映画「ルームメイト」 平成25年11月9日公開 ★★★★☆

原案 「ルームメイト」 今邑 彩 中公文庫



読んで♪観て♪


派遣社員として勤務する春海(北川景子)は、ある日交通事故に遭い、

しばらくの間入院生活を送ることになる。

そんな彼女をいたわり、親切に接してくれた看護師の麗子(深田恭子)と春海はすっかり仲良くなり

二人は退院後にルームシェアを開始する。

彼女たちの共同生活はスムーズに見えたが、

春海が偶然、麗子の不可解な行動を目にしたことで……。   (シネマ・トゥデイ)


予告編を見る限り、当代美人女優の競演が最大の見どころの模様。

血しぶきを浴びて笑う深田恭子のS女ぶりやスリラーにはつきものの北川景子のシャワーシーン。

「女の素顔は恐ろしい」

なんていうありきたりにコピーに、ほとんど期待も無しに観たのですが、けっこう楽しめてお得でした。


土砂降りの雨の中、三人の男女が倒れているとの通報が。

意識不明の二人は担架で運び出され、一人は死亡が確認されます。

メッタ刺しの凄惨な遺体に

「なんだこりゃ、ひでえな」

とベテラン刑事。

「萩尾春海には西村麗子というルームメイトが下り、西村は所在不明」という無線の声。

まるで犯罪ミステリーみたいなオープニングのあと、

場面は一気に3か月の交通事故にまでさかのぼります。


23歳の派遣社員萩尾春海は、謙介(高良健吾)の運転する車にはねられ入院します。

そしてそこで知り合った看護婦の麗子と意気投合し、ルームシェアをすることに。


その部屋というのが、(ドラマでありがちな)デザイナーマンションなんかではなく、

ちょっと薄暗い昭和の香りの公団住宅みたいなのが、生活感あってとってもいいです。

鉄製の安っぽい玄関ドアに、二口のレンジ台。狭いベランダ。

最初は楽しくてたまらない日々で、交換日記も始めるふたり。

ほどなく、麗子が二重人格者で、冷酷な裏の顔があることに気づき、春海はこわくてたまりません。


「このドラマは解離性同一性障害をテーマにしたサイコミステリーです」

程度のネタバレしかできない感じなので、ストーリーにはあまり触れないようにしますが、

思った以上にドラマティックな展開でしたよ。

原作は未読ですが、映画の人物設定とはずいぶん違っていて、

深田北川のw主演を意識して再構成したもののようです。

「そんなに怖いなら逃げるなり、助けを求めるなりすればいいのに、

なんて春海は麗子から離れられなかったか?」の答えは明らかになりますが、

不思議な現象を説明するために「第4の人格」を出してきたのは名案でもあり、

ちょっと無理がすぎてる部分もありますが、それはまあいいかな?


その後も現代のシーンと、過去のシーンが繰り返し切り替わって、

変化を見せつつ核心へと迫っていきます。

比較的ホッとする映像と緊迫するシーンがいいタイミングでつながれるので、

話しのテンポが体にやさしいというか、ストレスなく楽しめました。

残酷描写もそこそこあるのですが、そのものは映さずに影だけだったり、

音や光でソフトにドッキリさせられました。


主演の二人がとにかく美しい!

入院してたり自宅でののシーンばかりなので、化粧もうすく、普段着やパジャマなのに

ほんとにきれいでびっくりしました。

殿方向けのサービスシーンはあんまりなかったですが。

二人とも年齢あまり変わりないと思っていたら、深キョンはもう31歳なんですって!

その美しいふたりが、たまに「悪~いお顔」をするのがこれまたドッキリです。


共演者の存在感は薄くて、春海に惹かれる青年役の高良健吾くらいなんですが、

彼はもともと過激なキャラクターのとんがった役でブレイクしたのに、

「横道世之介」以来、軟派ないい人の役ばかりで、私はちょっと物足りないと思っています。

田口トモロヲとかベテラン脇役勢も、脇を固めるというよりは、主演の二人を引き立ててる感じ。


「嫌いな人とは離れて暮らせばいいんだから、あなたはいいよね」

「そんなに大事なら、目をはなさないようにしな」


↑なんの変哲もない一般的なことばですが、印象深かったので、思わずメモしました。


弱い自分を守るために自分の心の奥に芽生えた過激な一面・・・

私は解離性同一性障害ではないけれど、衝動をおさえきれない自分とか

論理的に考えようとする自分とか、ちっちゃな人格交代は存在する気もします。


この病気で苦しむ人たちのことを考えると、ややエンタメに走りすぎた気もしますが、

テレビの2時間ドラマなんかではなく、劇場でじっくり鑑賞する価値のある作品だったと思います。