映画「二ツ星の料理人」 平成28年6月11日公開 ★★☆☆☆



腕は確かなもののトラブルを起こし、キャリアを台なしにした人気シェフのアダム・ジョーンズ(ブラッドリー・クーパー)。
パリの二ツ星レストランから姿を消して3年後、
起死回生を狙いロンドンの友人トニー(ダニエル・ブリュール)のレストランに乗り込む。
世界一を目指してかつての同僚ら最高のスタッフを集め、華々しく新店をオープンさせるアダムだったが、
過去のトラブルの代償が立ちはだかり……。                      (シネマトゥデイ)


美味しそうな料理しか記憶に残らないグルメ映画は苦手ですが、
「シェフ 三ツ星フードトラック始めました」も、リバイバル作の「バベットの晩餐会」も面白かったので
最近躊躇せずに見るようになりました。

しかもブラッドリー・クーパーがカリスマシェフをやるというし、

「アメリカンスナイパー」でブラッドリーの妻だったシエナ・ミラーがヒロインというのも期待感↑。
おととしは彼女が主人公の妻役だった「アメリカンスナイパー」も「フォックスキャッチャー」も大ヒットという
あげまん女優(?)ですからね。

冒頭のシーンは、ニューオーリンズのバーで、ひたすら牡蠣の殻をむくアダム(ブラッドリー・クーパー)
彼はミシュラン二つ星のパリの名店、ジャン・リュックの店の名シェフでしたが、問題を起こして追放され
その禊のために牡蠣をむいていたようで、3年かかって100万個むいたので、晴れてロンドンへ・・・・

ロンドンでは死亡説まで出ていたアダムの姿をみてみんなびっくりしますが、
ほとんどの人にアダムは迷惑をかけていたようで、良い顔はされないんですが、
辛口コメントでレストランをつぶすという評判の女性批評家シモー(ミラ・ジョボビッチ)を
かつての親友トニー(ダニエル・ブリュール)の店にアポなしで行かせて焦らせ、

そこに自分が押しかけて完璧な料理を作り、良い記事を書いてもらうことで恩を売ります。

強引にトニーのレストランのシェフにおさまったアダムは早速、料理人さがし。
才能あるのにおとなしいデヴィッド、よその店の女性スーシェフのエレーヌ(シエナ・ミラー)
ようやく刑務所から出所したマックス(リッカルド・スカマルチョ)、かつてアダムに店をつぶされたミシェル(オマール・シー)・・・
かつての同僚リースは、すでに分子料理で一世を風靡しているので問題外ですが。

この時点で、けっこうな豪華キャスト。
デヴィッドとリース役意外は超有名人ばかりで、
きっとこの個性的なメンバーのチームプレイですごい料理を作るんだろうな、と期待が高まります。
(演じている俳優の)国籍もみごとなくらいばらばらですよね。
アダム→アメリカ人、   トニー→ドイツ人   マックス→イタリア人
デヴィッド→アイルランド人  そしてミシェル→アフリカ系フランス人
ロンドンなのにイギリス人がいないのも意外ですが、言語も英語とフランス語が混在します。
「人に聞かれたくない話はフランス語」ってことなのかな?
よく見ているとそうでもないみたいで、「とりあえずフランス料理の映画なので、フランス語も使ってみました・・・」的な?


アダムは自分の店「ランガム」をオープンさせますが、
アダムはリースにめちゃくちゃ敵対心を持っていて、彼と同じく三ツ星を獲ると宣言。
ところが初日に空席があったことからご機嫌が悪くなり、料理人たちの動きも悪くて
料理がさめてしまったことに激怒して、アダムは皿を投げ、出来上がった料理も捨て
厨房の中は大変なことになります。
「芸術肌の完璧主義者」で、不完全な料理は提供できないというのだけれど、
せっかく来た人にお金を返して家に帰す、なんて、
ただのヒステリーにしか思えないんですけどね。

そのくせ、アダムは、労働者向けの農民料理の一つだと、バーガーキングのファストフードも
なんの抵抗もなく食べるおおらかさも持ち合わせていて、なんか意味不明。

それ以上に、料理中にタバコは吸うし、手で盛り付け、その手を汚れたシェフ服で拭くし、
マスクもかけずに、皿に顔をくっつけて盛り付けしながら大声で怒鳴るから、
ぜったいあの料理にはたっぷりと唾がかかってるはずです。

何万円もする一流料理店の裏ではこんな感じかと思うと
なんか食欲も失せてしまいます。


エレーヌもアダムに怒鳴られて店を出ていきますが、トニーに引き留められ、
戻ってくるときには真空パックの最新兵器を持ち込んできます。
これにはアダムもなぜかOKを出すんですね。

アダムの料理方法は何年もブランクがあったので、すでにちょっと古くて
「炎やフライパンはもう使わない」というのが今風だそうです。
真空パックだって、アダムの嫌いな分子ガストロミーの一つだと思うんですが、
液体窒素まで使わないから、このくらいは許すのかな?

そして、店もなんとか軌道に乗り始め、あとはミシュランの調査員がいつくるか??
調査員は身分を隠していきなり来るんですが、彼らには共通点があり、
①二人組で7時半くらいに予約し、ひとりは遅れてくる
②コースとアラカルトを注文する
③床にスプーンを置いて、給仕人の反応をみる
という傾向があるそうです。

そして、まさに①~③の条件ピッタリの二人組が来店し、厨房に緊張が走ります。

ベストを尽くせて、上手くいった!と思ったとたん、ソースが辛すぎるとその客からクレーム。
なんとミシェルが唐辛子の粉をたっぷり仕込んでいたのでした。
昔のアダムの仕業(自分の店にアダムがネズミを放って、衛生局に通報したせいで店がつぶれた)
の仕返しだ!と叫んで店を出ていきます。

絶望したアダムはリースのレストランにいって、真空パックを頭からかぶって窒息死しようとして、止められたリ
なんかもう訳が分からなくなります。

また、常にアダムを追いかけるヤクザみたいな二人組がいて、何度も痛い目にあわせられるのですが
彼らの正体も最後までわかりませんでした。
アダムの元カノのアンが金を支払って一件落着したようだから、ただの借金取りだったのでしょう。

「アダムがパリ時代にやらかした罪」というのがうやむやだったので、
終盤にかけて意外な展開があるかと思ったらそれもなし。
彼の師匠であり恩人のジャンの名前が常に出てくるんだけど、
これもたいして大きなオチはありませんでした。
ジャンの娘のアン役が今をときめくアリシア・ヴィカンダーだったから、彼女とよりを戻して、
後半のヒロインは彼女に違いない!と決めつけていたのですが、
すぐに退場してしまって、それも物足りなかったし・・・・

結局、激辛料理を食べさせられたあの二人は調査員でなく、普通のセールスマンだったということがわかり、
次に訪れた調査員らしき二人組には納得できる料理が出せて、
「結果がどうでも、最善をつくせたから、よかったよかった・・・」

で、いつも食べなかった「まかない料理」のテーブルに初めてアダムもやってきて
香ばしく焼きあがったパイを食べていい雰囲気になったところで映画はおわります。

レストランに自腹でやってくる一般客はどうでもよくて、
ミシュランの調査員や辛口コメンテーターに美味しいものを提供できればそれで良し・・・
みたいなのはどう考えても納得できません。

それにしてもみんなで食べるまかない料理の美味しそうなこと!
素手でいじくられるコース料理よりも、よっぽど食べたいです。