。『え!?』って驚いた!」と…。だから、僕的にも「あまり期待できないのかしら…」と思いながら新宿ピカデリーに行ったんですけど、普通に良い映画だと思いましたよ。

あまり事前に情報を入れなかったので、僕的には「最初に大津波があって、それをキッカケにマット・デイモンが死者と話す能力を開花。その後、迫り来る世界の危機に仲間とともに立ち向かう」的な、ちょっと真面目な「幻魔大戦」っぽい話かと思ってたんですよ。そしたら全然違うというか、最初の大津波シーンが終わると、恐ろしく地味~なドラマがずーっと展開されるのは予想外でした。

良かったところを挙げると、まず、ジャーナリストのマリーが大津波に呑み込まれるシーンは凄まじい迫力でしたな! あの呑まれてモミクチャにされる感じとか、波が引いていく時の恐ろしさとか、漂流物の破壊力とか、本当に見事に表現されていて、「津波、怖い…((((;゚Д゚))))ガクブル」と心から思いました。こういうのを観ちゃうと、昨年の「TSUNAMI -ツナミ-」はもう少し頑張ってほしかったなぁ…って関係ありませんな。その後のマリーの蘇生っぷりも良かったです。


津波からダッシュで逃げるマリーと現地の子ども。2人とも波に呑まれるも、マリーだけ何とか蘇生してました。
三角絞めでつかまえて-津波から逃げろ!


次に良かったのが、マーカス少年のエピソード全般。“ヤク中のシングルマザーをかばう双子”という設定だけでもグッとくるのに、兄のジェイソンが死んじゃうんですよ…。あの事故の原因を作ったガキどもは全員死刑! ヽ(`Д´)ノ …などと激怒しつつも、「彼らもまさかあんな大変なことになるとは思わなかったんだし、更生の機会も与えないと…」とか関係ないことを考えてるウチに、マーカスは母親と引き離されることになってしまって…。もうね、不憫で不憫で仕方なかったです。ちなみに双子の兄弟を演じたジョージとフランキーのマクラレン兄弟は演技未経験だったそうですが、大したモンですな~(クリント・イーストウッド監督は2人の役を適当に入れ替わらせつつ演じさせたそうな)。


彼らはガチの双子の兄弟。「ダブル・インパクト」「ソーシャル・ネットワーク」を観てから疑うようになったのは僕だけじゃないハズ。
三角絞めでつかまえて-本当に双子?


マット・デイモン演じる霊能力者ジョージの話も面白かったです。特にロン・ハワード監督の娘のブライス・ダラス・ハワードが演じるメラニーとの恋愛模様が良い感じでしたな。料理教室でやたらエロいやり取りを交わした後(しかも結構長いシーン)、霊能力者であることがバレてしまい、最初は「やってみて!」的な感じでメラニーにチヤホヤされるものの、彼女の事情(父親に虐待されてたっぽい)を知ってしまって、逆に引かれてしまうという…。内容はまったく違うけど、中学生の時、奇跡的に隣の席の女子とうまく話せる感じになったのに、ついプロレスの話をした途端、彼女がよそよそしくなったことを思い出して、少し胸が痛くなりました (´・ω・`) 


結ばれなかった2人。ちなみにブライス・ダラス・ハワードを好きになった人には「マンダレイ」がオススメ!(イヤな気分になるけど)
三角絞めでつかまえて-別れた2人


で、何が泣けるって、マーカス少年のためにジョージが兄ジェイソンの霊を呼び出すシーン! もうね、ここが超泣けるのよ… (ノДT) ジョージに呼び出されたものの、「こっちはスゴいぜ、イェー!」「じゃあな!」みたいな感じでさっさと去ろうとするジェイソンにマーカス少年は「お兄ちゃん、僕を一人にしないで…(/TДT)/」って感じで必死にすがるワケです。そしてこの時、ジョージが「ちょっと待って。彼が戻ってきた」みたいなことを言って、マーカス少年を励ますようなことを言うんですけど、ここがまたスゲー良いんですYO!

いや、これは僕の妄想なのかもしれませんが、ジョージはマーカス少年を励まそうとしてウソをついたんだと思うんですよ。メラニーの時は、霊媒という自分の能力に真摯だったから…言い換えるとその力に囚われてたから、適当に言い繕いもせず、事実をそのまま伝えてションボリさせちゃったと。ただ、マーカス少年に対しては「この子を何とか助けてあげたい」という気持ちが強くなったからこそ、「自分の能力の結果に対してウソをついた→呪いを打ち破って自分自身もポジティブになれた→調子に乗ってカフェでエロ妄想」ってのは考えすぎでしょうか。もう、僕的には本当に「ジョージ、いいやつ!」って感じで、涙が止まりませんでしたよ…。

ただ、僕的に合わなかったところを書くと、マリーとジョージの絡みが微妙に分からなかったです…。マーカス少年とジョージが絡むのは分かるんですけど、マリーはジョージに付き合う必要性がまったくないじゃないですか(「死後の世界を見た同士→なんとなく通じ合った」ってことなんですかね?)。最後、カフェにやってきたマリーを見てエロ妄想するというのは(って、キスだけですけど)、男子としては正常な行為ではあるけど、僕的には「時計じかけのオレンジ」の最後の妄想シーンを思い出して、ちょっと不穏な気持ちになったりもして。


「時計じかけのオレンジ」の有名なラストシーン。
三角絞めでつかまえて-時計仕掛け


というか、そもそもあの3人がブックフェアに集まるという展開自体が飲み込みづらかったです。前の里子が警備員になってるとか、ジョージがディケンズのファンで朗読CDが大好きだとか(ディケンズの家でボソボソ知識を披露する姿はオタっぽくて良かったネ)、伏線は張ってありましたけど、「3人の道が交差した!」的な感動はなかったというか。これは乱暴な意見かもしれませんが、僕はマーカス少年とジョージの話だけで良かったような気がしちゃいました…。

ってことで、ちょっと飲み込めない点もあるんですけど、オープニングの大津波シーンは最高だったし、メラニーとジョージの料理教室シーンは無闇にエロかったし、マーカス少年とジョージのエピソードは非常に良い感じだったということで、僕は結構好きな映画でした。「お前の前世は猿だ!」とか「このツボを買わないと死ぬ!」とか、変なスピリチュアル感をゴリゴリと押し付けてくる作品ではないので(「“ヒアアフター=来世”の話」というより、むしろ!「今を生きろ!」という感じの内容)、興味がある人は観ても損はしないんじゃないですかね。

宇多丸師匠が実に分かりやす分析しているので、気になる人は要チェック! 僕もね、ちょっとだけ「めぐり逢えたら」を連想したんだけどなぁ…(という後出し)




クリント・イーストウッド監督作。マット・デイモンがラガーマンを演じております。
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昨年観た“死後の世界”映画。僕の感想はこんな感じ
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タイトルが似てるのでなんとなく。「スイート」なんて付いてるけど、後味的にはこの作品の方がスゲー苦かったり。
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