映画「ひつじ村の兄弟」 平成27年12月19日公開 ★★★☆☆


アイスランドの人里離れた村で羊を育てる老兄弟グミーとキディーは隣同士に住んでいるが、
40年間話をしたことがない。
兄弟の羊は国内随一の優良種だったが、ある日、キディーの羊が疫病に侵されてしまう。
感染の恐れがある地域の全ての羊が殺処分されることになったが、
兄弟は自分たちの羊を諦めることができず、協力し合うことにする。(シネマ・トゥデイ)

アイスランドは私が死ぬまでに行きたい国のひとつです。
北極圏にかかってるような高緯度の国なんですが、当然寒帯~冷帯とおもいきや、
南の方は温帯(西岸海洋気候cfc)なんですよ。


なんでこんな場所が緑色なのか、すごく不思議ですけど、暖流(北大西洋海流)と
活発な火山活動が原因で温暖だと習った記憶があります。

アイスランドの映画はほとんど日本では公開されませんが、
先日みた「好きにならずにいられない」がその貴重な一作。

心優しい巨漢のオタク男フーシにすっかりハマってしまったんですが、フーシ役のグンナル・ヨンソンが
「ひつじ村の兄弟」にも出ていることを知り、DVDを予約しました。
私の好物の北欧映画で、昨年末から劇場公開されてたのに、
チラシも手元になく、ちっとも知りませんでした。
休館に入るまえの武蔵野館でやっていたんですね。

カンヌの「ある視点」部門というのは、
「あらゆる種類のヴィジョンやスタイルをもつ、「独自で特異な」作品群」だそうで
グランプリ作でも「なんじゃこれ?」っていうのも少なくないんですが、
「自分の大事なひつじを殺されたくなくて逃げる」って話なので、気持ちはわかるけど・・・・

登場人物は兄のギディーと弟のグミーと、あとはたくさんの羊たち。
羊の品評会ではこの兄弟のどちらかが優勝していたんですが、
ある日、その優勝した兄の羊がスクレイピーにかかっていることがわかり、
すべての羊を殺処分するようにとの指示があって、さあ、どうするか??

羊のスクレイピーというのは牛でいう狂牛病のことのようです。
手塩にかけた可愛い羊を皆殺ししなくちゃいけないのは、財産を失う以上に悲痛なことでしょう。
日本でも鳥インフルエンザが蔓延すると、何百万羽という単位での殺処分が行われたリするので
本当に心が痛みます。

ただ、映画の冒頭でちょっと気になる場面がありました。
死んだ羊のそばにいた羊を(キディーとグミーのどちらかが)抱いて家に連れ帰るシーンで、
その時点で最悪の状況を警戒しなくちゃいけなかったんじゃないの?って思いましたが・・・・

この兄弟、年齢は多分60歳くらいで、ふたりとも独身。
となりの家に住んでいるんですが、困ったことに、とっても仲が悪いのです。

そして、観てる私たちにとって困ったことには、このふたり、そっくりなのです。
左が弟のグミーで、右が兄のキディー。
兄の方が若干白髪が多くて、帽子をとると頭がちょっと禿げてるんですが、
だいたい同じようなセーターを着て帽子をかぶっていて、ふたりとも一緒に住んでる家族もいないから
どっちがどっちだか、本当に分からなくて困ったものです。

ふわふわモフモフの羊たちとおじさんたちの白いひげは、暑いところだったら若干うざいですが
この凍てついたアイスランドの大地では、ホントに癒される質感です。

不仲の兄弟が、どうしても連絡を取らなくちゃいけない時の最終手段。
それがお利口さんの牧羊犬、というのもなんとも可愛いです。

そして40年もケンカしていた兄弟が、皮肉なことにスクレイピー騒動をきっかけに協力し合うという
一見楽し気な展開ですが、検疫係の人たちが悪党というわけでもないし
とても大団円には持ち込めそうもない様相です。

消化不良のストーリーながら、アイスランドの空気感を共有出来て、なんとも幸せな時間でした。